称号
どうやら新しい称号を得ると自動で称号が変更するシステムのようだ。
勝手に変わってほしくないと思うもちょいちょいと変更をすればステータスの数値がくるくると変わった。
殺戮者から槍使いに変えて気が付いたけど想像が一致して眉間を狭めた。
魔法が関係するものに関しては異常値ともいえる魔力値なのだが槍使いなど魔法に関係しないとダンジョンに入れば誰もが最初に会得する駆け出し冒険者の様な平均的な成長が基本となる数値になる。いわゆるレベルに沿った値。象に似た魔物よりレベルが圧倒しててよかったー。
多少今のレベルに上がる段階で戦闘スタイルからの増減はあるもののそれが冒険者の称号となる判定基準。なんだ、変わらないやと思っても不思議と駆け出し冒険者のステータスの状態は見れてもそれに変えることは出来ない。
もう駆け出しじゃないだろうと言う突込みと理解して基本値は冒険者へ移行という事のようだ。他の称号をくるくると確認すれば魔狼と魔象を征し者については単なる名誉称号のようだ。
雪で確認すれば当然俺と同じく魔象を征し者になっていて……
雪のステータスなんて見た事無かったけど俊敏性が俺の魔法並みに異常値になっていて、確かにこれなら俺と雪の10近くあるレベル差でも追いつけることが出来ないわと納得しながらもまだまだ解明できてない称号についてはいったん保留にして俺は16階に続く階段を下る。もう頭がパンクしそう。とりあえず文字に起こしてからかんがえなおすことにした。
俺が階段に足を運んだことで雪が次に行くのか?と言うように瞳をきらきらとさせるも
「沢田に晩飯までに帰って来いって言われてるから今日は行かないぞ。
それにマゾを単独で倒せないうちはここから先は禁止だ」
言えば見た事ないくらいの不細工な顔で不貞腐れたようにくるりと身をひるがえしてまたマゾに八つ当たり。
あまり傷つけないでよと思うもそれぐらいで傷つくマゾではありませんと言うように雪もステータスに翻弄されているようなのでちょっと弄っておく。
その前に16階への扉を開けてからの……
「毒霧!」
さらに
「スマホよ頑張れ!」
残り10%を切ったバッテリーにもかかわらず扉の隙間からスマホを握りしめた手を突っ込んで16階の入り口の景色を撮影からの
「あ、落ちた……」
蝗じゃないけど何があるのかわからない為に覗くような真似はしない俺でも一応今度はちゃんとどうなっているか確かめようと扉に隠れながらもスマホごしに様子を見ようとすればバッテリーが寿命なのか一瞬で落ちてしまった。
録画できているかも怪しいけど、少しでも録画されていますようにと願いながら扉を閉めようとすれば不意に何かが聞こえた。
何か甲高い悲鳴のような声が聞こえ……
「魔物の遠吠え?怖っ!!」
震えながら未知の世界怖いと急いで扉を閉めて逃げるように階段を上がり、今もマゾに八つ当たりをする雪に
「そんなことしてるとサドって称号が付くぞ」
なんて笑えば睨まれてしまう隙に魔象を収納
牙で剣か何か作ってもらって後はお肉を味見したら千賀さんに押し付ければいい。どう頑張っても全部食べれそうにないからね。
冷凍庫で死蔵しかけているマロ肉を何とかしないとマゾ一体で冷凍庫はキャパオーバーだからね。
俺が収納しておけばいいのだろうけどそうすると今度は沢田が使いたい時に使えないから本末転倒だと言う所だ。
「それよりも沢田はマゾを解体してくれるかな?」
「にゃー」
なんてどこか感情を含めない鳴き方は知らんと言う所だろう。
とりあえず
「それよりも沢田の晩飯まで時間がないぞ!急げ!」
なんて言えば沢田のご飯は美味いと摺り込まれた雪はすぐさまぴゅーっと走り出してしまい、だけどそれでも俺を置いて行かないと言うように14階に入る直前で止まって振り向き
「急がないと置いていくぞ!」
そんな視線に俺も急いで追いかけるのだった。
先行する雪を追いかけながらも帰り道は俺のしでかした事を直視する事になる。
