沢田は料理をしている時が一番かわいいと思います
沢田が手にしていた縄は畑や山の雑草や枝をまとめる物に使っている物だった。
沢田は称号・女王様の能力なのか縄をまるで鞭のように操っている。
「やだ、かっこいい……」
「いや、怖いの間違いだ!しっかりしろ相沢!」
肩を掴まれて前後にガクガク揺さぶられてはっと意識を取り戻し
「俺何か変な事言った?!」
「いった!縛られたいと言ってたぞ」
「言うわけがないだろ!!!」
思わず大声で言い返すけど、こういう所林さんって本当に油断ならないと新たな性癖をだまされて開くところだと思いながらも沢田たちを見れば工藤は沢田を抑え込もうとするも沢田の操る縄の軌道に阻まれてむしろ11階に続く階段の方に追い詰められている。
「沢田も強くなったな」
ダンジョンの外ならあっけなく工藤に押さえつけられる沢田でもダンジョンの中なら対等に、それ以上の対応が出来る。
例えばいつの間にか縄でわっかを作り、工藤の足を絡めとってすっころばせていたとか……
「あーはっはははは!!! 上から見る景色ってサイコー!!!」
「くっ!!!」
豪快な声を上げて笑う沢田にさすがの工藤も迫力に飲まれて言い返す言葉が無いらしい。
そして女王様モードの沢田。
レベルの力を借りて工藤を床や壁、天井に当てるように振り回してその無様な姿を見下ろすもそこはレベルを上げた工藤。しっかりと意識をもって床から沢田を睨みつける。
女王様にたてつくそう言う根性をなんで他に使わなかったんだろうなと思うも相手が女王様。
しがない冒険者では抵抗する余地はなかったようだ。
そんな工藤を見下ろしながら足を大きく上げた沢田は思いっきり床に向って踏み込む。
俺も林さんも反射的に目を瞑ってなぜか抱き合っていた。
だから何が起きたかなんてわからないけど工藤の絶叫がこの狭いホールにも似た造りのマロ部屋に響き渡っていた。
見ていません。
何が起きたか知りません。
だけど白目をむいて口から泡を吹きだして意識を失っている工藤がいて、満足げに気持ちよさそうな笑みを浮かべる沢田が今も工藤の以下略。
さすがにやり過ぎだ。
工藤の遺伝子が増えないのは良いがどう考えてもアウトだ。
だけど俺も林さんも止められることが出来ずに工藤を見下ろしながら唇を舐めている沢田に震えながらもまだ思考の片隅はこの状況をどうにかしないと……という程度に頭は働いている。
俺達も女王様の支配下にある中震える指先を沢田に向けてステータスを起動する。
そしていつの間にか発生していた料理人と言う称号を見つければそれに設定をし直した所で
「え?」
我に返った沢田。
だけど記憶はちゃんとあるようだ。
その証拠に泡を口の隅から流しながら白目をむいて意識を失っている工藤を見て冷静に
「キモっっっ!!!」
多分本日一番の迷台詞だろう。
正直意識を飛ばしている工藤が羨ましかった。
俺は抱き合っていた林さんと離れながら工藤を少しだけ憐れむのだった。
「ねえ、一体何があったの?」
なんて言いながら工藤の足につけた縄を離さずに引きずって来た沢田の亡き爺さんは確か猟友会の人だったと婆ちゃんが言っていたのを思い出していた。
獲物は逃がさない、いい教育だよともうもこれはどうかと思うが……
意識を失った工藤の顔面に向って猫パンチを繰り出す雪さん。
ダンジョン仕様のパンチなのでこの後凄い事になるだろうなと想像すれば笑うしかなく
「まあ、何とか工藤を捕獲できたから。
沢田……」
呼べば女王様ではない俺達がよく知る料理大好きの沢田が振り向いて
「たくさん怖い思いさせてごめん。
だけど……」
そう言って工藤を見る。
いくらこいつが救いようのないクズでも
「やっぱりこういう事はしちゃいけないと思うんだ」
肉体は勿論だが精神的な部分は同じ男として同情はする。しかしそれ以上の罪を重ねる工藤には同情は出来ない、そんなどこに持って行けばいいのかわからない人生経験不足な俺に男運最悪の沢田は言う。
「そうね。普通の男性には私だってしないよ?
でも無駄打ちするしか能のない無駄に役立たずの計画性の無駄な物はない方が世の為と言うものなの」
お願いです。
無駄を連呼しないでください。
これが俺達の知らなかった沢田と言うのだろうか、ガチギレした沢田を本当に怒らしてはダメだと言う懸案にもう言葉はかけない方がましだと言うように沢田から縄を受け取って縛り付けようと思うも
「あ、岳がいい物持たせてくれたの。
折角だから工藤相手なら問題ないから使ってみようよ!」
何をですかと言うように林さんはのぞき込んで沈黙をした。
縄は一応足をぐるぐる巻きにして縛ってからの沢田が工藤自体に巻き付けたのは
「クマよけの柵がなんでこんな所にあるんだよ……」
「ん?岳が持って行けって……
相沢がなんか改造したんだって?
だけど一度も使った事無いから使えって言ってたよ」
なんてどうでもよさげに巻き付けるその姿、恐ろしい事震えていれば
「相沢、あれは何だ……」
只の熊よけではない事を悟ってか暫く高い天井を眺め
「冗談で改良に改良を加えた100万ボルト?ってやつです」
じっさいは100万ボルトなんてならないけど、気分的なノリで乾電池を入れる所に冗談でマジックで書いた名前を文字通りに受け入れた岳の残念仕様を思い出せば納得した林さんも静かに笑いを零すのだった。
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