俺達の装備はバットとシャベルとお弁当も忘れずにね
そんなこんなで約束の9時よりも少し早い時間。
我が家同然の顔で岳と沢田は居間に上がって来たが、神妙な顔をしている沢田をみて岳へと視線を向けると
「今夜ダンジョンに潜るにあたり簡単にお前の事を話しておいた。
後は実際見てもらうしかないだろ」
なるほど。
確かにそうかもしれないけどとは思う。
簡単に見せて良い物だろうかと思うも俺が悩んでいる間にも沢田はステータス画面を見せてくれた。
緑色の枠と文字で書かれただけのステータス画面とは呼べないお粗末な代物。
ウン十年前のレトロゲームだってもっと細かな詳細画面があった。
こんな名前、年齢、性別、称号とレベルしか書いてないステータス画面ってどんなしょぼいハズレゲームなんだとダンジョンをこの世界に送り込んだ奴らを恨みたくもなったが別画面があるのなら仕方がないと言う物だろう。
ましてや『ダンジョン発見ボーナス』で詳細画面に接続しないと見る事が出来ないってどれだけケチなんだよと恨まずにはいられない。
一見なんて不親切な、と思ったこのシステムも数少ない特典の権利かと思うと納得せずにはいられない。
山ほどいる冒険者から数えるだけのダンジョンの発見者がこの項目を選ぶかどうかなんて、寧ろムリゲー?なんて思ってしまう。
経験値2倍とか、特典を三つ消費して経験値10倍なんぞもあった。
もっとも、このステータス画面の超人的なスペックはダンジョン内でしか効果はなく、ダンジョンから一歩先に出たこの世界ではただの人になるのだ。
あー、俺ひょっとしたらやばい特典貰ったかもなんて思うのも今更だが今夜このスキルを試そうと準備はしてある。
とりあえず、首都暮らしをしていて、首都ダンジョンにも修行先の料理店の人達と獲物を求めて潜った事の在る沢田のステータスを拝見。
「……何だこれ?」
沢田 花梨 (22才) 性別:女
称号:駆け出し冒険者
レベル:9
思わず呻いてしまった。
修行先のジビエ料理店のオーナー一行が組むパーティーに休日の度に連れられて2年でやっとレベル9と言う……
「2年でレベル9ってありえなくね?」
「俺も免許取ってからここで2~3回入った程度だけど、それでもレベル8だぜ?」
なぜ?と二人で沢田に説明プリーズと明後日の方を見ている彼女に話を聞けば
「首都ダンジョンってね、ものすごく冒険者が集まるんだ。
ダンジョン入るのにも2時間待ちとかだったり、中に入ってもそれなりに潜っても人が多いから魔物にもあまり会わないんだ」
なんつー効率が悪いと言うか、どこのテーマパークだと聞いてやりたいが
「ダンジョンに潜って魔物に会えたらラッキーだし、捕まえれればそれこそ万々歳よ。
パーティー登録しているとは言え、入場料も取られてるんだもの。毎回赤字なのが首都ダンジョンの冒険者の懐具合よ」
冒険者としての使命よりも、9階までのダンジョンの中は既に攻略は知れ渡り、テーマパーク化しているのが各国の頭痛の種だ。
10階クリアが未だに出来ないこの世界では美味しいお肉が出現する原始的ゲームだと思われても仕方がないだろう。
なんせこの世界の知的生命体は希少とか少数とか、そう言う言葉が大好きな人間が多いのだ。
「とりあえず詳細画面みよーぜ」
岳に言われて沢田の横に並んで手を伸ばして画面をタップ。
するとピコンと言うように矢印が浮かび上がり、無言で驚く沢田を無視して矢印をタップ。
スライドするように画面は変り、詳細画面が浮かび上がった。
沢田 花梨 (22才) 性別:女
称号:駆け出し冒険者
レベル:9
体力:94
魔力:――
攻撃力:89
防御力:80
俊敏性:85
スキル:――
あまりの低スペックさに俺達も沈黙。
俺達の沈黙にさすがの沢田も身体を小さくする始末。
そして俺達の詳細画面を開いた。
上田 岳
レベル:8
体力:89
魔力:―――
攻撃力:121
防御力:87
俊敏性:117
スキル:―――
岳は昨日、結局ダンジョンに入ってないので昨日の朝のままだったが、俺はレベルが上がっていたらしく少し数値が変動していた。
相沢 遥
レベル:17
体力:180
魔力:326
攻撃力:180
防御力:180
俊敏性:183
スキル:無限異空間収納
ステータス接続権利
スキルダンジョン外使用許可
毒魔法+
「あ、レベルが上がってた」
「バルサンっぱねえな」
「え、ちょっと、ナニコレ……」
目を点にしている沢田に岳が説明する。
「相沢は別にチートでもなくただひたすらダンジョンの中にバルサンを放り込んで魔力を獲得したんだ」
「バルサンって、たしかにバルサン効くけど魔物だよ?バルサンって効く物なの?」
呻いて頭を抱える沢田はこいつ世の中舐めてる。一階だけでレベル17まで上がるの?今までの努力と入場料はなんだったのと涙を流すだけ。
「まあ、考えても仕方がないからとりあえずダンジョン潜ろうぜ?」
「だよねー。靴取ってくるから先に階段の下で待ってて」
「おまえなー。あいつ等の巣に俺一人で行くかと思ってるのか?」
「まだ克服できてなかったの?」
「一生できるか!」
俺は階段の下に降りるまでならとスリッパを常備していたが、山登り用の登山靴をはいて武器を詰めたリュックを背負う。
無限異空間収納なんてスキルがあるが、何度か練習してみたもののさっと取り出しさっと使うと言うレベルにはまだなっていなかった。
だったらそのうち慣れるまでまだバットでいいんじゃないだろうかとあいつら対策の道具をリュックに詰める。
岳もバットとシャベルとか飲料とかを持っており、沢田に至ってはバットはもちろんハサミとか牛刀とか
「あ、みんなの弁当も用意したよ」
俺達まるでキャンプでもしに行くつもりでダンジョンを潜るようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます