清く正しく胃袋に忠実になる

 ウサッキーは雪によって引きずられて、討伐した魔物を引き取る買取所へと持っていけば結構なお値段で買い取ってもらえる一攫千金な魔物なのにこんなぼろぼろの哀れな姿では売る事も出来ない。


「どうするの?」

「とりあえず捌いて雪に食わせてやらんとな」

「そうね」


 未だ風呂で格闘する絶叫に岳と沢田は勝手知ったる他人の我が家の納屋に移動してビニールシートを敷いてナイフ、ハサミ、のこぎり、斧やハンマーと言った解体に必要な物を取り出して勝手に捌いて行く。

 未知の生物ゆえに生食は避けるようにと言われる中、捌いた物はどうするかと沢田は考えたが


「そういやダンジョンって死んだ魔物って数時間で処理されるって話、実験しない?」

「確か、魔物の処分代って結構するんだったよね?」

「あー、キロ幾らだったっけ?」

「知らないわよ」


 血抜きはすでに十分だろうからとハサミでチョキチョキと皮をはぐ切口を作る。

 皮をはいで頭を落し、臓腑をバケツに入れて肉を骨から外して行く。


「結構疲れたかも」

「ダンジョンの中だったらこんなのちょいちょいって頭落せるのに何でダンジョンの外に出たらあの能力使えなくなる……」


 思わず二人で顔を見てそれだとお互いを指さしてからのグーパンチ。


「今更だけど移動しよう!」

「あー、何で気が付かなかったんだろう」


 ビニールシートでウサッキーを包み、男を見せるように岳が運ぶ事にした。

 沢田はウサッキーの頭や臓腑の入ったバケツを抱えて着いて来る。

 お互いエプロンがない為に血まみれだが、突然の来客さえなければ薄暗い山奥の一軒家では誰に指差される事はない酷い姿だった。


 風呂場からの悲鳴はもう聞こえる事は無くなり、その代わり生傷絶えないこの家の主、相沢が雪を抱きながらチュールを雪にペロペロさせていた。

 風呂上がりの一杯ではないが、至福そうな顔に俺達のこの努力はと相沢に訴えてみるも、すっかり堕ネコに成り下がった雪は宙をモミモミと揉みながらチュールをひたすらペロペロしている。

 無条件で可愛いのだが納得かないのはなんでだと魔物の血まみれになった俺達の様子にどうしたんだ?と首をかしげる家主に一階の奴らをこの家に解き放ってやりたくなった。


「所でウサッキーはどうしたんだよ?」


 チュールを完食した雪は既に満足げな顔でキャットウォークではないが、古民家ならではのむき出しの太い梁に上り、欠伸を零して身体をぺろぺろと舐め、まったりとし始める。


「納屋で解体してたんだけど、他に誰もいないならダンジョンで解体しようかって話になって」

「ゴミもその場で捨てられるし、ほら、ダンジョンの中なら俺らそこそこ力があるだろ?」


 解体するならそっちの方が適所だと言えばなるほどと言うように相沢も着いて来た。

 家の中を魔物の血で汚さないように細心の注意を払いながら何とか無事トイレへと辿り着く。

 トイレの機能していない小さな小部屋の片隅に在る消臭剤のラベルがこの部屋が元トイレだった事を裏付ける哀愁漂うアクセサリーの名残を見ないようにして、何でトイレもこんな広い空間が必要あるんだよという謎の設計の相沢家の元トイレにほとんど解体済みのウサッキーをブルーシートの上に置く。

一応床面に付かない様に更なる注意をするなか、料理人としての沢田はこんな所で……なんて項垂れながらもほぼ力技で骨を外していく。


「普通のダンジョンなら人の出入りも多いし解体何て出来ないもんな」


 なんて言いながらも相沢は一度外へ行ったかと思えば何かを取ってすぐに戻ってきた。


「で、どこまで解体は進んだんだ?」


 小型の電気のこぎりを片手に今は亡きウォシュレットの名残のある便座のコンセントを差し込んでいた場所に差し込むのを見て俺達は再度相沢を白い目で見た。


 あるならあるって先に言えよ!


 心の絶叫なんて知らないと言うようにビニールシートを引っぺがしたのちの言葉。

 ほとんど終わってるじゃん、なんてのんきな言葉に沢田は頭と臓腑の入ったバケツを階段の奥へと蹴り飛ばすのだった。





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