教育的指導って殴られた痛みよりも別の所の方が痛いよね
そこは心配しないでいて欲しい。
なんせ俺と言うレベル40オーバーが居るのだ。
「手っ取り早く一緒に15階まで行って俺が魔象を倒すのでそれ以降の階層で皆さんを鍛えるつもりです。
16階以降はレベル20からの魔物も多いので危険は増えますがレベル上げにはぴったりです。11階から14階でレベル上げるよりもサクサク上がりますから……
あ、これはまだイチゴチョコ大福でしか実験してないですけど大丈夫です。
三匹とも立派にレベル30になりましたので一緒に頑張りましょう!」
工藤の事でぐるぐるしてた時の一番の収穫がこれ。
何気に今までの基準で16階以上行ったら絶対ヤバい奴だった。
なんせ普通に魔象が群れでやってきたりなんて事もあって、あれにはビビったけどこれ以上とない訓練相手だった。
群れを解体してしまったので魔象の群れイベントが発生する事はないのが残念だったが他のダンジョンに潜ればまた群れを成しているのかなとちょっとどきどきしたりしている。うちのダンジョンは比較的新しい物件だけど数年物のダンジョンだとどうなるのか期待しかない。
なんていいつつも20階目指して探索していたから16階がどんな所か今一つ理解してないのだ。
ただ言えたのは……
初めて魔象を倒し、少ないバッテリーで手を伸ばして録った画像の中に収められた人工的な建築物。
各階に一つはあり、そこが次の階層に続く階段がある場所だった。
どこを目指せばいいのかわからなくてとりあえず足を運んだ先にあり、城っぽい建物の玉座の間と言うのだろうか、そこの最奥へと続く廊下から次の階層に繋がっていた。
そして一際立派な19階の城。
玉座の裏の通路に今までにはなかった立ちはだかる様な設置された扉。
絶対開けてはいけない系の空気は三度目ともなれば理解できた。
雪も危険を感じてか触れようともしない野生の勘。突撃するにはまだ早いという事だろう。
これまで運よく雪と二人で攻略してきたけど、次もそうとは限らない。
今度こそ誰かに突撃してもらって安全な攻略をしたい。
それには危険と命を消費する事は理解しているが、やっぱり自分の命がかわいいのだ。
出来る限りの情報を発信して乗っかってくれる人の結果を見守りながら攻略すると言う俺達本来のやり方を今度こそ遂行したいと思っている。
決して最先端を突っ走って目立ちたいなんてかけらも思ってもいない。
ここを間違えないでくれとやたら俺を見てくる結城さんには間違えずに理解してもらいたい。
そんな所に今回は学生さんが水井さん監督の下で研修に来たけど俺達でお役に立つのか正直不安だ。
その証拠に彼らは不安を覚えてか顔色を青くしている。
大丈夫、心配しないでくれ。
君たちの大先輩の橘さんと教育にかけては随一だと思っている雪に任せておけば問題ない。
それに水井さんが加われば何も問題ないじゃないか!
橘さんもすっかり雪に鍛え上げられお世話の仕方もマスターするまでになったのだ。雪のかわいさに負けて橘さん個人のお金でちょっと良い猫缶を与えているのは知ってるけどそれぐらいは見ないふりをしている。
だって千賀さんも林さんも三輪さんもやっている事だしね。
雪さんモテモテで羨ましいよ。
「じゃあ、後は生活のルールですが詳しくは水井さんにお願いします。
注意事項ではないのですが一番近くの自販機まで3キロ、コンビニまで30キロです。
坂を下りた所のお店は18時で閉まって、街まで行くバスは16時が最終です。午前に二本、午後に二本しかないので何かあれば買い出しの時に纏めていく方が効率がいいと思います。
あと普通に人よりも熊や猪の方が多い地域なのでジョギングする時は一人にならないように。山に引きずり込まれたら見つけられないのでヘリコプター飛ばしてもらったり猟友会の人にお願いしないといけなかったりいろいろあるのでそこはよろしくお願いします」
「ああ、そこはうちから派遣するから心配はいらないぞ」
結城さんの一言に皆さん顔色を青くするものの俺としては高齢化の進むこの村の人達に手入れをしてない山に登ってくれと言わなくて済んでちょっとホッとした。
「あとはおいおい千賀さんの方から連絡を回してもらいます。
それと聞いた所調理について手を出さないでくれと言われましたが、隣の沢田が料理に関してはプロなので何かあった時は聞いてください。
魔物の解体とか一通りできますから是非とも自分で刈った魔物は美味しく食べれるように頑張ってください」
言えばぺこりと頭を下げる沢田に皆さんほっとした様子。
やっぱりそこが一番不安だったんだろうなとあからさまに沢田を見る目が何か崇拝している物に変わった。
でも勘違いするなよ。
こう見えても女王様と言う称号をもっているからな。女王じゃないんだぞ?女王様だぞ?
