雪が楽しそうで何よりです
村瀬はもちろん危険を感じてかやって来た藤原が
「今のアレ?
今の何なんっすか?!」
そんな悲鳴に俺はそっと視線を外して
「あれが今紹介したダンゴムシだ」
「俺の知ってるダンゴムシとは大違いなんだけど?!」
なんて叫んでいる合間にもまたゴロゴロと転がって来たかと思えばスピードが落ちて止まり、もぞもぞと動いたかと思えば体が伸びて……
「あ、アニメに出てくるオー……」
「ダンゴムシだ」
藤原の言葉に言葉を重ねてその名前を言わせなかった。
あの神作アニメ?マンガ?に対してダンゴムシを一緒にしちゃいけねーぜ!と言うように睨んでしまえばなぜか黙ってしまったけど俺は雪が奮闘している様子をまだまだ遠いこの距離から目を細めて状況を見ながら
「あいつらは集団でやってくる!当然肉食。食いちぎって巣に運ぶ悪食な奴らだ!」
まあ、基本魔物皆肉食。もしくは雑食だけどなという事は置いておくが
「体を丸めて転がって俺達を潰しに来るぞ!マロ剣じゃ切ることは出来ないし固さだけならレベル25ぐらいの魔物を相手すると思え!」
言えばあからさまに動揺する様子が手に取って分かったものの
「それで、どうやって倒せばいいのですか?!」
焦ったように聞いてくる村瀬の質問に俺は意外だと思えば
「硬さだけならレベル25だけどここ11階にいるって事は致命的な弱点があるって事ですよね?!」
これが主席の人間という事だろうか。
まさかさっき横を猛スピードで通り過ぎたダンゴムシの恐怖に脅えることなく攻撃に転じることが出来るどんなタフだなと思えば
「少し難しいけど攻略は簡単だ」
言えばみんなの顔も少しだけ明るくなる。
この様子なら教えても良いだろうなと橘さんに目配せするも少しだけ困惑する視線。
だけど俺はせっかくみんながヤル気になっているのだからと攻略法を伝える事を決めた。
「丸まった時に見える甲殻と甲殻の間に剣を刺してちょこっと横にずらせば簡単に絶命する!
いいか!甲殻は自衛隊でも防護服や装甲の使われるくらい役に立つから上手く傷を付けずに持って帰るぞ!!!」
「いや、それってかなり無理ゲーじゃないっすか?」
そう言った藤原の横をなぜかものすごい勢いでクレーターという足跡を残して跳ねながら通り過ぎて行ったダンゴムシ。
転がって止まって体が伸びて逃げるように去って行く姿を見て
「いけるだろ?」
「……」
全員から無言で拒否られてしまった。
解せん。
なので仕方ないから見本と言うようにちょうど転がって来たダンゴムシに
ザクッ……
ダンゴムシの甲殻のつなぎ目って丸まるとうっすらと白い肉体が見えるからそこにぷすっと剣をつきさすだけで転がっていく反動でスパッと切れるからちょろwwwなんて思っているんだけどね……
だけど学生さんには何をしたか分かってもらえなかったようで全員に視線を貰えたもののその目は死んでいた死線だった。
「だからこんな感じに装甲のつなぎ目にサクッと出来ればレベル11なんだって」
「出来る分けねぇ……」
なんてとことん俺の攻略方法を拒否る村瀬に俺は俺よりもっと参考にならない状況を見せるために激戦区だろう雪の戦場を見せる事にした。
雪のダンゴムシの戦い方はさり気なく派手なのである程度距離を取って見るのがベター。
じゃないと……
「ん、にゃー!!!」
くるんと丸まったダンゴムシを雪のニャンパンチが炸裂する。
そのとたんものすごい勢いで転がって行ったダンゴムシが他のダンゴムシにぶつかって、驚いたダンゴムシはぶつかった衝撃で飛ばされながらも反射的に丸まっていた。
そう。
さっき俺達の横を通り過ぎ去って行ったダンゴムシのすべての理由はこれ。
もちろん飛び去って無事戦線離脱出来たダンゴムシはましだと言えよう。
ボーリング、と言うかビリヤードのように雪のゲーム盤の上に取り残されたダンゴムシはくるりと丸まって防御力を上げるけどその姿こそ雪のおもちゃの姿。
ちょいちょいと前足でつつきながら動かないダンゴムシに興味を無くしたように見せかけておいてからのしっぽではたいてから転がるダンゴムシを追いかけてからの痛快なまでのニャンパンチ!
雪が楽しそうなのは何よりだけど飼い主としては居た堪れないよ!!!
当然のように皆さんドン引きで自分より何十倍以上のダンゴムシで楽しそうに遊ぶ雪を眺めている。
その中にはぶつかって甲殻が割れてよろよろとしているダンゴムシもいる。
基本レベル11。
レベル11同士がやりあったらどうなるかの見本のような光景に誰も何も言わないけど
「相沢さんはダンゴムシが転がっている様子見えるのですか?
「ん?ああ、見えてるから剣を刺す事がでいるんだぞ」
「そうですか……」
そう言った村瀬はなにも言わず黙ってしまい、やがて雪も満足して遊ぶのを止めれば必死に無数の足を動かしながら逃げていくダンゴムシに
「はあっ!!!」
突如声を上げたかと思えば剣を突き付けるもののカキン!なんて硬質な音を響かせて剣を跳ね返してその勢いに振り回されていた。
さらに手がしびれたと言うよに強張った手から剣を落とせば藤原がすぐに駆け付けて攻撃されないように周囲に気を配っていた。
なんかその様子に普段あまりあまり仲がよさそうな雰囲気はなかったけどお互い認め合い、だけどライバル心に素直になれないと言った様子を羨ましく思えば
「マゾの牙ならいける。試してみろ」
俺は愛用しているマゾの牙で出来た剣のストックを渡せば受け取った村瀬はその剣を構えて……
すらり、剣を振り切った軌跡に沿って硬質なダンゴムシの甲殻さえ羊羹を切るような美しい切口に誰ともなく口を閉ざす中で相沢さんは俺から剣を取り上げて
「武器のレベルに助けられたな」
ひどく冷静な瞳で振り切っただけで汚れすらつかない剣を俺の視界から消してしまった。
「武器に助けられているうちはまだ早いからな」
そんな俺にはまだわからない言葉を言うもののこれだけのレベル差を見せつけて置いて
「これを自力で手に入れることが出来た時がこれを扱うにふさわしい適正レベルだ」
なんて笑って言ったけど俺はそんないい武器があるのなら俺によこせよと言う言葉は……
無理やり飲み込んで嫉妬を隠した顔で
「早くその剣を手に入れたいですね!」
誰もが疑わないような顔で羨ましいと言う視線で言った。
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