発生基準に異議申し立て!
枝切りチェンソーを片手に小山のようなウサッキーを捌いて行く。
まだ脂肪の分厚いマロの方が捌きやすいなと大型の魔物の外道な皮剥ぎの簡単さとウサッキーのめんどくささに適当な扱いをしてしまう。
これが都会だったら動物虐待とか言われそうで田舎のおおらかさにはもう都会とは別の世界だなと思うようにしている。
合計4羽になるウサッキーを解体した後の惨状は酷い物だ。
幾らダンジョン内で外には血しぶきが飛び散ってないとは言え壁も天井も血まみれだ。
ほっとけば綺麗になるとは言っても精神的によろしくない光景。
誰かが見れば通報されるようなこの光景に血まみれの俺はウサッキーを持って納屋へと向かう。
捌いたウサッキーを沢田は無言で受け取って枝分けして岳が冷凍庫へと片づけて行く謎の連係プレーを横目に俺は高圧洗浄機を取り出してきた。
「相沢は綺麗好きねー」
放っておけばいいじゃんと言う沢田に
「あの匂いが家の中にこびりつくのは嫌なんだよ」
消せない血の匂いの事を指摘して、今度バルサンはもう買う必要がない代わりに芳香剤でも買ってこようかと思う。
シャツにも血しぶきが張り付いているし何だかなーと思いながらも高圧洗浄機をセットしてダンジョンの中を掃除する。
圧縮された水が血のりを残さず消し去って行く。
電源は今は無きトイレの洗浄機付き暖か便座の物で十分
水場も近いし意外といい場所じゃんと思いながらもダンジョンの入り口の階段を綺麗にしていく。
ウサッキーの頭が洗浄機の水圧によってゴロゴロと奥へと転がって行く光景をなるべく見ないようにして、そんな物がないと言う様にダンジョンの壁や天井、階段を汚れ一つ無く掃除していく。
やがて一階にまでたどり着けばマロの強烈な臭いも奥へと押し込めるように水圧で遠くへと押し込めて行けばとりあえず階段の所から魔物の残骸が見えなくなった所で終了する事にした。
いい仕事したな。ビールが欲しいと階段を上りながらふと気づいて俺は自分のステータス画面を起動する。
相沢 遥 (22才) 性別:男
称号:ダンジョン発見者+
レベル:23
体力:235
魔力:488
攻撃力:237
防御力:245
俊敏性:261
スキル:無限異空間収納
ステータス接続権利
スキルダンジョン外使用許可
毒魔法+
水魔法 new
沈痛な面持ちでステータス画面を見ていた。
何時の間にか発生した水魔法……
水魔法に関する事なんざ今の高圧洗浄機ぐらいしか思い出せない。
と言うかだ……
俺は仏壇からチャッカマンを持ち出してステータス画面を見ながら何度か火を点ける。
点けたり消したり点けたり消したり……
完全に危ない人だが検証には欠かせない為ひたすら繰り返す。
だけど何の変化もなくってふと思い出して点けた火を壁に向かって押し付けながら点けたり消したりを繰り返す事約数分……
相沢 遥 (22才) 性別:男
称号:ダンジョン発見者+
レベル:23
体力:235
魔力:488
攻撃力:237
防御力:245
俊敏性:261
スキル:無限異空間収納
ステータス接続権利
スキルダンジョン外使用許可
毒魔法+
水魔法 new
火魔法 new
項垂れた……
「チョロすぎるだろこのダンジョンって……」
多分ダンジョンは理解不能な事が発生すれば何度か繰り返されることによってそれが確立されると言う定義なのだろう。
ダンジョンの奥に向かって手を伸ばし、人差し指をピシッとダンジョンの階段の奥へと向けて
「ウォーター!」
ピシュー!!!
高圧洗浄機並みの水圧で指先から水が発射されていた。
冷や汗と共に今度は
「ファイアー!」
叫べばチャッカマンのようなちょろちょろっとした火が指先で揺らめいていた……
……何てこった。
生きる高圧洗浄機とチャッカマンになってしまった……
生きるバルサンって言うだけでも十分不名誉だと言うのに、せめてチャッカマンが高圧洗浄機並みの火炎放射器とは言わないけどバーナー位の勢いがあればいいのに……
項垂れながら指先に灯るチャッカマンを眺めながら溜息を吐く。
消しては付けて、消しては付けて。
繰り返せばなんとなく火が大きくなっているような気がする。
これは毒霧と同じでレベルアップするのかとステータス画面を見ながらチャッカマンを繰り返せば
火魔法+ファイア
「って言うか、ついに+が追加されてたよ!
って言うか早いよ!」
ダンジョンよ。人間なめんな!なんて言葉があるけどこれじゃあなめるよりも呆れるよ!
確かにダンジョンは火気厳禁だし高圧洗浄機何て持ち込むバカなんて俺ぐらいだしって言うか、世のダンジョンを管理している人は一体今まで何していたんだよと思うも肝心のステータスを読み明かす事が出来なければ理解できないよなと考える事を放棄する。
名前と年齢と性別と称号とレベルしか表記されない内容トラップには項垂れるしかなくてもだ。
どっちにしても
「指先に灯るだけじゃ煙草に火を点けるしか役に立たないじゃん。煙草なんて吸わないのに」
そんなわけで指先に灯る火を壁に向かって投げつける。
ステータス画面を見ながら何度も何度も何度も何度も……
100回ぐらいはやっただろうか。
火魔法+new
newが発生したので+ボタンを押せば
火魔法+ファイア
ファイアボール new
何て言うかさ……
「想像通り過ぎて嬉しさのかけらもないのは何故だって言う前に100回はチョロすぎるだろう」
指先に火を灯してはダンジョンの壁にダメ出しと言わんばかりに八つ当たりするように火の玉を飛ばし続けるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます