考える前に飛べ!なんてダメな事を突っ込む人募集します

 ダンジョンが我が家のトイレで発生してもうすぐ二週間が経とうとする。

 その間弁護士さんを挟んで自衛隊のダンジョン対策課へと再度連絡を入れてもらったのだけど未だ返答はなし。更にもう一度自分でも連絡入れてみたけど折り返しの連絡をお待ちくださいで待たされている今ここ。

 待たされる理由は想像できる。

 我が家にダンジョンが発生する直前に一つのダンジョンの攻略がものの見事なくらいに失敗をしたのだ。

 かろうじてモンスターたちはダンジョンから外に出て来る事はなかったが、総勢30名のダンジョン対策課と言う名の自衛隊の猛者を投入しての全滅と言う大失敗をやらかしてくれたのだ。追加投入した冒険者の方達という数の暴力で何とか収まりを付けたが被害は悲惨の一言だった。

 次こそは……

 各国が見守る中でのこのミッションの失敗に各国はダンジョンの撲滅を諦めスタンピードが起こらないようにダンジョン内で対応すればいい、そんな風潮にもなって来た。


 この時代に世界中が馴染んできたのだ。


 そんな空気が漂い、未だダンジョンが増殖するこの世界に世界は対応策ではなく共存へとシフト転換を始めていた。

 なんせ人類全戦闘員という意識がすでに出来ている。

 今さらどうこう言わず、ダンジョンをアスレチック化してゲーム感覚で対応してもらえばわざわざお国が大量の装備を用意して出向かなくても良い、そんな考えは単なる税金問題以外何物でもない。

 そして物価の高騰、税金の増加などなど市民の皆様もそこは一番身に染みている大問題なのでダンジョンを遊び場としない皆様にはこれ以上家庭の財布が崩壊しなければ大歓迎と言う所。

 ただし一度スタンピードがあふれだせばダンジョン外では無力な俺達なので都市崩壊はほぼ確定の為そこは自力で凌ぐか脱出するかの二択しかない生存をかけたデットオアアライブだ。

 まさか人口過多の場所で発生する確率が高いダンジョンが村の人口より猪の多いこの村で発生するとは思わなかったけど、とりあえず村の平均寿命が70歳を突破しているこの村で20代の若者が頑張る以外どうしようもない。

 スタンピードでモンスターが地上にあふれたとき地上の人は無力にも等しい存在なのだ。

 ダンジョンに平均70歳以上のお年寄りを投下するのは人でなしというのなら何と言えばいいのかという問題。

 まあ、見ず知らずの人を家に上げてトイレに案内するのも何だから俺は毎日頑張るけどさ、というのが今の現状。


「いい加減マロも食べ飽きたんだけど」

「だけどマロならいつでも食べれるじゃん」

「さすがに三食マロはきついです。あっさりお魚さんの塩焼きが食べたいです」

「マロは無料だけどお魚さんはお金がかかるの。食べるならマロ一択でしょ?!」

 

 そんな感じで朝からマロ丼を頂いております。

「さすがに胃が重いから早急に現金収入を考えねば……」

「そうね。ポンポン収穫できるのにそれを販売できない問題を何とかしないとねー」

「沢田おかわり!」

「非公認ダンジョンからの横流しって法律に引っかかるんだっけ?」

「発見次第報告の義務からの認定を待たなくちゃいけないからね。立派な違法よ」

「なのに報告から二週間。いまだに連絡来ないってさすがにヤバいでしょ」

「ちゃんと討伐をしないと二週間でスタンピード発生するからね」

「って言うかこの家に人が住んで居てよかったよ。絶対誰も気づかない場所だし」

「それ所かスタンピードが発生しても誰も気づきそうもないね」

 そうやってダンジョンの世界の住人にこの世界はむしばまれていくのだろうと恐怖を覚えながらもマロ骨スープを頂く。しっかりとコクのあるスープに千切りの生姜が入っていてあっさりと飲める危険な代物。〆で雑炊を作るのが俺達のお約束になっている。

 マロ肉は飽きてもこれは飽きる事のない中毒に俺は陥っている。


「じゃあさ、来てくれないならこさせればいいじゃん。

 10階の動画を撮ってネットにあげようぜ」


 岳がまともな提案したけど非常に危険な賭けを口にした。

 だけど俺達は何度も10階でマロを討伐し、そこから先も知っているのだ。

 それがきっと感覚を麻痺させていたのだろう。

 世界が未だ攻略できない10階をひょっとしたら誰かとっくに攻略してて秘匿されているだけではないのかという事を考えなかったわけではない。

 魔法が使えるようになった俺達はもう何秒で討伐できるかという技を競い合うくらいに麻痺をしていると当然……


「じゃあ、一緒にマロ肉とかでお料理動画もやっちゃおうよ」

「「いいねー!」」


 うぇーいとハイタッチ。

 

 誰がどう考えてもこの後自衛隊の人達と弁護士の小田の爺さんにしこたま叱られる未来が確定されたとしても目先のリフォーム代の為を思えばほかの手段を考えるなんて思いもつかなかった。


「よし、じゃあ行きますか!」


 俺の無限異空間収納に灯油を入れるタンクにお水を詰めたものをいくつも用意する。沢田のお料理セットも収納し、岳の戦闘アイテムも入れる。

 そして今回忘れてはいけないモノ。


「カメラ良し!スマホ良し!充電器良し!三脚良し!」


 俺達は待てど暮らせどやってこない自衛隊にしびれを切らした結果の自衛隊ホイホイ動画配信。

 とは言えすでにさんざん配信されて今さらなにも珍しくもないダンジョン配信。どこまで配信を見てもらえるだろうかとそこまで期待せずにこの後起きる結果を自衛隊の人に怒られる以外何も考えずに始めるのだった。



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