スキルの上手な使い方を学びたい
さて反省会でもしようか。
一応ここダンジョン内だけどお空はあるとはいえこの大火災は大丈夫なのだろうか。
いやいや、いくら何でも延焼しすぎだろうと今も草を燃やしながら広がっていく想像以上の大惨事にチャッカマン程度の炎からよくぞこんなに育ったものだと階層の出入り口の周囲360度を炎で赤くただれた焼け野原を作りだしてしまった景色を見渡して
「自然破壊?いえいえ、これはただの焼き畑農業ですよ」
あまりの被害の大きさにガクブルしながら自分でやってしまったとはいえかなりひどい光景になってしまったので器の小さな俺は自分の行動を正当化してみた。
ダンジョンだから明日には元通りだよと思う事でスルーしたけど結果は明日になったら確認しよう。うん。
一応こっそりとステータスを確認すればちゃんとレベルも上がっており称号にもnewマークがついていた。
殺戮王+だってさ……
虫を倒してこの称号って害虫駆除業者の皆さまはどうなるんだよ!
相変わらず+がついてるけど害虫駆除して殺戮王ってひどくね?なんてメンタル的に落ち込んでしまうが蝗の卵が植え付けられているだろう草や表層の土を焼き付けた結果を確認したいと言うように現実逃避をしながらも階段に避難していた雪に向かって俺は自分の肩を叩けば雪は意味を理解できなくてただ俺を見上げていたが
「雪の肉球が火傷したら大変だからな。
焼野原を抜けるまでは肩に掴まってろよ」
言えばうちの雪さんは天才だからすぐにひょいと俺の肩に乗り上げてくれた。
うちの雪さんやっぱ天才~!なんて普段チュールタイム以外お触りもさせてくれないのでついデレデレしながらも視線を向ければキモいから見るなとパンチを頂いてしまうもそれを気合として
「じゃあ14階目指していこうか!」
ふんと鼻を鳴らして早く行けと言われてしまった。
雪さんの合図に焼野原を走り抜けば俺が焼き付けた草原を抜ける頃には当たり前だが靴の底のゴムが熱に負けて俺は裸足で駆け抜けるしかなかった状態だった。
くっ、レベル上げていたおかげで火傷もかすり傷さえないけどなんと情けない姿。買ったばかりのお気に入りの靴だったのになんて涙を呑みながら水遊びする時用に準備しておいたぼろぼろの靴に履き替えることになった。
モクモクと黒煙を上げる草原を背に地中に含まれる水分が多くなる森林地帯に近づけば自然と延焼は抑えられてそれ以上広がる事はなく、罪悪感しかない俺はほっとしつつも森林地帯を雪と並走して走る事にした。
草原地帯は野焼きおかげでクズをはじめとした魔物達と遭遇する事はなかった。
なんという平和だろうか。
背後は全く平和ではないが……
それでも人を見たら襲い掛かると言う本能しかない魔物達の襲撃がないのは本当に楽だなと思いながらどこかキンとした緊張に包まれる森林を歩く。
遠くから見られている、そんな気配があるものの何も近くには寄り付かないので俺達も見ない振りをする。
殺戮王なんて称号を貰ったけど無駄に殺し合いをするつもりもないし、俺達は14階まで行く予定だからこんな所で遊んでいるつもりはない。
遊ぶなら帰り道だなと温泉を思い出しながら無視をして通り過ぎ、一本の巨木の洞が出入り口の12階の階段を下りた。
12階はこの森林から続く形だからか全体が森林のフィールドになっているのだが、今度は湖が多い。
なぜかと問えば聞いて驚き見て吃驚。
12階は空から滝が落ちてくる世界だった。
エンジェルフォールもびっくりな落差と水量を誇る、まるで水柱が空を支えている、そんな錯覚に陥るそんな世界。
これぞファンタジーだ。
そのおかげで湖があり、湖から水が溢れて川ができ、他の滝からたまる湖と連結して繋がっていくと言う風光明媚な景色。是非とも湖の湖畔でキャンプして過ごしたくなるような美しい世界だった。
とは言えここはダンジョンなので遭遇する動物皆魔物。水から這いあがってくる魔物が多いので水のないちょっとした山岳地帯を抜ける事になる。
さらに今回は湖には絶対ヤバい奴がいるんだぜーと水を嫌う雪さんがいるので近寄りもしないで13階へと向かう事になった。
うん。ここの水の生き物魚の形をしていても足をはやした両生類ばかりだからね。オタマジャクシとカエルの中間期のお魚がいっぱいなんだよ……
あげくに平気で地上に上がって群れで襲い掛かってくるから本当に勘弁してほしいくらいトラウマになるよ。
だけどその前に途中魚を一匹、二匹捕まえては収納していく。
11階の魚と違って12階の魚って美味いんだよ。
塩焼き、ムニエル、鍋、フライ、どれをとってもおいしいし取りすぎて干物にしたものもまた格別。
庭先で干していたらカラスが大量に集まって持って行かれたくらいの野生を翻弄するお味。
沢田がスモークを作ってくれた時は千賀さんおっさん達はお酒が止まらないと言わんばかりに酒宴を繰り広げて翌日二日酔いの姿を披露してくれた。ざまあみろだ!
