新しいトイレを作ってもらえるそうです!!!
「おはようございます。
道路拡張及び防壁工事、ガードレール設置、簡易トイレの設置に来ました土木課工藤班。工藤以下11名になります」
ずらりと玄関前に並ばれて挨拶を受ける俺は
「水井さん達とはまた違う立派な筋肉で」
なんて思わずもりもりの筋肉の量がすごくてあっけに取られてしまった。
「水井班は建築に特化した集団ですからね。
俺達工藤班は土木関係に強いので適材適所と言う奴でしょうか」
にこりと笑う皆様よく日に焼けたこんがりお肌は健康そのもののイメージカラー。
この山奥では地上より1000メートル以上お空に近い分紫外線量も豊富でそんな事したらあっと言う間に皮膚癌になるのではと危険を覚えてしまうものの基本俺は引きこもり体質。
人里からもお外からも引きこもるお家大好き人間の家の周りがこんなにも開けているのは主に岳のおかげだろう。いい友人を持って感涙としている横の岳は土木関係?適材適所?どういう意味の四文字熟語なんて沢田に聞いていた。残念!
なんて事を悟られないように気のいい田舎の人間を装って
「この山奥までよく来てくださいました。
相沢遥です。そして友人の沢田花梨と上田岳です」
なんて笑顔で簡単な自己紹介をすれば皆さん流れるように名前だけの自己紹介をしてくれて、なんだか呪文のように数珠つなぎな紹介の仕方にとりあえず工藤さんの顔と名前を覚えればいいからと岳にそっと耳打ちしておいた。
詳しくは林さんに聞けばいいだろうという事にして
「この相沢家ダンジョンの管理責任者の千賀だ。以下林、三輪、橘の四名が当たる。
早速だが話を聞いていると思うが宿舎の方は水井班が使っていた宿舎を使うように。工事個所は水井から指示が出ていると聞いたが……」
「水井班から受けた指示書より許可が下りた場所の工事にあたります」
「って事は全部ではないのか……」
工藤さんの言葉に千賀さんが渋る理由はただひたすら危険だからの一言。慣れればスリルありますよなんて俺は余分な事は言わないまま話を聞いている。
「季節的に全部は無理だろうからと、とりあえず道路の拡張、ガードレールの設置を優先するようにと言われてます」
「だよな。
防壁工事に取り掛かると通行が出来なくなるからな……」
話を聞いて見れば納得。
だけどその前に……
「あの、トイレは……」
沢田専用女子トイレは設置してもらえたが男子専用のトイレはいつと言うように聞けば工藤さんはニカリと白い歯を光らせるように笑ってくれた。
「重機を運び込み次第真っ先に取り掛かりますよ」
そう言われてほっとした。
やっと文明が戻って来た。
思わず感涙と言うように空に手を付き上げてのガッツポーズ。
岳たちの白い目なんて気にしないもんね!
視界の端では工藤さんもこいつ大丈夫かというような目をしているけどその少し隣では橘さんが良かったねと言うように生温かい目を向けてくれた。
まあ、ぼっとんの恐怖は身に染みているだろうから笑う事はないだろうけど都市ガスと上下水道完備が当たり前のような世界で生まれ育った身としては旅行先の遭遇ならいざ知らず日々の日常だといろいろヤバい事にも遭遇して泣きたい事が起きるんだよと心の中で主張。
例えば大雨が降ってトイレに流れ込んで……とか。
とりあえず少なくともちゃんとしてもらえれば大雨位であふれる事はないだろうからそれだけでも安心できると言う物。一度でも中身がなくても体験してみれば考えを改めるものだよと心の中で少しだけ涙を流してみた。
「あと……」
俺は千賀さんを見上げる。
それだけで何が言いたいか理解してくれた俺達のお父さん(?)は
「ダンジョン突入の準備は出来ているな?」
「ああ、千賀も当然知っているだろうが水井班の活躍は聞いているだろう。
水井班は近く海外にも派遣される予定となり教育面の人材不足を想定してこちらのダンジョンの雪と言う方の指導を受けるように言われている」
思わず全員で遠い目をしてしまう。
と言うか雪さんの存在がばれてしまった。
いや、ばれるよな。
だって水井班の皆さま雪さんを崇拝してる様子だったからね。
寧ろついて行くべきは雪さん。そして胃袋を掴んだのは沢田と言うように水井班に取って俺は単なるダンジョンの保持者ぐらいの存在でしかない。
因みに岳は雪の通訳としてありがたがられていた。
不思議な事に別に猫語マスター何てスキルも称号もないと言う……
岳、お前本当に人間かと疑った事は一度や二度じゃなくなってきたぞ……
友人がどんな進化を遂げようとしているのか興味はかけらもないが、この進化論だか退化論だかは密かに楽しみな成長なので黙って見守る事にしている。
「ところでだ」
なんてそわそわしだす工藤さんの様子に千賀さんもしょうがない奴めと目を細め
「ダンジョンを見たいのだろ?」
「先輩ありがとうございます。土木課に居るとダンジョンに触れる機会も少ないので」
なんて良い笑顔。と言うか
「先輩?」
三十過ぎて先輩後輩なんてあるのと聞けば
「ああ、こいつとは高校時代のラグビー部で出会ってな。
その時からの腐れ縁だ」
「ひどいよ先輩。憧れて先輩を追いかけて自衛隊に入ったのに」
なんて本当に傷ついた顔の工藤さん。
その背後の皆さんは休めの姿勢で身動きせずにピシッと立っていた。むしろ怖いんだけどと思うもその中に女性が三名いるのが驚いた。
俺達に視線を欠片も合わさず何所を見ているんだろうと思うも
「それよりも相沢君。彼らにダンジョンを紹介しても?」
相沢君と呼ばれて身震いする。
千賀さん、あんた後輩と会って気分が良いからって喜色悪い呼び方するなよと半眼で睨んでしまうも気分が良いおっさんには欠片も通用しなかった。
「どうぞ。今なら千賀さん達でも皆さんを案内できるからここのダンジョンツアーにでも行ってきていいよ。水井さん達もやってることだからね。
入り口は岳が見張るからどうぞ」
と許可を出せば工藤班の方達は身動きせずとも嬉しそうに口角が上がっているのを俺も千賀さんも見ればもう遠慮することは出来ないようで
「とりあえず荷物を片付けて15分後にここに集合だ」
そんな命令に皆さん蜘蛛の子を散らすように散らばってさっきまで誰一人口を開けなかった皆様の歓喜の悲鳴にやっぱり楽しみだったんだあなと思うも何とも言えない違和感に眉間を狭めいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます