温泉はやはり皆さんに大人気のようです?
目的地にたどり着いて軽くおにぎりと水分補給をする。
汗もかいた体におにぎりの具の梅干しのしょっぱすっぱさがありがたかった。
そして全員にこの滝の水が噴き出している水たまりに足を浸けさせたり、汗まみれの体……は女子がいるので顔を洗ったり、ペットボトルの水を入れ替えさせたり少しの休憩を堪能した。
「まさかこんな所に温泉が湧いてるなんて思いもしませんでした」
村瀬が気持ちよさそうに頭事温泉の中に突っ込んでからマロマントで拭いたり気持ちよさそうな笑顔を見せれば他の奴らも真似を始め、もちろん女子たちも負けじと頭を突っ込んでガシガシと洗い出した。皆さん短髪とは言え豪快だなと女の子の見方を少しだけ変えてみる事にする。
まあ、飲料用は少し段差のある上の部分で沸いてる所から確保したからいいけど女の子と言えどほんと逞しいなと思えば
「どう?汗臭いの少しは良くなった?」
「無理!もう頭以前にジャージからヤバいって!」
「いっその事温泉に飛び込みたい!」
なんて笑いあっていた。
たくましい女子だなと思うも男子の方は少しだけ視線が彷徨うような困った顔。まあ、顔なじみが目の前の温泉を見て入りたいと言えばこうなるかと思うもここで俺は一つ目標を達成したから橘さんに目配せをする。
「さて、今から帰るけどその前に全員のステータスを確認させてほしい!」
その一言に浮ついた空気は一瞬で消え、ステータスは人に見せないと言うのが常識になりつつあるも、既に同レベルの皆さんは迷いなく橘さんにステータスを開示した。
別にレベルを見たいわけではなく
「うん。称号がみんな『源泉に浸かりし者』に変わってるね」
俺も確認する。
そこで初めて気が付いたと言うように称号が変わっていた事に気が付いて、でも声は出さずに眼だけを見開いて驚いていた。
うんうん。なかなかに楽しい顔芸だと喜んでいいのか複雑そうな表情はさておいて
「この『源泉に浸かりし者』っていう称号だがここに表記されている間は基本の能力値になってしまうけど三分ごとに1%自動回復すると言う中々に優れものだ。
走る速さや筋力が少し衰えた感覚もあるだろうがこの自動回復という奴は『源泉に浸かりし者』という称号を使い込めば回復する力も大きくなっていく。
他の称号を得ると自動に切り替わってしまうけど14階までなら今のレベルでも問題ない。しかし10階までとは違いこの広大なフィールドダンジョンにこの称号は凄く助けられる効果だ。
是非とも活用して帰ろうと考えている」
そんな橘さんの言葉に驚きながらも自動回復というファンタジーな効果に肘を突きあったりして浮足立っている皆さんに俺は提案する。
「その効果を使って今から休みなく地上まで走って帰ります。
これから日は暮れるし、夜の森やサバンナは魔物の狩りの時間です。
橘さん、雪、そして俺でフォローはするから魔物に気を取られずに休みなく走る事、今回の一番の訓練を始めます!」
言えば橘さんが
「では相沢は先に下で待っててください」
「雪はみんなのフォロー頼むな!」
「にゃー!」
と頼もしい返事を聞いた所で俺は崖から飛び降りる。
「は?」
「え?!」
「相沢さん!」
「橘さん、相沢さんが!!!」
なんて動揺が聞こえてきたけどそれはすぐに風の音にかき消されて聞こえなくなった。まあ、フォローはしてくれるだろうとやがて見えてきた地面に俺は綺麗に着地してあれだけ苦労して登った崖を十数秒で降りるこの結果。楽だよなーと思うもまだ橘さんを含めてこれをやったら危ないので絶対おすすめしてはいけない奴。
雪は、まあ頭を下にして走ってくるだけだから心配ないしね。
と言うか空中の空気さえ壁にして走り回るエアリアルと言う技。命名が岳だけどそっちの方がチートぽくってかっこよくねと少しだけすねて見たくなる。
まあ、空中に滞在できるようになったらどれだけ天使になるつもりだよと突っ込む算段はしているが、まあ、飛ぶことはないだろうと思っている……信じてるよ?
