お金は大切です何て判り切ったことを力説されれば納得しかできないこの環境どうにかしてください
一度手にした最上のものを忘れることは出来ない。
一度切れなかった時に覚えた固さを。
それが武器を変えただけで羊羹を切った時のようなねっとりとした感覚も剣を伝って手に残っている。
因みに
「その魔象の剣っておいくらですか?」
なんて冗談交じりに聞けば
「素材だけで家が一軒買えるぐらい。
作るのに素材を二つ付けてお願いした代金だから。
大丈夫。魔象の牙は四本だから残りの一本はネットで売ればいいお小遣いになるし、15階では避けて通れない相手だから。
うちのダンジョンではもう出てこなくなったけど今ならよそのダンジョンの16階以降で運よくマゾの大群に出会えるかもしれないから、乱獲のチャンスだ!」
やっぱりこの人危ない人だった。
いやいや、その思考ヤバいだろうと思いながら
「そんな事言ってると動物愛護団体に叩かれますよ?」
なんて笑って言えば相沢さんも笑い
「動物ならそうかもしれないけど相手は魔物だからな。
無限に排出されるしあのオラが軍曹も言ってたじゃないか。
『人間に害を与える存在、人間の敵、相容れぬ存在、共存できない者同士、絶滅しても構わない生き物、この世界を乗っ取ろうとする相手に容赦はいらない。
よって、動物ではない為に愛を持って守る必要はない』って」
「言ってましたね!俺もその言葉聞いて自分を鼓舞してましたけど!
相沢さんが言うとお金の話にしか聞こえなくって純粋な気持ち返せって言いたいんです!」
なんて言い返してしまった。
だけど相沢さんは
「金っていいぞ」
なんて死んだ目で俺をまっすぐ見る。
呆れた言葉だけどその死んだ目のまま
「物事をスマートに動かすための潤滑剤になる。
俺達に自衛隊が協力してくれる一番の理由はダンジョン産の素材を直接卸す処から始まったからな。
ネットで売った金額見てビビったんだろうな。折角素材の価格をコントロールし始めた所でレア素材を簡単に手出しできないような金額に爆上げしたから。
無視している間に消滅しているはずの俺達がもりもり売ってるからそれなら安価でも死蔵している素材を買い取る方が良いって言う判断……
それで道路の拡張と壁の補強してくれるなら俺的には任せろって言う所だからな」
なんか情報多くて全部吸収できなかったけど要はあのハンドル捌きをちょっと間違えれば崖の下真っ逆さまな道を何とかしてくれるのなら確かにそうだろう。
「それにトイレも取り戻してくれるし……」
そう言った所でなぜか涙を流し出して
「浄化槽サイコー!」
こぶしを振り上げての叫び声に浄化槽って簡易トイレのしっかりした奴だよなという程度の知識かないけど……
「冬までに部屋を潰しても家の中にトイレを作るんだ。
本音を言えば雪が降る前にダンジョン潰してもとあった所にトイレを作りたいんだけど今度は季節的に無理になるからな」
なんて力説。
だけど捌いた金額を考えればトイレぐらい簡単に作れるだろうと思うけど、元あった場所に作りたい、そんな思いが強いのか単に拘りがあるようだ。
って言うか何をそんなに力説するのかと思えば
「家の外にトイレがある。
つまり2M程積るこの地域でトイレに用がある時は雪をかき分けてトイレに行くと言う苦行を毎晩起こさないといけないなんて想像できるか?!」
胸ぐらをつかまれて叫ばれてしまったけど知らねーよそんな事、なんてなんか命にかかわりそうで言えない。
ただそこは愛想よく笑って
「2Mじゃ重機は入れませんね?」
部屋を一つ潰してトイレを作ると言うのは謎なまでにデカい家で一人暮らししている人だからならの問題なのだろうけど、言葉の端に下手に家に手を加えるのを良しとしない考えに遠回しにあきらめましょうと言えば少しだけ悲しそうに笑い
「真冬、-20度近くなるんですよ。
-20度超えてるかもしれない所を庭を突っ切ってトイレに行く事考えると迂闊にトイレにも行けないのかと思えばブルーになりまして」
「ああ、ブルーにでもなりますね」
しくしくと泣きだしながらもふと疑問。
「その間のお猫様はどうしてるんですか?」
ここに来たばかりだと言うのにやたらと野良猫を見かけた。
どれもこれも雪以外首輪をしていない所を見ると完全な野良猫なのだろう。最も雪がしている首輪がマロの首輪と似た色違いの物だけど。
それでもこの家に住み着いてどうやらご飯を貰っている様子も見れた所あまり行動範囲の広く無い猫なだけにこの家以外に家がない事を想定して言えば
「うちの納屋に藁を放り込んでおけば適当に住み着いてるぞ。いい感じに巣穴を作って、時々ネズミの退治までしてくれるから感謝だよな。因みにイチゴチョコ大福も一緒に暮しているから野生動物もなかなか来ない安全圏だぞ」
雑種交じりの犬だけどなんて頼もしいと思うも
「橘さん、そろそろ皆さんを地上に案内してください!
俺は変な魔物が寄り付かないように軽く片付けてから戻るんで沢田にご飯残しておいてくださいってお願いしてください!」
どこか必死な言葉にひょっとして、なんて思わず口を手で覆ってしまう。
なんだ。
そうか。
やたらと時間に気にしている理由にやっと気が付いた。
そうか、そうか。
なんか化け物じみた魔物より魔物らしい人だけどそうか、やっぱり人だったんだ。
俺は相沢さんに背中を向けて橘さんに案内されるように上る階段に足を運びながらニマニマしてしまうのは仕方がないと思っている。
もちろんそんな俺に周囲がどうしたのか聞いてくるから俺の考察を披露すればみんななるほどと言うように目をきらきらとさせていた。
だけど俺は相沢さんの強さに嫉妬をしたものの恋愛に関しては低レベルな恋愛思考しかなく、人の恋路を邪魔する奴が常にいる事を考えた事もなかった。
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