え?まんまじゃん…… なんて突込みはない方向で
コーヒーを飲み終わり、収納に片づけてもまだ降りてこなかったからやたらと巨大化するダンジョン内で見つけた鶏っぽい鳥類の肉を取り出して焼いて待っていた。
あまり出会った事無いけどこの世界の鶏っぽい鶏、ちゃんと飛ぶんだよ……
しかもチキンと言うように俺達の姿を見たら即行で飛び去るハンパないチキンぶり。
出会ったら即行でクズの角を投げて捕獲すると言う半分運で捕まえることが出来る魔物だ。ただし毎回かなり致命傷な状態なので詳しい生態は不明。俺達が言えるのは俺達の身長よりでかい鶏を鶏とは言わないだけ。味は鶏だけど空を飛ぶだけあってかなり身は締まっている。いつか捕まえてヒヨコを見てみたいし卵も食してみたい好奇心はあるけど未だに巣も見つけた事もないので林さん曰く
「ひょっとして渡り鳥だったりして」
なんて適当な事言ってくれたけど案外その説が否定できなくなっている状態だ。
そんな貴重な鶏を一口大に切って串に刺し、塩コショウを振って焼いていざ食べようとしたら
「相沢さん、何一人でいい匂いさせてるんですか?」
「あ……」
なんて視線が合っても構わずもぐもぐと食べてしまうのは焼き鳥の匂いサイコー!以外何物でもないから。
とりあえず皆さん協力し合ってぞろぞろと降りてくるのを見て
「雪さんも食べる?」
「にゃ~ん」
塩コショウをせずに焼いたものを串から外せば嬉しそうに食べていたのを皆さん微妙な視線で俺達を見るけど
「すみません。お待たせしました」
最後に橘さんが降りてきた。
そして焼き鳥を食べる俺と雪をちらりと見たけど
「このままダンジョンの出口まっすぐに進んでも大丈夫でしょうか?」
「とりあえず面倒なのは駆除しておいたから沢田が怒る前に急いで帰ろうか。時間がだいぶギリになってるし」
「ですね」
こういう所を軽くスルーしてくれる所が大人だなあと串焼きの串もちゃんと片付けてから水を一口飲み、口の中をさっぱりとした所で
「じゃあ行こうか。
空腹なのも訓練のうちって聞くから……
帰った時に食べる沢田の飯楽しみだな?」
なんて橘さん込みのこの訓練、本当に自衛隊の人は大変だと雪も水を飲み終えて先に走り出したのを見送り
「じゃあ、後は休まずに走ろうか。夜のサバンナは熱くないから水分補給は各自の責任で。ただ夜だから魔物も活発になるから何か異変を感じたらすぐに声を上げるように」
それだけを言って俺が走り出した所で皆さん不満は抱えているようだけどおとなしくついてくるので真面目だなあと月夜の空を覆う森の木々の下を俺は昼間と同じように走ればすぐに足音が離れてしまった。
これはダメだと思いながら合わせて走る事にする。
もちろん橘さんもすぐに気が付いたようで
「橘さん、森を抜けるまでこのペースを維持します!」
「判りました!」
後方からのフォローのはずなのにそれどころじゃないと言う返事に俺は逆に周囲へと気を配る。
マロは倒したけどそれ以外の魔物が距離を取った所で並走して居る足音が聞こえる。
もちろんそれは木々の上からも聞こえていつの間にか魔物に囲まれていたもののすぐにその数は減っていく。
雪が守ってくれているのかとこの11階ではありえないスピードを出せるのは雪だけなので俺は安心して引率をする事に集中をする。
もちろんこの異様な様子は皆さん理解しているようでどうしても聞こえてくる絶命する魔物の悲鳴に俺の背後は緊張が止まらないように合わせて悲鳴を上げる声もちらほら聞こえる。
声を出したら襲ってくれって言うものだぞ?なんて今言っても聞こえないだろうからとりあえずと言うように森の中を駆け抜ける。
一応夜なので行きとは違い障害物コースではない走りやすい初心者向けルートを選ぶも皆さん気付いてないと言うように追いかけてくるあたり不安しかないけど、やがて森を抜けて広がるサバンナ地帯に出れば森の魔物はこちらまで出てこずに餌をとり逃したと言うように背後からの視線に残念でしたと笑ってしまう。
だけど学生の皆さんは半べそ状態で俺を必死に追いかけてくるのが何とも言えないけど。
真っ暗闇の中で姿の見えない魔物に追いかけられる映画のようなシチュエーションなんて早々に体験できないしねと同情するも足を止めることなく10階に続く階段へと向かえば
「にゃ~!」
どこか満足げな雪が隣りを伴走していた。
「雪さん魔物退治ありがとうね!」
「にゃ!」
任せろと言うようないい返事は帰ったらちゅーるを頼むなというような期待をはらむ良い返事。
それぐらい献上しましょう!だけど1本だけですよ?と心の中で食べすぎ注意と言っておく。
そんな俺の心の声は伝わらないので雪は気合を入れて俺達を超えて先へと進んでいってしまった。
俺達を休ませないつもり満々ステキ―と見送ればまたすぐに魔物の絶命する悲鳴が聞こえてきて、背後からもその悲鳴にビビって悲鳴が響く。
雪が姿を見せて安心させたはずなのにこの状況はよろしくないなと空腹と疲労、そして周囲は視界の悪い夜時間という条件にまだまだ皆さんを現場に投入するのは無理じゃねと俺の中で判断をする。
だけど
「魔物が直接襲ってきてない!大丈夫だ!」
なんて村瀬が集中するようにと声をかけて続けていた。
さすがに森の中で声を上げる真似はしなかったけどサバンナ地帯に入って星明りの下で見通しが良くなればそうやって励ます姿は確かにリーダーとしてふさわしいと思うけど声を上げれば魔物を集めるこの環境下でそれは正しいのかと普段雪と二人で行動しているだけに俺では判断が出来なかった。
とは言え声を上げればそれだけ体力を消耗するけど声をかけ続ける根性は立派だと思う。
たとえ温泉水の力と称号の効果があるとはいえそこまで出来るのかと感心する中、前方の雪の様子がどうもおかしい事に気が付いた。
なにかと戦っているようだがここに来て一撃で倒せないなんて……
「あ、ヤバいな……」
思わずぼやいてしまえば声を拾った村瀬が
「何かありましたか?」
なんて俺の隣まで来るからどうしようかと思うも橘さんまで来るからここは伝えておくことにした。
「橘さん、あいつらが出たみたいです」
「あいつらって、どいつです?」
上手く伝わらなかったようだ。
何でも伝わると思っていただけに少し恥ずかしかったけど
「このフロアで雪が一撃で仕留めれない奴です」
「え?あ、ああ!」
やっとわかったと言うように声を上げた橘さんはすぐに顔を歪めて
「厄介ですね」
「俺的には楽勝なんですが……」
ちらりと隣で話を聞いている村瀬の緊張した顔を見て少し悩んだけど
「前方で魔物の集団が発生!
昆虫型の通称ダンゴムシだ!」
そう言った所で俺達のすぐ横を黒くてデカくて丸いものがごろごろとすごいスピードで通り抜けて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます