そう言えばあの時もこうだったな……
環境破壊行為活動、俺にはかなり重いストレスだった。
ちょっと昔見たアニメを思い浮かべながらチャッカマンを使った気でいたらがっつり再現をしてしまっていた。
そりゃあ、チャッカマンで毎日仏壇のお線香を上げたり、チャッカマンが進化してガスバーナーになって炭を焚いたり……
そう言えば昔使ってたとか言ってた五右衛門風呂を復活して使い始めたけどその時薪燃やすのにガスバーナー使いまくってたな。
ほら、プロパンガス代節約になるしこの体だから簡単に薪割もできるようになったからね。
別にいつも使っているお風呂がダンジョンから帰った時すぐそばあるからって汚れた格好のまま飛び込んでなんとなくイメージが血塗られた風呂場になったからのんびりできるわけないじゃんなんて思ってはいない。
まあ、普通にプロパンで沸かしてもね……
夏場でも最高気温30度のこの山だとあっという間にお風呂が冷えて沸かし直しの繰り返し、ガス代もったいないだろう!って事になりそうなりました。
もちろん剥がれかけたタイルとか罅が入ったコンクリートとかは土木様達が直してくれました。水井さんありがとう!
代わりに休日の人が使ってもいいよと自分のお風呂の薪は自分達で調達する事を前提に利用してもらっている。
だけどそこは土木様とは言え自衛隊の人。
俺が指定した間伐してほしい木を切り倒して薪を作ると言うマンパワーを発揮してくれました。
寧ろ生き生きしてるので俺の方がどん引きです。
お風呂の水は山水を引いているから水代はいらないしね。
忙しい合間を縫ってダンジョンに潜ったり薪を割ったりほんと働き者の皆さまだと思います。
とは言え皆様あまり薪に火を着けるのはお上手ではないので火種は俺が作らせてもらってました。
土間台所から火種を貰って……の工程が俺のガスバーナーです。
後は上手く皆さん火種を絶やさずに使ってくれますが、それでも毎日の事。朝になるとダンジョンから帰ってくる岳がお風呂に入りたいとなかなか冷める事のない五右衛門風呂に飛び込んでいくのでその時も少し沸かしてあげる優しい俺。
うん。
スキルダンジョン外使用許可の効果はダンジョン外でもレベルアップにつながるなんてさすがに想像していませんでした。
久しぶりに見た自分のステータスの詳細部分。
がっつり魔法系が育ってました。
火魔法だってレベル9まで成長してました。
まあ、マロだってレベル5だったからそうなるよね。
気になるのは火魔法のレベルが何段階だという事。
まさかレベル10でMaxとかないよねーなんて他の魔法もいろいろ成長している数字を見ないふりをする。
おかしいなあ。
ゲームをしている時は結構バトルごとに成長したかどうかあれほど気にしていたはずなのにいざ自分の事になると目を向けることが出来なかった。
さっきだって抜いた水を戻しただけなのにきっと水流なんだよね。
はい、お察しの通り水流に耐えれなかった皆様がちゃんと俺のレベルとなって数字に表れてくれました。
本日しでかしただけでレベルが5つも上がりました……
俺の場合死闘を繰り返した数=レベルじゃないんだよ。
しでかした回数=レベルなんだよ。
さすがにメンタルに来てしくしく泣きながらも隣を伴走する雪さんに時々けりを入れられて走っています。
雪さんのあんよ小さいからちょうどあばらの隙間に突き刺さってガチ痛いです。
だけどそれぐらいじゃないと現実に帰れないと言うか足が止まって身動き取れなくなりそうでありがたいです。
雪さんはこんな俺を励ましつつ襲い来る魔物も対峙してくれます。
いつもなら捨て行く魔物でもお味見位はするのに今は俺の面倒に忙しくてお耳を桜カットにする程度に収めています。自分が右耳をカットされているせいか出会う魔物総て右耳カットです。オスメス関係ないじゃんなんて思うけどそれが雪さんのマークなら所有者の証として口ははさみません。例え数時間後にダンジョンに吸収される存在でも。
とりあえず持って帰りたいものが俺に向かってにゃーと鳴きながら前足で魔物を足したしするから収納するけど帰って沢田と岳に解体お願いする時いつも言われます。
「雪さん今日も大量だね!」
「まったく、たまにはきちんと魔物を狩って来いよ」
どれが美味しいかは雪が一番詳しいからお任せなのです。
とは言え今日は本当に酷い。
あっという間にレベル40を超えてしまい、俺が勝手に仮定した階層掛ける2の限界法則を軽く無視しております。
って言うか、本当に一生懸命討伐してくれている雪さんに申し訳ないくらいレベルが上がり、上がれば上がるほど情けなさが沸き起こる成長です。
あれよ、わずかな光の中で水ばかりを上げてひょろひょろと成長する植物と同じなわけよ。
あ、なんかしっくりきた……
まあ、こんな情けない俺を雪が引っ張ってくれるから気が付けば14階の終点まで辿り着いた。
いつの間にだろうね。
13階を駆け抜けた記憶も14階の扉の前まで来た記憶もほとんどありません。
あるのは時々入る雪さんのキックとパンチの鋭い痛みだけ。
だけど雪さんは優しいから爪を立てずに気合を入れてくれます。
ほら、気合入れると俺真っ二つになるからね。
自重してくれるのが雪さんの優しさだと思います。
そんなわけで重厚な石造りの扉を見上げながらこの先に居る魔物を想像して早くここを突破してラスボスを早々とご退場していただき平和な我が家を取り戻したいと心の底から願っています。自衛隊の方々、特に橘さんには是非ともこのダンジョンのエースとなってラスボスを仕留めてもらいたいと願っております。他人願望過ぎてごめんなさい。
ほとんど俺がテキトーすぎたのがいけなくって一人鬱ってますが、それでもここで付けた力は必ずほかのダンジョンでもお役に立てると信じているので全力で応援するつもりです。
そして今では雪と二人でここまで辿り着けるようになり
「ダンジョンなんか早く無くしてまた平和な山生活に戻ろうな」
なんて足元で俺を見上げる雪さんが勿論と言うようににゃーと鳴いた。
ダンジョンのない生活を取り戻したいのは俺だけではない。
その事に気が付けば勇気を分けてもらえたような気がして顔をあげられる。
「うん、じゃあそろそろ行こうか」
「にゃーん!」
まるで俺を励ますかのような元気な鳴き声に俺も自然と笑みが浮かべば
ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ……
鈍くひずむような石のこすれる音。
思わず帰り道に向けていた体をクルリ180度回転して背中にあるはずの扉を探す。
「扉、ないんですけど……」
いつかのデジャブ。
下る階段をウキウキと揺れる真っ白のしっぽが目に飛び込んで目元が引きつる。
「雪しゃん……」
声を掛ければにゃーんと澄んだ声が狭い階段の中で響き渡る。
そしてきらりと光る瞳は
「さっきまで落ち込んでいたくせにようやくヤル気になったな。
では参ろうか!」
このダンジョン一の戦闘民族の雪さんはそれは軽やかな足取りで行くぞと階段を駆け下りていくのを、俺は手を伸ばしながら
「雪さん!待って!
そこは行っちゃいけない場所だって!」
俺の悲鳴なんてガン無視しして突き進むからついつい足を運んでしまい、気が付けば見覚えのある円形の闘技場のような見覚えのありすぎる厳格な石造りの部屋に閉じ込められていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます