お守りの力を信じたいと思いますが
土木様達が橘さん達の宿泊用の建物をあっという間に作って帰る事になった。
「沢田さん、あなたのお料理は一生忘れません」
「沢田さん、美味しいごはんをいつもありがとうございました!」
「沢田さん、よかったら結婚してください!」
「沢田さん、部下が失礼な事を言って申し訳ありません」
なぜか家主の俺ではなく皆さんの胃袋を掴んだ沢田にみんな感謝すると言う納得のいかない状況になっていた。挙句にさり気なくプロポーズする人もいたけどそこは水井さんが殴って黙らせてくれた。
さすがに沢田もそれはないわーという顔をしながらでも去り行く皆さんに手を振ってお見送りをする程度には営業スマイルと言うスキルを持ち合わせていた。
先日まで賑やかだったうちもあっという間に静かになってしまったが、土木様達が暮らしていたプレハブハウスはそのままなので
「三輪さん、この建物はどうなる予定なのですか?」
まさか作るだけ作って放置とか?それはちょっとやめてよーなんて思うも、そこは千賀さんが答えてくれた。
「先ほど連絡が来たのだが……」
なんてちょっと歯切れの悪い出だしに今度は何がやってくると思えば
「また一週間ほど土木課の奴らを預かってほしい」
「さっきの水井さん達は?」
「水井達はまた別の場所に向かった。
予定はしっかり組まれているからな。
相沢君なら最近この国でダンジョンが沸いている事は知っているだろう」
「そういやどっかのお寺の門がそのままダンジョンになったんだっけ。うちのトイレとは大違いですよね。
トイレはトイレでもせめてトイレのドアを開けたらダンジョンだったら俺もここまで文句言わないのに……」
そう言ってちょうど簡易水洗トイレの便器があった場所なんだと心の底から泣きたくなったのは神社の門と言う神秘的な立地との格差と言うのは言うまでもない。
それを嫌でも理解できる皆さんは
「まあ、あれだけ有名になって人が集まった場所だから強制的にオープンになってしまい、神社の方々にはご迷惑をかけてるけどな」
ただでさえダンジョンが発生したら観光地になってしまうのだが先日の一件もある。
神社はいろいろな許可とか手続きとかが必要らしいがその門の部分の土地を国に売り払う決断をして本殿を守る事を優先したとか。
確かにあんな風に立てこもりとか、たむろされたりしたら切り捨ててでも回避したい懸案だよなとまだマロが出て来る事を想定はしてないようだ。
どうやらそんな新ダンジョンの拠点づくりに水井さん達は駆り出される事になったらしい。大変だなと思っていれば
「神社で思い出したけど三輪さん。
前に渡したお守りってどうなりました?」
沢田がすっかり忘れてたと言うように言えば今となれば紐を通しただけの小さな小物入れの袋をポケットから取り出し
「中に入っていた布かな?
あの後確認したら黒い煤みたいになってしまって砕けてしまった」
今は何もなくなってしまった事を伝えれば
「お前何やったの?」
なんて岳が小さな袋を見て沢田に聞けば
「えーと、マロのお宝で出てくるマントあるでしょ?
あれの隅っこを切り取ってちょうどあった指輪を入れる袋に入れただけのお守りなの。
ほら、マロマントって防御力が150アップするし火魔法Lv5までの耐性があるでしょ?
防御力だけでもいいからちょっとでもステータスアップ出来ればって思ったのもあったけど、そうか。一回でダメになっちゃったか……」
「いや、あの小さい布でマロの火炎放射を防御できるなんて、大やけどを負った方もいる中すごく助けられた。
やはりと思ったけど、ダンジョンのモンスターにはダンジョンのモンスターで対応が出来るのか」
「そうなると完全版のマロマントの能力を試したいですね」
なんて林さんまでそんな物騒な事を言い出してきたけど
「万が一効果が期待できるほどじゃなかった時のダメージがデカすぎるので俺はお断りです」
そんな俺のチキン発言に千賀さんは笑い
「それを実証させるために我々を呼んだのだろう?
大丈夫だ。近く検証会が開かれる」
ぞっとするような言葉を聞いたような気がした。
つまりそれはあのマントを着て誰かがマロに突撃するという事だろう。
失敗した時はどうするんだ?またマロが地上に出てくるのかと思えば
「自衛隊って結構あくどいですね」
「なに、その為に水井たちが呼び戻された。
生まれたてのダンジョンと言うのは発生と同時に大量にモンスターを産み落として防衛する厄介な性質を持っているからな。
とりあえずちまちま倒す今までのやり方が良いのか一気にマロまで行って倒すのが良いかそんな作戦だ」
「ちょっとまってください!」
俺は慌ててストップをかける。
「なんか今いろいろ聞き捨てならない言葉を聞いた気がするんですけど……」
「千賀さん、極秘情報さらりと言わないでください」
なんて林さんもストップをかけるもその信ぴょう性が増しただけの会話に岳だけが何を言ってるのと言う顔で俺達を眺めていた。
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