階段なんかで正座をさせないでほしい件

 ご飯を食べて人心地着いた所。

 横になってゴロゴロしたいところをしゃがみこんで耐える理由は正座をさせられているのが原因だろう。

 これじゃ寝れない……

 足先がピリピリする中で

「あのかめはめ波、どういうことだ?」

「うええぇぇぇ……」

 やっぱりそこに目をつけられた。

「収納、それほど入らないのではなかったのか?」

「あうううぅぅぅ……」

 ばれたくなかったことがついにばれた。でもいつかばれるよなと無限異空間収納だなんて、俺だって無限の意味する事は分かっててもここまでやるのかっていう結果はいつも想像の上なんだからと叫びたい。

「とはいえ、これをダンジョンの外でもできるとなると大問題だな」

「ふあああぁぁぁっっっ!!!」

 岳が俺の足の指先をつつけば間抜けな声を叫ばずにはいられない。

「相沢面白~い」

 沢田も俺の足をつつけばついに膝を抱えて

「やめてえええぇぇぇ……もうゆるしてぇぇぇ……」

 ゆっくりと足を延ばしながら足先まで急激に血流が巡る感覚にもだえながら俺は正面でオコな千賀さんや林さんから逃れるように転がっていく。が

「うまく逃げようとしてますが逃がしませんよ?」

 三輪さんまで俺を包囲していた。

「そうですよ。まったく水臭いじゃないですか。

 ダンジョンの外でもスキルが使えるという時点でおどろかされたのにあの川の水が干上がるほど収納力をお持ちだとは……

 夏にあってからずっと同じ釜の飯を食った仲だというのに秘密にしているなんて悲しいです」

 橘さんが泣き落としに来た。

 これはもう素直に鑑定といってきたスキルは実はステータス接続権利と言いまして人のステータスを勝手にいじくれるものなんですなんてさすがに素直に言えない。

 いや、言った方がいいのだろうがどれだけ考えても結城さんが俺をこき使う未来しか見えなくてこれだけは死守しないといけないそんな直感。

 だから俺は嘘をつく。

「橘さんごめんなさい。

 正直収納がまさかこんなにも収納できるなんて想像もしたことがなくって」

 いや、できるとは思っていた。ただ、前回より量が多いからどうだろうなと思ったけど一瞬で水を飲み込んでくれた俺の無限異空間収納のキャパにびっくりだけど収納される異空間も大変だなと他人事のようにねぎらっておく。もちろん心の中とは別にそっと目元をぬぐう様に泣き真似をする。

 真似だけどそれで黙ってくれる橘さんにごめんなさいと誤っておく。

 ほら、隣にいるお医者様はそれではごまかされないぞとご立腹だしね。

 でもそれで黙って引いてくれるのならありがたく甘えておくことにすれば


「それよりもあの鳥が来る前にさっさと移動しよう。すぐには復活してこないだろうけどあの場所を起点にやってくるからなるべく距離を取りたい」

 

 そんな工藤の発言に俺以外はまじめな顔で工藤へと視線を向ける。

 重要な事を話してくれているのに俺は情けない事に正座の後遺症ではないが転がりながら話を聞く。


「切ればすぐに体は引っ付くし、距離をおいても向こうの視界に入れば距離はない」

 

 なんてチートだと思うもあの一瞬で詰め寄られたのはそれかと納得。

 「逃げ切るには常に移動し続ける事」

 一応エスケープゾーンだと思っている階段の中での小休憩からの反省会での工藤の言葉。

「階を変えたら見つからないとか?」

 沢田も疑問に声を上げるも

「あいつに階層なんて関係ない。気が付けばさっきみたいに後ろにいる。

 狙われているのは俺だから逃げてもらって十分だ。何せ向こうは俺どころか周囲にいる奴も巻き込もうがまったく関係ない考えだ」

 その結果が功績を上げようとして襲い掛かった方たちが返り打ちを食らった話だろう。

「で、インターバルは?」

 さっきみたいに吹っ飛ばしてからの再会まで平均でもどれぐらいだと言えば

「そんなものはない。

 切ったそばから復活した時もあったし13階から地上に出るまで会わなかった時もある」

 その差は一体何なんだと思うも

「ダンジョンってホントいい加減よね?」

「それー。気まぐれって言うか楽しー優先って言うか」

 なんて沢田と岳もあきれる。

 だけどまんざらそれも嘘じゃないのは俺の謎スキルが証明している。

 ホントいい加減なのどうにかしてほしいと思えば工藤の役に立たない情報で頭を悩ますよりも行動に移すことにして借金鳥の出方を待つことに決めれば俺は立ち上がり


「これから15階に行って魔象を倒す。

 そして15階で仮眠をとって19階へと向かう。

 その間に15階のボス部屋に借金鳥がやってくるか実験だ」


 俺がその方針を決めれば雪はすくっと立ち上がりそのまま階段を駆け下りて15階目指して行ってしまった。

 雪さん素敵すぎる。

「究極のソロプレイヤー目指してるのね!」

「相沢黙れ。下手なこと言うと雪がとんでもない事に巻き込まれるぞ」

 なんて林さんの突っ込み。

 いやいや、雪は孤高の野良猫よ?人間様の手を借りてその野生のハンターの血を無駄にするわけはないじゃないと言いたい。

 故に婆ちゃんに捕獲されたり周囲のメスの野良猫をメロメロにさせるリアルハーレムを作るお猫様よ?

 どれだけ婆ちゃんを含めた女性を虜にするんだと思ったけど


「雪が正義なのです。雪が行うことに間違いはないので問題ありません!」


 問題しかない言葉をキリッと言った所で俺はしびれた足が元通りになった所で立ち上がり


「15階目指して行きましょう」

 

 みんながお前何言ってるなんて視線を向ける中俺は秋葉ダンジョンは大学ダンジョンより古いからまた小象が見れるかな?なんてうきうきしていたのは秘密だ。





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