水井班、こうやって猫語を理解したようです
その白く小さなお猫様は一瞬見知らぬ顔がある事に気付いて足を止めるもすぐに相沢にこの人たち誰?と言うように視線を向けるが手にしたちゅーるを見てぴょんと相沢の肩までよじ登り
「にゃ~!にゃ~!」
なんて俺達の事なんて忘れたと言わんばかりに甘えるような声ですり寄っていた。
かわいい!
チュールがないと近寄ってもくれない雪にデレる相沢だったが、至福の顔でちゅーるを食す雪の頭を撫でながら
「雪さん、こちらの新人さんがダンジョンを案内してほしいって言うからぜひ鍛えてあげてくれるかな?
とりあえず10階ぐらいはソロで行けるぐらいにお願いね?」
言えばチュールを食べ終えた雪は相沢の腕からぴょんと飛び降りて一つのカバンを見つけて前足でたしたしと叩く。
それに気づけば沢田がカバン、もとい、リュックを手にしてその中に水やかりかり、ちゅーるを詰めた。
「一体お前ら何を……」
「いや、まさか……」
「マジかこいつ?!」
「ふざけんなっ!!!」
「俺の想像が正しかったら止めてくれ……」
うわああああ!!!
なんとも言えない駄々洩れの心の悲鳴を聞きながら相沢は言った
「当ダンジョンのアタッカーです。
今の所11階への扉を一人では開けれないのでそこまでしか行けれませんが、昼間の間は雪と一緒に潜ってください。
狩りの仕方なら俺達より上手いし、ダンジョンの中なら俺達の会話も理解できるので意思疎通には問題ありません。
因みにレベルは25を超えた所なのでちょっとした集団にも対応できるので安心してダンジョンに潜ってください」
「にゃ~ん!」
任せろと言わんばかりのそんな頼もしい声と共に沢田が水井に荷物を渡した所を見届けて雪はひょいとダンジョンの中に入って行った。
だけどすぐに顔を出して
「にゃーん……」
何をしていると言う不満げな声と視線。
ダンジョンの中に一歩足を踏み込めばそこはもう別世界と言うように強い意志の宿る視線に思わず姿勢を正し
「はっ!ただいま向かいます!」
なんて敬礼。
相沢は雪の言いなりになっている水井たちににんまりと笑みを浮かべるのだった。
ダンジョンに入いる前に沢田が2リットルのペットボトルを二本ずつ持たせて最後尾の奴には
「菓子パンですがおやつです。帰り道に食べてください」
年頃の女の子の笑顔に素直に受け取る部下を殴りつけたかった。
なぜそんな心遣いよりも武器を持たせてくれと言えないんだ!!!
年齢≠彼女いない歴の部下を怒鳴りつけたかったけど女性に話しかけられてそれも右から左に受け流されてしまった。仕事を淡々と進める優秀な部下なのにほんとに対人間、しかも女性になると何故ポンコツになるんだと叫びたかった。
とはいえ俺達に水と食料を笑顔で持たせ後は猫に任せると言うヤバい奴らにかかわってしまったと後悔しながらも先頭を走る雪を追いかけるが、遅れればスピードを緩めて誰一人取りこぼしがないように10階の部屋へと案内する手腕、軍曹とお呼びしたいと誰かが言った。
そして俺達はついに禁断の間とも言われる10階に足を運び、と言うか軍曹に追い立てたてられて10階に連れ込まれ、雪の華麗な戦いを見学させてもらうと言うダンジョンツアーを経験させてもらうのだった。
本当にただ壁際に並んで戦う様子を見るそんなダンジョンツアー。
見ているだけなのに臍の下がきゅっとなる体験をして、魔狼が手も足も出せずに終わった戦いに俺達はあっけにとられるのだった。
こんなものか?
