どうやら禁断の言葉を言ってしまったようです

 農業に従事(?)している岳による蝗の恐ろしさからの仮定の話しは一気に信ぴょう性を増し、それ以来千賀さん達はお偉いさんたちとの会議だったり三輪さんは橘さんを連れて秋葉に出張だったりと大忙しの日々になった。

 いや、千賀さんと林さん二人だけの監視ってどんなブラックだよと思うも

「たかが一日12時間労働じゃないですか。一日8時間労働に4時間の残業。月20日とすれば80時間の残業何てそこらの企業でも普通じゃないですか」

 アハハと笑う林さんにそれは橘さんと三輪さんがいての前提だろうと思うも

「脱ニートはしましたが冒険者って言う自由業ですみません」

「いやいや、ボーナスもないし年金も国民年金しかないけど時間だけは自分で決めれるからいいじゃないか」

「はい。ボーナスも安定した収入もないけどクズの角で生涯年収はすでに確保したのでiDeCoとかNISAでも始めて少しでも老後の足しにしようと思っております」

「……ぐすっ」

 意味不明のマウント合戦は分けが判らないうちに俺が勝ったらしい。

「あー、相沢が林さん泣かしたー」

「いけないんだー。おっさんを泣かしちゃいけないんだー」

「俺はまだ三十代だ!おっさんじゃない!」

 怒る林さんにケラケラと笑う岳。

なんだかんだ言って仲良しだなーと沢田と笑う。

 着実にクズの角で稼いでいる余裕からだろうが俺達はありがたいことに平均生涯年収を大幅に上回る貯金を得ることが出来た。

 もちろん協力体制の自衛隊の所にも納品している。

 ダンジョンの魔物はこの世界の生態系とは関係なくダンジョンから排出される上に生命体が独自の繁殖により増えていくと言う、全滅と言う終わりのない無限生産力に俺達は翻弄されながらもありがたく恩恵を頂いている。

まさかダンジョンもこんな使い方をされるとは思ってなかっただろうけど


「相沢、俺今日家に戻るわ。

 なんか知り合いの人の葬式に行くとかで留守にするから兄貴と留守番してくれって」

「ほーい。了解。帰りにビールとかカップラーメンとか頼むわ」

「ちょっと相沢―。私が居ながらカップラーメンはないんじゃない?」

 なんてオコな沢田に

「たまには添加物しかないものが食べたいんだよ」

「まあ、解らないでもないけどね。私どん兵衛のきつねでお願い!」

「俺はスーパーカップで。味は何でもいいぞ」

「確かにカップラーメンはたまに無性に食べたくなるな。

 俺も頼んでいいだろうか、普通にカップヌードルで。千賀さんの分も頼む」

 なんて監視当番の林さんが言えば

「うちの品ぞろえの悪さに驚けよー。

 あったら持ってくるから何があるか楽しみにしとけー」

 なんてけらけら笑いながら家を出て玄関先に止めてある車に乗って山を下りて行った。

 その音を耳にしながら

「そう言えば君はあまり家に帰らないようだがご両親は心配なさらないのか?」

 二十代前半の女性が男友達の家に居座り続ける……そんな当たり前の心配をする林さんに沢田は苦笑いしながら

「私ー?私ちょっと訳ありだから家に帰れないの」

 なんて蠱惑的な笑みを浮かべて詳しくは秘密という壮大な失恋を乗り越えて心のうちに闇を抱えながらもこうやって笑える横で淡々と毒を吐きながらダンジョンの壁にチャッカマンの炎を当て続ける姿が脳裏を横切り素直に俺は笑えない。

「だから今日も相沢の家でお料理の研究をするの!」

「沢田さんのお料理は本当に絶品ですからね!」

「ふっふっふー!これでもちゃんと調理師免許取って東京のレストランで腕を振るってきたんだから今晩のご飯も楽しみにしていてね!」

 なんて自衛隊の人は自衛隊の人達で料理して食べる食卓は一応ちゃんとしているものの料理人の料理にはかなわないと言うように追加される料理に涙を流しながら食べる日々。

 一応希少な肉を使っているから当然だよねといくら食べなれた肉でもやっぱり新しい肉との出会いは心が躍る。

 そうなんだよ。

 ダンジョン産の肉ってどれもが美味いんだよ。

 寧ろ最初のG だけが食べる所がないって言うか、俺も騙されて食べさせられたけど昆虫系のモンスターも普通に美味かったんだよ(涙)

 最近じゃ皆さんレベルを上げてくれたのでバルサンが付着した肉なんて見向きもしなくなったけどそんなにバルサン嫌わなくてもいいじゃんと不貞腐れる俺がいて……


「にゃーん」


 雪さんが今日はダンジョンに行かないのか?なんてご機嫌を伺いに来た。

 どうせ荷物持ち位の価値しか雪さんからしたらないのだろうが


「そうだった。

 相沢、来週にはまた土木班を受け入れることになる。

 ここの道路の補修と拡張、ガードレールの設置が決まったぞ」

「稼いでくるのでよろしくお願いします!」

 念願の安心安定の道路の確保が約束された。

 一時期クズの気配が感じ取られなくなるくらい狩りつくしたかいがあったものだとニヤニヤしながら

「あと離れの方に簡易水洗トイレの申請をしておいた。

 沢田君の希望を取って男子と女子に分かれて工事を進める予定だ」

「くう!この母屋の一室潰すから家の中にトイレが欲しい!」

「気持ちはわからんでもないが、ダンジョンがある以上普通の業者を家の中に入れる分けはいけないからな」

「ダンジョンを早く潰してわざわざ傘をさして雨の中トイレに行かないといけない環境を撲滅したい」

 なんて本音に千賀さんも林さんも笑ってくれれば


「にゃー!」

「いてっ!」


 なんて前足の爪が俺の足を軽くひっかく。

「ああ、雪さん。ダンジョン行きたいんだよな」

 なんてマロマントの首輪をつければ


「すんません。俺もダンジョンに一緒に潜ってきます」

「行ってくると良いよ。ここのところずっと動画とクズの角の配送であまり潜ってなかっただろ?」

「そうだな。たまには体を思いっきり動かしてこい」

 そんな千賀さんと林さんの留守は任されたと言う発言に

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」

 そう言ってペットボトルを1ケース、雪のご飯に俺のご飯をダンジョンの中に運んでからの

「収納!」

 なんて無限異空間収納の中に格納していく。

「それ、ほんと便利ですよね」

「今度自衛隊のジープでも持って行けるか試したいですね」

「多分車で走るよりも自力で走る方が早いと思いますよ?」

「かもしれないがそれが夢なんだよ」

「相沢は判ってないな」

 なんて力説する千賀さんと林さんに


「どんな夢なんだよw」


 なんてまだまだロマン何て理解できない俺はとりあえず毒霧魔法を放って


「では、留守をお願いします」

「沢田さんが怒らないように夕飯迄には帰ってきてくださいね」


 そんなお見送り。

 新しい土木様達が来たらまたゆっくりダンジョンに潜ることは出来ないのだろう。

 だったらそれまで


「少しぐらい暴れてもいいかな?」


 なんてストレス発散のつもりで言った言葉に俺が気付かない程度に雪がこの言葉に反応してるなんて知るわけもなかった。




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