そういや鮭みたいな魔物美味かったなー。脂がのってて皮も塩を振ってパリッと焼けばそれだけでお茶漬けにしたくなる旨味。
だけど美味い奴ほど捕獲するのが難しい。
空から注ぐ滝を見上げながら霧のようにうに降り注ぐ水しぶきを浴びる。水の生臭さより緑の濃さの方が強いこの12階は究極の癒しの空間。
そう、鮭に似た魔物は空から落ちる滝つぼに生息する捕獲難易度の高い魔物だった。
今だってあいつらの生息地域だと言うのに魚影すら見かけなく、そうなると意地になってしまう所を雪に引っかかれて諦めたけど、雪さんの爪あざーっす!
少しだけ思い出しただけで涎が垂れてしまうくらい後ろ髪をひかれながらもありえない事を思いついてしまう。
いや、絶対だめだろう。
だけど好奇心が勝るし食への欲求もわく。
これならあいつら取り放題だろ?と……
「なあ雪さん、ちょっと実験してみていい?」
言えば
「何を?」
という視線を俺に向けてくれた。
俺は近くの決して小さな湖とは言えない場所の淵に立ち
「どこまで俺の無限異空間収納が有効か見てみたいんだ」
なんて言いながら割と軽い気持ちで
「湖の水を収納!」
水面に手をついて言った。
言ってしまった。
手のひらが少し光り、それは他の物を収納する時と同じ現象。
だけど今回は対象物が大雑把すぎたのが悪かった……
魔法とは理不尽だ。
11階でそれは見てきたばかりで体験したばかり。
ほんのちょっとのイメージが大惨事を起こしたように……
気が付けば目の前の湖から水がなくなっていた。
どこかへ流れていく川もあっただろうそれさえも見つからない……
それどころか湖の水を収納なんて範囲が大雑把すぎて水底で驚いている魔物にお騒がせしてすみませんと全力で心の中で謝り倒のは驚き過ぎて声が出なかったから。これはもうかいぼりをしてお詫びするしかないな、なんて現実逃避をしながら
またしでかしたか?
それでも関係なく囂々と空から降り注ぐ滝の水音だけが現実を教えてくれる。
たしかすぐ近くあったと記憶していた小さな湖を急いで見に行けばそこも水がなくなっていて……
「湖同士が繋がっていてつながる湖の水まで収納するなんて誰も考えんだろっっっ?!」
一体この被害はどこまで広がっていると力いっぱい声に出して騒いでみてもこの異常事態に危険を察したように魔物の姿はどこにも見当たらなかった。
いや、いた。
水がなくなっても自分の足で歩く魔物が俺に向かってくるトラウマが見えるけど、水中と陸上ではそのスピードは陸上の亀のごときごゆっくりな歩みなので今となればそこまでトラウマはない。
水を奪われて決死の覚悟と言うように団子になってまで俺に向かってくる皆さんなんかごめんなさい。
そんな皆さん相手に目の前で雪さんが生き生きと一人乱獲祭をしているけどとりあえず俺も沢田のお土産に鮭みたいな魔物を何匹か捕まえて現実逃避と言うように戦闘中の雪を抱きしめ水をお返ししてから二度にわたる環境破壊という大罪から目を背けて13階へと逃げ去るのだった。
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