トイレあるあるエピソード、ってあんま聞いた事無いんだけど

 岳と沢田が14階に行ってしまったので今日はもう帰るかという気分になれば雪ももう帰るんだなと言うように階段の前で俺を待っていてくれた。

 雪しゃん優しい。

 すぐに駆け付けたかったけど

「16階に毒霧撒いてくるから少し待ってて」

「にゃー」

 いつも15階まで来て帰る時は16階でプシューっと毒霧撒いているので雪も早くやって来いと言うように返事をしてくれた。

 16階に階段を降りながら折角ダンジョンの入り口に帰れるようになんて訴えてみたけどすぐには実装されなかったかと軽くテンションは下がる。だけど雪の魔象の靴も何回かチャレンジした後に実装されたからこれも暫く繰り返せばいずれと願ってしまう。

 早く目的の階層に行けたり一瞬で帰れたり出来ますように。

目的の階層が無理でも一瞬で帰れますように!

なんて願いながら16階で毒霧を思いっきり噴射してから扉を閉めて

「雪しゃんお待たせ!」

 と駆けよれば


「相沢お疲れ!」

「相変わらずまめねえ」

「虫は絶対うちに入れたくないからな」


 なんていつの間にか沢田と岳が戻ってきていた。

「待っててくれたんだ」

「当たり前でしょ」

 なんてなんで置いていくのか逆に問いたいと言う沢田に笑って謝る。

「それよりさ今から帰れば晩ご飯には間に合うから急いで帰る?

 それとも11階で泊まっていく?」

 珍しい沢田の提案に疑問を覚えたけどよくよく見れば岳の姿が酷かった。

 泥の上を歩けても沢田が落ちた時にスライディングした姿は頭から泥をかぶっていて酷い状態だったことに改めて気が付いた。

 よくよく見れば沢田も俺も、そして雪も飛び跳ねた泥水のせいでそれなりにひどい姿になっていたけど岳のはまた別格。

 これ泥が渇いたらかゆいだろうなと思って

「とりあえずシャワーでいいだろ?」

 言いながら俺は収納してある源泉をシャワーのイメージ通りに岳の頭の上から降らせば

「にゃー!!!」

 なんて雪が逃げて行き、14階に向う階段の所でぶるぶると水しぶきを飛ばしていた。

 思わず笑ってしまえば岳はシャツを脱いで

「あったけえええぇぇぇ!きぃんもちいいいっっっ!!!」

 嬉しそうに頭まで洗いだしながら

「シャンプーある?」

 なんて調子のいい事まで言う。

「ほらよ」

 ボディーソープと一緒に渡せばズボンまで脱ぎだして

「岳!もうやだ!!!」

 半ケツの岳に沢田も慌てて雪がいる方向へと逃げ出していた。

 それを見て俺もシャツを脱いで

「シャンプーパス」

「はいよ」

 なんて俺も頭をガシガシと洗う。

 キューティクル?何それ?

 平地より強い紫外線を毎日浴びている俺はキューティクルより毛根が生き残れば問題なしと思っている。

 両親の両方の家系にハゲはいないからここで俺だけがハゲになったら絶対落ち込むと思うけど。

 髪は長い友達だとはよく言ったものだが真に受けてはいけないと思うのはそうやって教えてもらったのにいざ漢字のテストだとバツになる罠が待っていたから。俺の1点返せと当時の純真な俺を今はかわいい奴だと笑えるも、当時は必死だった俺はなんであんなに必死だったのか今では理解できない。

 まあ、人も寄り付かないような山奥で引きこもっていれば周囲の視線なんて気にならない。猪や鹿、熊の視線はめっちゃ敏感になったけど今はそれ以上になぜか鴉が大量にやってくるので毎朝ちょっとビビっていたりする。

 まあ、沢田を助けてくれたと聞けば邪険に出来ないし、鴉が来てくれるからか分からないけど鹿とか猪とかがあまり家の周辺で見なくなったのはありがたい事だと思う。

 沢田にもお願いされているけどそんな彼らの功績に帰り道に魚を獲って帰らないとな。手足が付いていても気にせずに食べてくれるのはありがたいけど残されたらいやだからなるべく手足のついてない奴をお持ち帰りするようにしているけど。

 帰り道にまた汚れること確定かとある程度洗ってタオルで水けを取って着替えて岳の準備が終わるのを待って


「お待たせ~」

「さっぱりした!」


 ご満悦の岳と共に沢田が待ってるだろう14階に向えば待ちくたびれたと言わんばかりの沢田。

「じゃあ帰ろうか」

 少しオコ気味なのは男ばかり優雅にシャワーを浴びていた点についてだろう。

 小屋を出して風呂の準備をすればいいだけだけど沢田も自分の事をわかっているように風呂が長いから我慢してますと言うような不貞腐れた顔。

「雪、早く帰ろうね」

 なんて雪を味方につけるとは卑怯なと言うように追えば帰るなら早く帰ろうと言う性格の雪は15階に来たとき同様に俺達の道先案内するように先頭を歩く。

 そして誰よりも早く魔物を見つけては襲い掛かると言う戦闘狂頼もしすぎるだろうと思うも時々魔物を咥えて戻ってくる時はお気に入りのお肉だから持ち帰ってねと言うように俺の前に置くくいしんぼさん。

 雪の下僕としてはそれぐらいお安い御用ですよと言うように収納するけど。

 まあ、俺達もおすそ分けを頂くのだから文句は言わないし、狩り過ぎた時は自衛隊に買い取ってもらっている。

 そのお金で雪にちゅーるを買ったり爪とぎを買ったりいろいろ環境を整えている。

 納屋に住み着いた野良猫たちの寝床もだけど、今はまだ手が付けられないからとりあえず毛布を用意してはいる。

 夜はもう寒いからね。

 トイレに起きた時こっそり覗いたら毛布の上で団子になって寝ているのを見てちょっとほっこりしたと言うよりほっとしたと思うのはこれからどんどん寒くなるからだろう。そこは改めて考えないとなとちょうど水井さんがいてくれるから相談に乗ってもらおうと思う。だから早く帰ってきてくれないかなと思えば


「ねえ岳、相沢」

 

 なんて沢田から声がかけられて「ん?」なんて思っていれば


「納屋の私の部屋、雪のお友達に使ってもらっても良いかな?」

 

 そんな心遣い。


「沢田がいいなら俺は構わないよ」

 なんて岳はあっけらかんと言うものの家主の俺としてはただ一つ譲れない事がある。


「トイレは家の中でしないという事を躾けた奴なら構わないぞ」


 そこは譲れないと言うように言えば岳が


「そういや雪もだけど新しいトイレに猫用のドアつけてみたらあいつらちゃんとトイレでしてたぞ」

「マジか?!」

「ウソでしょ?!」


 俺も沢田もびっくりな岳の情報に素直に驚けば


「トイレに行ったらボスがちょうど使ってる所にかち合って凄い気まずい思いしたんだけどwww」


 思い出してか腹を抱えて笑う岳に猫って賢いんだなあと、水洗トイレじゃなくって簡易水洗トイレで良かったと重さで勝手に流れてくれる機能に感謝をするのだった。




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