トラブルメーカー

 恋する女の子ではなく戦う女の顔に変わった沢田にもうあのクズ男の言葉に惑わされることはないだろう。

 むしろご愁傷さまですとクズ男と店の店長の転落ぶりを想像してニタニタしたくもなるが、目の前の謎の圧を飛ばす結城さんにそんなクズ男の転落ぶりの想像も楽しませてくれない様子。

 一体何なんだと思うも


「工藤を覚えているか?」

「ガチでダメ男な性病にでもなってろって奴ですね」

 いきなりのいやな名前の出現に俺どころか岳も沢田も顔を歪める。

「今この男に一つの問題が上がっている」

「俺達には関係ないですよね?」

 もうかかわりたくないというも俺たちの意見に耳を傾ける結城さんではない。

 ふんと俺の意見を軽くあしらい

「聞きたいのだが我々もそれなりに調査したのだが工藤のカードがどうやらスキルと直結しているらしい」

「スキルって言うと金の亡者か?」

「金を力にってやつだが?」

「ええと、称号が金の亡者の時だけ発動スキルですね。

 お金でステータスアップする奴です」

「どこまでステータスはアップする?」

 あの時一緒に見ていた林さんもいるのに聞くのは確認作業だろうか。

 めんどくさいという様にもう知られているのなら隠す必要はないとすれば

「ステータスを見ながらではないので何とも言えないのですが、対戦相手のステータスを模写するようです。

 俺より素早い雪のスピードと互角に渡ったところでそう判断します」

 俺のステータスの事は言わないで人間の言葉を発することのできない雪を例に上げて言えばそうじゃないと頭を横に振る。


「私が聞きたいのはいつその金額と工藤のカードが紐づけされたのかというところだ」


 至極真面目な顔で言われても

「そんなの知らんがな」

 同様にまじめな顔で言い返すも

「あー……」

 岳が不穏な声を上げるのだった。

 空気読め。

 このタイミングで言うか普通と思うももう遅い。

 結城さんはターゲットを岳に変えて

「何か心当たりあるのか?」

 俺とは違い岳にまるですがるような視線を向ける様子はまるで藁にも縋るという感じ。

 この人役者か?なんて思うも背後で控える千賀さんと林さんはまるで見ていないという様に視線を遠くに飛ばして直立不動、俺たちに手助けはできないんだという様にその姿勢を保っていた。

 その間にも一瞬で岳は結城さんに陥落されて

「橘さんが来るまでダンジョンの階段で拾ったWi-Fiでゲームしてあいつらが上がってこないように番していた時に課金してました」

 このスキルの課金システムに納得し

「そのあと魔物の素材を売ってお金が手に入って、クレジットとスマホを紐づけして課金したい放題にして……」

 すべての原因は岳にあったようだ。

 って言うかダンジョン恐ろしいとその学習能力に改めてその恐怖に体を震わせれば

「カードの最高金額は1000万だろう……」

 およその国との兼ね合いでこの金額に落ち着いたと言っていたが……

 そう言えば

「林さんが返済可能金額を想定して1000万以下で抑えましたからね。

 こうやって考えれば1000万超えるかどうか検証するべきだったか」

 ガチで悩んでしまうのは対象が工藤だから。

 もう一度工藤をダンジョンに放り込んで危険だけど称号を金の亡者にして試してみるべきだろうかと考えれば

「いや、その必要はない」

 なんて言われればこの実験ができないことを少しだけつまらないという様に鼻を鳴らすも

「もっと面白いことが起きている」

 まったく面白くないという様な顔の結城さんに何が起きているのかと思えば


「悪いが今から秋葉のダンジョンに向かう。

 そこで実際に見て意見をもらいたい」

「車でも一時間以上かかりますのでお断りした……」

 速攻で断るも

「君たちには拒否権はない。

 なぜならそのスキルを知っている人物の少なさと秘匿性、なにより今のダンジョンの様子を見てもらいたいという我々からの検証という依頼なのだから」

「依頼料出るのでしょうね?!」

 これは断れないやつ。

 だったらせめてもらえるものだけでも貰おうとすれば

「この件に関しての魔物はすべて満額で買い取らせてもらおう」

 そんな太っ腹発言。

 実の事を言えば自衛隊に卸すときは普通のレートよりかなり安く売っている。

 まあ、数も数だし、冷凍庫に入らない分を買ってもらうというより処分してもらってる考え方だから文句は言わないでほぼ横流し的な感覚にお金がついてきた程度の感覚だったけど。 

 ネットで売った時から感覚からちょっと狂っているのは諫めないが……


「だったら先に教えてください。

 秋葉のダンジョンで何が起きているのですか?」


 まず問題は何なんだと聞けば


「工藤が借金返済の為に秋葉のダンジョンに突入させているのだが、工藤が入るときに限って未知の魔物が出現する。

 しかも我ら精鋭隊でも対応できないようなレベルの高い魔物。

 君の鑑定のスキルでぜひとも対処できればと願っている」

 

 トラブルメーカーかよと叫びたかったけど、未知の魔物という言葉に


「雪、なんかワクワクするな?」

「にゃー!」


 岳と雪がすでに潜る気になって


「そいつとは何階ぐらいで会えますか?!」

「にゃー、にゃ、にゃーん!」

 

 岳と雪が乗り気で進めてしまうのを横に俺と沢田はこれは断れないやつだと結城さんに対してではない問題にそっと涙を流してみた。

 


 


 


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