ともあれ着地した所で学生さんが安全に降りてくるために崖の下で待ち構えているお客様へと俺は視線を向ける。
「まあ、森と言えば狼だけどさ……」
なんてうんざりとぼやく。
「魔狼がこんな群れでやってくるとなんかお前ら可愛いよな」
孤高の魔狼と言う感じで対面していた10階の奴を思えば崖を背にする俺を囲むように涎を垂らしながら目の前の餌にそわそわと警戒しつつも腹を満たしたいと言うように今にも飛び掛からんという態勢。素直でよろしい尾頭を撫でてあげたいけど噛みつかれるだけだからやらないけど。
一応念のためにマロに指をさして
「ステータスオープン!」
魔狼 通称(マロ)
レベル:15
体力:200/200
魔力:200/200
攻撃力:250
防御力:150
俊敏性:250
スキル:火魔法+火炎放射Lv5
思わず苦笑い。
10階の奴らと全く同じステータスに上位互換持って来いよと言いたいけどそれを言うと本当にそうなりそうなので迂闊な事は言えないダンジョンの中。
俺は最近お気に入りの15階の魔象事マゾの牙から作った剣を取り出して構える。
「悪いけど預かってる学生さんが無事降りて来られるようにお肉になってもらうな」
ついでにご飯にもなってもらおう。
他のお肉を捌きたいって沢田に怒られるかなーなんて思うも昼時間とは違い夜時間になると出てくる魔物も変わるから仕方がないと諦めてもらうしかない。
とりあえずあまり時間をかけずに降りてくると思うから俺のミッションは俺を餌に集まったマロを一匹取り残さず仕留めるだけ。
剣を持つ腕に力を入れて瞬発力を高めるために一歩目の足に力を入れて……
通り抜きざまにマロ二体の首を切り落とす。
ごろり、ばらけないように皮を一枚繋げで一瞬で絶命させた側から収納。血を流す前に回収する俺、器用になったよな……
無駄に器用さがレベルアップしたけどそれを口に出してはいけない。さっきどこかの学生さんが手品とか言いやがったからスキル:手品なんてもんが発生したらどんな使い方すればいいか分からない無駄スキルになるからやめてよと考えながらも三匹、四匹と倒しては収納していく。
本当なら学生さんにマロと対面してもらって倒してもらう方が良いのだろうけど崖を降りながらマロと戦うなんて経験がないだろう彼らには怪我をするリスクを考えれば安全は確保するしかないし、そう頼まれているからやるけど。あとちゃんと護衛の依頼料を頂いているので不満はないけどね。
とりあえずこのダンジョンでなかなか手に入らない美味しい海産物でお支払いしてもらうと言う憎い報酬に俺のテンションはやる気満々だ。
さすがにマロも俺の事を失礼な事にヤバみ判定してか逃げ出したけど逃がしてあげるほど俺は優しくはない。
なぜならこの後マロを使って解体の練習をしてもらう事にもなっているので数は確保しておかないといけないからね。
明らかに多い分は沢田にお願いして下処理だけして自衛隊に買い取ってもらわないといけないから……やっぱり沢田に他のお肉を捌かせろと言われる未来しか思い浮かばない。
魚を持って行ってもいつの間にか手懐けたカラスを呼び寄せて処理させるし、まあおかげと言うか畑を荒らす獣の数が減ったけどこれが良いのかどうなのか全く分からないけどさ。
誰も何も言わないから俺も気にしないようにしているけど朝起きてトイレに行こうとしたら庭の周囲にびっしりカラスがいる景色は本当に勘弁してほしい。
とりあえずマロも全部回収した所で崖の上へと視線を向ける。
「ったく、いつになったら降りてくるんだ?」
マロを全部倒した頃に降りてくるだろうと思ってたのに全く姿を見せる気配がないので、仕方なくキャンプ用のバーナーを取り出しお湯を沸かしてインスタントだけどコーヒーを淹れて優雅に待つことにした。
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