世界の災厄と言われた魔狼があの火炎放射も吐き出す事なく終わってしまった戦いはやがて現れた宝箱の出現をぼんやりと眺めながら終わったんだよなと誰ともなく腰が砕けたと言うようにへたり込むもそこは雪軍曹。
華麗な猫パンチで宝箱を次々に開けてマントを咥えて俺の元にもってきた。そして次には剣を持って来て俺に渡し、しきりにマントをひっかき始めた。
「なんだ?」
意味が分からず顔をしかめるも
「ひょっとしてこの剣でマントを切れと言ってるのでは?」
猫を飼っている部下の耳を疑う言葉に何故にと思うものの
「軍曹の首輪、あの宝箱から出てきた奴ですよね?」
言われてみれば宝箱が開かれて中身が零れ落ちたチョーカーらしきものと雪が身に着けている首輪のサイズが違えど同一であることに気が付いた。
「首輪はともかく、そこに巻き付けられている布、ひょっとしてこのマントの切れ端ではないでしょうか……」
「似てはいるが……」
なんて不審に思いながらも眺めていればそうだと言わんばかりに雪はにゃーにゃ―と鳴きだした。
となれば後は雪の通訳にその部下を与える。
「とりあえず何を言ってるか報告」
ここまでくればもうやけっぱちだ。
猫動画は好きだが実際の猫は何を考えているか分からんと言うように丸投げすれば雪担当になった部下の佐藤はマントを丁寧に広げれば雪はこいつは使えると言うように剣を佐藤に渡して雪は爪で同じ場所を何度もひっかいていた。
水井には全く理解もできない行動だったが佐藤はなるほどと言って
「水井さん、雪はこのマントを切れと言ってるようですが……」
何を言ってると思ったものの雪は理解してくれたのが嬉しくにゃーんと佐藤の隣できりっとした姿勢でそうだと言っていた、様に思えた。
全く意味わからん。
だけど、このマントや剣の所有者でもある雪のいう事に俺達はとやかく言う権利はないので
「佐藤に任せる」
そう言えば雪と佐藤はなにやらにゃーにゃー、ふんふんと俺達にでもわかる会話をしてくれと言うような意思の疎通をして……
「水井さん、雪からみんなにプレゼントのようです!」
それは切り裂かれた宝箱から出てきたマントの破片だった。
雪から一人ひとり配られた細長く切り裂かれたマントを誰ともなく受け取り困惑するも
「こうやって身に着けろって言ってます」
「いや、俺には何を言ってるか分からんのだが……」
「水井さんこそ何を言っているのですか。
雪軍曹は俺達との間にある言葉の壁を越えてこんなにもわかりやすく話してくれているのに、俺達が理解しようとしなくてどうするのですか」
「すまん。言ってる意味が分からん」
「歩み寄る大切さを言っているのですよ」
全く意味が解らん。
そう言いたかったが堂々巡りになりそうで口を閉ざした水井だが……
「とりあえずこの布切れを身につければいいのだな」
そう言って邪魔にならないだろうとタオルを首にまきつけるようにすれば全員俺を真似て首に巻き付ける。
真似などしなくてもいいのにと思うも面白いから黙っていればその様子を満足げに見て雪は10階から9階に上がる階段を上りだした所で俺達は放置された宝箱の中身を回収して追いかけるのだった。
さあ、帰るぞ。
そんな空気に水と軽食になる菓子パンを広げれば雪も小袋入りのかりかり一袋とちゅーるを食べてから水を飲むと言うさっきの異様さが嘘みたいな猫らしい姿に俺達は癒されまくった。
誰だよ。
こんなにも美人さんな猫ちゃんを軍曹何て呼んだ奴。
懸命にかりかりを食べる姿にみんなでマロと対面した疲労を回復していればすぐに食事を終えた雪は俺達の想像を超える事をしてくれた。
そう。
まったりと毛づくろいまでして寛いだかと思えばまた10階の扉を開け広げて下さったのだ……
「ええと、雪さん。
一体何を……」
聞けば答えはただ一つ。
「ふーっっっ!!!」
なんて俺達を10階に向えと言わんばかりの威嚇。
「いや、まさか……」
「マジかこいつ?!」
「ふざけんなっ!!!」
「俺の想像が正しかったら止めてくれ……」
くしくもダンジョンに潜る前と同じセリフを口にする部下。
だが雪はやる気だ。
俺達より圧倒的高いレベルの白い悪魔は俺達を10階へと追い立てて……
俺達はこうやって白い悪魔事雪軍曹の指示の下、一向に帰ってこない様子に心配になって迎えに来た相沢たちに助けられるまで徹底的に鍛え上げられてダンジョン対策課なんて負けない戦力を身に付ける
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