ようこそフロンティアに

 化け物を見る目、そんな目を向けられる意味が全く分からなかった。

 魔狼の壁、それさえクリアできれば俺程度のレベル何てすぐに誰でも追いつくことが出来る。実際俺が撒きまくった毒霧で得たアドバンテージはマロの次の階層に行けばその差は埋まる事になった。

 まあ、俺も毒霧の広範囲の攻撃のおかげですぐ切り離す事になったのだが、あいつらの巣窟でもあるダンジョン何て誰が喜んで入りたいと思うもののマロを超えた先は新天地のフィールドダンジョン。

 害虫退治の得意なバルサンのおかげで必要以上に効果を発揮してあっという間に引き離すと言ういらん事をして下さった。


 ダンジョンに巣食う魔物に対しての推奨レベルはフロアの階層が推奨レベルとされている。

 ちなみにレベルもフロアの二倍程度にしか伸びない。

 俺みたいな広範囲殲滅のできる魔法があれば超える事もできるが、通常の攻撃しかできなかったり魔法が使えても広範囲に効果を持たない魔法だと通常攻撃と変わりのない伸び方でしかない事を理解すればやっぱり魔物を倒した数がレベルアップに直結するごくありきたりな成長方法にそれだけ俺が倒しまくっている事を証明しただけにうんざりする。

 

 そんなわけで今俺のレベルは30を優に超えている。

 とある国の人達にも何人かいる事はしっている。

 それでもその貴重な人材を使ってマロを攻撃する事をしない。

 それだけ時間をかけた証拠だろう。

 本当に残念だ。

 土木課の皆さまは皆さんレベル15ほどだったのに、マロを超えて行った先のフロアであっという間にレベル20を超えてしまったのだ。


 千賀さんも嫉妬するわけだと言う理由は納得できる。


 そんな嫉妬する力を持つ俺は千賀さんと林さんを掴んだままダンジョンを駆け抜けてあっという間に10階の扉を開けていた。

 その頃には千賀さんも林さんもすっかり車酔いではないが気持ち悪そうな顔でダウン寸前になっている。

 だけどさすがに10階のマロと対面して発狂しそうな声を上げて見せたものの、今はもう俺達はマロが火炎を放出する前に倒すと言うただの作業にしてしまうようになっていた。

 それでもマロを倒した後出てくるお宝はしっかり回収するのだが……


 マロの恐怖に絶叫しながらもあっさりと殺されてしまったマロにその絶叫は困惑の絶叫に変わるのを器用なおっさんだと俺は思う程度にした。

 そんなおっさんのどうでもいい絶叫を聞きながらお宝とマロを回収。とりあえず今回ゲットしたマントは林さんよりメンタルヤバめの千賀さんにしっかりと装備させて問答無用に二人の手を引いてずるずると引っ張りながら11階へと向かう。

 地下に向かうリバースバベルだと言うのに地下に潜った方が明るく開放的なのはどうなんだと誰かダンジョンについて早く解明してくれよと他人任せに願いながらも草原の香りと乾燥した風。更に


「暑いな……」


 空を見上げれば雲も浮かばないギラギラとした夏の空。

 どこかひんやりとした一定の温度の10階までのダンジョンからいきなり夏がやって来たのだ。

 今現在地上が夏だから耐えられるけどキツイなと思いながらもこのフロアに来たらまず一発毒霧を撒いておく。

 これで当分蚊とかなんかよくわからん虫や魔物も近寄ってこないから屋外でも使えて便利だよなと毒霧の汎用性をありがたく思う。

 実物はここまで効果ないのにねといつの間にか毒霧がレベル5になっていたのはただ乱発していただけだからだと思いたい。

 俺の知らない所で倒された魔物がなにかは判定したとか思いたくもない。

 俺の称号がダンジョン発見者からいつの間にか殲滅者になっていた事は今も全力で見ないようにしている。

 やだよ殲滅者だなんてどう見ても殺しまくってるヤバい奴じゃん。

 まあ、どうせバルサンのせいだろうけど本当にスーパーとかに売っていていいものだろうかと考えてしまうもこのフィールドダンジョンに来て適当にほったらかしているおっさん二人は相変わらずぼんやりと目の前の景色を理解しようと眺めていた。

 俺はこれ以上先に行くつもりはないから少し前にここを拠点にしていた土木課の皆さんが踏みならして開かれた場所に無限異空間収納から取り出したパラソルを開き、テーブルとキャンピングチェアを人数分用意してパラソルの日陰の中でほっとしながら冷たいお茶でのどを潤していた。

 手ぶらでキャンプにいける無限異空間収納さいこー。

 とりあえず小腹が空いたから沢田が作ってくれたスープと岳が持ってきた期限切れのパンをテーブルに並べて軽食を取る。

 この無限異空間収納ってやつは時間経過しない収納された時の状態を維持するタイプのようで絶対このダンジョン作った奴人間の喜びそうなことも網羅してるなと感心をする。

 恩恵は素直に受け取りながら


「千賀さん達も水分補給しましょうか」


 声を掛ければぎこちなく振り向いた顔は力なくこくんとうなずき、ふらふらとした足取りでテーブルについて氷の浮かぶただの水を震える手で少しこぼしながらも一気に飲み干していた。


「君たちは、ここ、本当に……」


 言葉を忘れたように思いつく言葉を並べた千賀さんに


「ようこそ11階に」







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