沢田の闇歴史なのでそこは下手に突っ込むと今晩のご飯からおかずがなくなるので口にはしないけど。
「ではよろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げてのご挨拶。
皆さんは敬礼という挨拶という自衛隊スタイル。いや、警察もか?
社会経験ないと判らないもんだなととりあえず何かあれば頭を下げるスタイルで解散となればさっそくと言うように結城さんがお供の人を引き連れて
「我々も帰る事になる。
彼らの滞在期間の中でどこまで伸びるかは未知数だが、是非ともよろしく頼む」
なんて第一印象にもなる一番最初の時にこういうキャラで言ってくれればいいのにと思うも俺の中で地に落ちた評価はそんな営業的スマイルでは覆すことは出来ず
「もちろんです。僕の方でもみんなといっしょにレベルを上げていきたいと思います」
満面の笑顔で作る好青年を装う営業スマイルで対応をすればなぜか握手をされた。
じんわりと力を入れられてしまったけど
「これ、俺も本気で返した方が良いですか?」
ささやかな疑問に
「そうなると君を堂々と東京に連れて帰る口実になって喜ばしいのだが?」
そんな罠。
「やだ、俺イケおじに狙われてるw」
なんて周囲の視線がぎょっとしている中で笑い飛ばしたもののとても貴重な言葉を頂いた。
こうやってこれから安い挑発をしてくる人達がたくさんくるのだろう。いちいち相手をしていたら法律によってどうしようもなくなるぞと言う警告をありがたく頂きながら
「所で失礼ですが結城さんっておいくつです?」
そんなどうでもいい話の転換にも対応してくれる営業の人だった。
「47だが……」
それがどうしたと言うが年齢より若く見えるのは詐欺と言う所か。
だけどその年齢を聞いて俺は顔を歪める。
「なんか問題でも?」
「いえ、とあるムカつく親父と同じ年齢だっていう事を思い出した自分を呪ってる最中なのであまりお気になさらずに」
否な数字を聞いてしまったと言うように言えば
「そういう事ならあまり顔に出さないように訓練するんだな」
どこまでも大人の忠告。
「それは、どうも……」
初対面の時よりも少しだけ印象が良くなってしまったなと思っている間に庭に回された車がやって来た所でそのまま乗り込み、皆さんが敬礼する中去って行った。
車が見えなくなるところでやっと敬礼の姿勢は解かれた直後
「お前は何をやってる!」
千賀さんからげんこつをいただいてしまった。
そこまで痛くなかったけど俺は頭を抱えて蹲り
「えー?コミュ力を見せつけられてもっとうまく立ち回れって言われたような気が?」
「んなわけないだろ!」
再度拳骨を頂いていかに自衛隊の上下感の厳しさを話を聞かされたけど、俺自衛隊じゃないし…… な言い訳を一切許してくれない俺を放っておいて水井さんは学生の子達にさっさと部屋で荷物を片付けさせてからのミーティングを済ませる指導者ぶり。折角なら俺の事も助けてよと念じていれば
「千賀、説教の途中悪いが一度全員ダンジョンに連れて行くからちょっと相沢を借りるぞ」
「水井さん、待ってました……」
と言う所でやっと救出され、俺に微妙な視線を送ってくる学生の皆さんにさらに微妙な気分にさせてしまうダンジョンの入り口へと案内するのだった。
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