とりあえずはおやすみなさい

 大量の魔物を狩ってレベルが上がった。

 それは大変喜ばしいかどうかこうなるともうわからなくなってきた。

 広範囲魔法とか持続型継続魔法とかもうチートすぎるだろう。

 岳みたいに一生懸命レベルアップ目指して戦ってるのを見ているとほんと申し訳ない。

 だけどこの溢れる数を前にして安全に狩りに出かけれるように魔物を間引きに15階まで行って16階の扉を安全に開けれるために毒霧を放ってきたのだけど……

 なにぶんン年単位で放置されていた場所。

 15階の主に子供が生まれるくらい手を出してないだけに相当な数の魔物を倒す事になった。ここよりもっと古いダンジョンがあるけど大丈夫かなと子象の兄弟に襲い掛かられたらどうするんだとそれはそれで見てみたいとニヤニヤしてしまうのは魔象の子供が想像以上にかわいかったから。四本の牙がないだけであんなにもかわいくなるなんてとスマホを取り出して見直せばまたニヤニヤしてしまう。

 今回一番の収穫だったはずの鰻のうなさんやヤシガニのヤッシーの事は忘れ去ってしまうくらいの愛くるしさに

「これは連れて帰るべきだったか?」

 ばしっ!

 あほなこと言ってないで早く帰るぞ!と雪に尻尾で叩かれてしまった。


 そんなことでもう少しで拠点に着くことを沢田に連絡してからの到着。

 岳も戻ってきていたようで何やら狩った魔物を自衛隊の皆さんが一生懸命運び出していた。


「ただいまー!」

「おかえり!15階まで偵察に行ってたんだって?俺もちょうどさっき帰って来たばかりなんだ」

「それを見越して15階まで行ってきた。

 あと結城さん、ビデオ先に返しておくね。

 見どころは13と15階だよ」

 なんて撮りまくったビデオは盛りだくさんの情報が詰まっているはずだ。

 12階の虫ゾーンを超えれば天国が待っている。

 そして次回からお子様付きの魔象に出会えるかわからないけどキュートな子象も見れるのだ。12階さえクリアできれば13階は保養地として最高だろう。

 まあ、ちょっと殻が硬そうでやばい鋏を持ってるヤッシーの群れに襲われるというスリルも味わえるが、そんなものダンジョンの中ならどこででも味わえる程度のアトラクションだ。

「12階の様子を見に行ってほしかっただけだったのだが……まあいい。

 それで防護服の効果はどうだ?」

「すみません。結界というスキルが発生して防護服の効果がまったくわかりませんでした」

 きりっとした顔で言い返す。

 俺を実験に使おうだなんて良い根性だよ。まあ、まさかの蚊取り線香の有能さでその計画を台無しにしてやったのでざまあだけど

「結界というものは我々にも使えるのだろうか」

「たぶん蚊取り線香焚きまくったのが原因かと。

 探索するにあたって蚊取り線香を身に着けていればそのうち生えるスキルかと思います」

 そうか……

 なんて目がきらんと光った気がしたところで

「ただし大量の魔力を消費します。

 これが個人差なのかどうかまではわかりませんが検証できなかったのでそこは水井さんあたりにお願いしてもらいましょう」

 なんて生贄、ではないがお願いをしておく。

「うむ、そこは我々の方で確認しよう」

「それよりも一度撤収してもいいですか?」

 なんて俺からの提案。

 結城さんはそのログハウスに泊まるんじゃないかという視線だけど

「せっかく用意してくれた家があるのならそこでゆっくり寝たいです。

 やっぱりダンジョンの中だと緊張してゆっくり寝れないじゃないですか」

 そんなことないけど一応そう言っておけばそこはこの現場の責任者。

 考えるまでもなく自分の時計を見て

「もう二時を過ぎているな。

 確かに一度帰って休んだ方がいいだろう」

「マジか」

 眠いわけだとダンジョン内だと時間の感覚が狂うから嫌なんだよと俺たちは明日もまた来るからログハウスとかはこのままに撤退することにした。

 

「相沢、そういえばお土産があるとか言ってたけど?」

「あー、帰ってから話すな」

 ダンジョンの中を俺が岳と沢田を両手で抱えて雪と一緒に走るという最短時間で脱出させてもらう。

 そして1階の所で藤原さんに出会ったのでクズとか11階に生息する魔物を譲り渡しておく。

 あわてて俺達が狩ったものだというマークを付けてすぐそばにいる自衛隊の人たちと処理を始めたけど、俺たちは眠いので後はお任せするようにその場を後にした。

 

 地上に脱出してふらふらとコンビニに吸い込まれるように行って晩御飯の買い物をして帰れば沢田から順番にシャワーを浴びる事にした。

 その間俺はどん兵衛を食べたり、雪はカリカリを食べたり、岳もおにぎりや豚汁で腹を満たすというエネルギー補充のお食事タイム。

 それが終わるころ沢田がシャワーから上がってきて俺と岳も順番にシャワーを済ませてからお待ちかねの

「ここが13階。リゾート地だった」

「「まじ?」」

 沢田と岳の声がハモったところでその美しい白い砂浜とエメラルドグリーンの世界にテンションMAXになり

「で、この黒いにょろにょろってウミヘビ……?」

「いや、鰻だった。捕まえてきたから明日ダンジョンでさばいてみようか」

 これがお土産だって言えば

「待って。私鰻はさばいたことないよ?」

 沢田に未知の分野があった事に驚けば

「だったら俺が捌くよ」

 岳の頼もしい言葉。

「じゃあ、お願いね!」

 なんてまるで押し付けるような言葉に蛇はよくっても鰻は苦手だったかとなんとなく笑いたくもなったが

「あとヤシガニみたいなやつもいっぱい捕まえてきたから茹でて食べたいです!」

「ヤシガニ!いいね!ジャンジャン茹でちゃおうね!」

 なんていうけど人間様よりでかいことは黙っておこう。

 絶対どうやって茹でるのよ?!なんて話になるだろうから……

 夢は残しておこう。うん。

「とりあえず明日は13時に大学の体育館の所に集合だから、俺はもう寝るけど二人ともそれ見たら寝ろよ」

「うん。もうちょっとしたら寝るから」

「俺もー」

 なんてそのもうちょっとはいつになるんだかと俺はいない間に設置してくれたベッドにもぐりこみ、雪はキャットタワーに上って一番上でくるりと丸まるのだった。





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