うちの地下にあるダンジョンかなり広いけどどうなってるかなんて考えてはいけない
2階は毒霧の影響かあれから魔物と出会う事はなかった。
蜜を集める気満々だった沢田はしょぼんというように意気消沈として3階を探す岳の後ろに続いて歩く。
そして発見した3階への階段。
2階よりも魔物の数が多くなり複数で現れるようになるとネットでは言っていたが、3階に降り立った早々蟻の群れがお出迎えしてくれた。
おおう……
初めての蟻の群れの迫力に一歩足を引いてしまう中、岳がバットを片手にフルスイングで蟻の頭を飛ばしていく。
ぐちょ……とか、めきょ……とかいう音はなかったが、バッティングセンターじゃないんだからノックの練習みたいに蟻の頭を吹き飛ばすのはちょっとやめてほしい。
視覚的なダメージを負っている中、沢田も岳に混じってノックの練習。
二人には3階程度の魔物はすでに敵では無いようで、気持ちよく魔物を屠っていた。
無言の二人に俺的には全く持って気持ちよい光景ではないが、それでも10体ほどの群れは一瞬でさばき切ってしまった模様。
ちなみに俺は階段に身体を隠して覗くように二人の活躍を見ていただけ。
役立たずって言った奴……
ハイ。
それ正解です。
1階より下に入った事ないもん。
あいつ等の巣に喜んで飛び込んでいく神経判んないもん。
岳はともかく、頭のもげた蟻の腹を掻っ捌いて蜜を集めて小瓶に詰める沢田の顔が一番やばくって思わず視線を反らせてしまったが、とりあえず今日は5階を目標に降りると言う。
「って言うかさ、俺ダンジョンの事ネットでしか知らないけど、こんなふうに階段下りたらハイ魔物って言う感じで遭遇するものなのか?」
「普通のダンジョンなら人の方が多いから早々二桁の魔物に遭遇する事ってないわよ」
「大体3~5体ぐらいまとめてダンジョンが生み出しているから、いくつかの群れが合体したんだろうな」
「うえー、それってマジ危ないじゃん」
「ダンジョンが生まれて冒険者が居ないから生まれたい放題生まれるから、ちゃんと魔物間引いて行かないとどんどん増えるぞ~」
上田の脅しにあいつらがいつか階段を上って我が家に群れなしてやってくる事を想像してブルってしまえば
「バルサンで何とかなるうちはバルサン焚いとけ。
それよりももっと下に居る奴らが上に上がってくる事が無いようにしないとな」
「ただでさえ自然いっぱい虫いっぱいで懲り懲りしているのにこれ以上増やして溜まるか」
「そうそう。
その調子で駆除してくわよ」
「よし、毒霧」
「蟻蜜採取したいのにバルサン撒くな!!!」
ぺちーんと沢田に頭を叩かれながらも4階へと向かう。
うん。
バルサンほんと良く効くから魔物に遭遇しないよ。
蟻も黒い奴も通路でひくひく痙攣しながらぶっ倒れている所を岳と沢田は「これって経験値入るかな?」「とりあえずやっとけば少しは入るんじゃない?」なんて物騒な会話をしながら止めを刺していく。もちろん相沢もやりなさいと強制的に参加させられた。
あまりファンタジーな本は読んでこなかったし、最近の物だとこの間岳に借りたラノベぐらいしか知らないけど、ネットで大体流れは判っているとはいえだ。
「これ、ほんとに時間が経つと死んだ魔物って消えるのかよ……」
4階に来て圧倒的な数の魔物の死体をひょいひょいと避けながら岳に聞けば
「ネットでの検証通り2時間ほどでダンジョンに消化されるよ」
「そんで、もし私達がダンジョン内で死んで、消化されたら持ち物が宝箱になって還元されるの」
「いつ聞いても生き物の腹の中に居るみたいだな……」
4階から出現する蜘蛛の魔物も足を縮めてひっくり返っている。
死に方は地上の蜘蛛と似たような感じかと万が一を考えて俺もビビるのも飽きたのでわずかにまだ生きている魔物をバットで止めに参加している。
4階からはあいつらが出現しないからのびのびと歩く事が出来る。
「とりあえず5階までは初心者向けだからレベル上げるのにもくもくと倒していこうぜ」
「って言うか、私達のレベルとこの階層のレベルでレべリングって必要ある?」
沢田の突っ込みに岳はダンジョンの醍醐味じゃないかと笑うも瞬く間に5階に来てしまった。
ここまでの所要時間は2時間程度。
雨の日のイチゴチョコ大福の散歩にちょうどいいなと考えている間に5階に着いてしまった。
「相沢はバルサン禁止ね。
蜜を採るの手伝ってよ」
「うん。まあ、手伝うぐらいならいいけど」
5階に下りて今度はお出迎えのない通路をのんびりとあるきだした。
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