風光明媚、そう言った世界は俺が何の考えなしに水を奪い、返した。それだけの行為の悲惨さが刻みつけられていた。
あれから時間が過ぎていたからどこにも魔物の姿はなかったものの、濁流に押し流された景色は決して雄大な生命力に心震わせる感動を引き出すことはなく、ただただ、悲しさと後悔しか湧き起らなかった。
まだ乾ききってないどろどろの大地に足を取られて何度も転ぶ。
自分がしでかしたことに恐怖を覚え、足が止まりそうになるけどその度に雪が足を止めるなとひっかいて俺を現実に引き戻してくれる。
とぼとぼ、そんな足取りでもやがて地上に向かう階段にたどり着くも、その先で起こした事も思い出して見たくないと言うように足を止めてしまうも
「ふーっ!!!」
まるで何を今さら後悔して足を止めているんだ!とでもいうかのような威嚇に俺はまたずるずると足を引きずるように階を上がる為に足を運ぼうとするが……
「雪、ちょっと待ってて」
踵を返して次のダンジョンの入り口となる階段から放った水の影響はここにも繋ぐ川に従って当然影響もある。
ただ空からの水柱の澄んだ水のおかげで流れが生まれ、多少なりとも透明度は上がっていた。
俺は駆け足でその流れの恵みを頂く一つの小さな池の水に手を触れて
「この池の水だけの分を頂きます」
明確なイメージと範囲の水は瞬間的に収納され、律儀にもついてきた雪の心配げな視線に無理やり笑みを作ってみせる。
「お待たせ。行こうか」
そう言って俺達は11階のフロアへと足を踏み入れた。
空気は澄んだ森の空気だけど、森を抜ければ未だにどこか煤けた匂いが広がっていた。
真っ黒に焦げた大草原はまだ白い煙がところどころ上がっているが、ほとんど自然鎮火した様子。おかげでこの予備の靴の底まで溶ける事はなかった。
だけど俺はここをこのままにしてはいけないと言うようにあの日の魔法を放った場所、11階に降り立った場所に再び立ち、大丈夫と俺は俺に言い聞かせるように顔をあげる。
そっと目を瞑り、失敗に脅えて不安になりながらも手を空へと伸ばす。
思うのはこの何処までも広がる青空から優しく降り注ぐ霧のように。
細かく濃厚な水の匂いの中を歩くように。
肌にあたる感触はないものの確実にしっとりと水を衣のように纏い雲の中を歩く、そんな優しい雨。
焼け付けられてきっともう成長する事はない草花への弔いの代わりにもう痛みがない事を願い、そしてきっとこの状態からでも芽吹くだろう植物の生命力への祝福の雨。
なんて事はない俺が住む山の天候だけど、ここではそれさえ難しいだろう恵みの雨をさっき頂いた池の水で再現する。
少し泥臭さがあるけど、それは広範囲にわたり、だけど水の量と俺の魔力から作り出せる水の量は限られていて……
魔力が尽きる一歩手前でもう十分だと背中から雪の一撃を貰って目を開ければ……
まるで朝露にでも濡れたかのようなみずみずしい光景が広がっていた。
そしてどこからかやって来たのか小さな鳥が、虫がその朝露のような雫で懸命に喉を潤していた。
魔物のはずなのに、こんなにもまだたくさんの命が残っていてなんだかこの世界の本来の姿とでもいうようなとても貴重な光景を見た気がした。少しだけ許された、そんな気がして俺は雪の揺れるしっぽを追いかけるように階段を上り、10階の扉がきちんと閉ざされるのを見届けてからいろいろありすぎた出来事に疲れ果て、やがて日の長いはずの夏場でもどっぷりと暗くなっていた時間にやっと家にたどり着き……
「夕飯までに帰って来いって言ったでしょ!」
なんて沢田に怒られてしまったけど、とりあえずあまりにもどろどろの俺の姿に岳に風呂に入って来いと沢田から俺を守るように雪と一緒に風呂に押し込められ……
橘さんが遅いから様子を見に来たらしいけど俺はそれにも気づかずに居間でご飯を食べることなく座布団を枕に眠ってしまっていた。
相沢 遥 (22才) 性別:男
称号:天を操りし者+ new
レベル:43
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