今晩はカレーです
夕方に上田雑貨店に赴き今夜の食事を購入する。
岳に飲まれた麦茶を箱ごと購入して夜来る時に運んでくれと頼んでおく。
イチゴチョコ大福に遊んでもらっている岳はついでだから着替えとかいろいろ運び込んでもいいかと許可を願う辺り、既に着替えたジャージの代わりになる物も必要だからと言われれば納得。
なぜ俺が自分の服を同級生と共有しなくてはならないかと言う疑問は岳にも疑問だったようで、無駄に広い家ではなく、廂と廂がくっついて、トイレ行くにも土間を通らなくてはいけないお家事情ならそこも母屋の続きの部屋という離れに荷物を置く事になった。
家賃はダンジョンでの収入の一部を献上。
元々水道料金は一人暮らしじゃ基本料金以上行く事もないので、今の所なあなあにしておく。
洗濯機の水は山水を引いているから電気代だけだしね……
家賃がいくらとか光熱費がいくらとか、算出して見ないと判らない金額はとりあえず暮してみてから考えようと言う所だ。
上田家から頂いている野菜も結構なお値段しているだろうしと考えればもうちょっとタンパク質食べたいなと冷蔵庫から鶏肉をいくつか購入。
チキンカレー好きなんだ。
一度作れば当分食べられるしと、カレー三昧に嫌気がささないのは確実に年齢的な所にもあるだろう。
ばあちゃんは凄く嫌がったからね……
3日めでさすがのばあちゃんも他の物が食べたいと言われた時は反省するしかなかった。
残りをカレーうどんで平らげている横でちょっと離れた大きいスーパーで買ってきた寿司を大層うまそうに食べるばあちゃんを見て反省せざるを得なかった。
そんなばあちゃんも居ないからカレー三昧もオーケーなのだが……
先日岳とカレーを食べたら一晩でなくなるという現象は未だ持って納得が出来ない。
買い物も終わり退屈しだしたイチゴチョコ大福に帰るぞと合図をするように手綱をもてば
「そういや沢田が帰ってきてるらしいってかーさんがさっき言ってた。
家に戻ってきて自分ちの店で手伝ってるってよ」
「それは何時の話し?」
「さあ?
でも先週何も言わなかったからこの間の休日位の話しじゃないかな?」
「お帰りパーティでもやるか?」
「あー、帰ってきても何も連絡がないのが怪しいからもうちょっと探りいれてみるわ」
「だな。悪いが一つ頼むわ」
「りょーかい」
じゃあな。
まいど。
そんな別れの言葉と共に歩き出した三匹は俺を引っ張るようにすたすたと歩きだす。
秋田犬の雑種の足の強さには感心させられるが、それを7年ほど散歩し続けたおかげで俺も足を鍛えさせられて……
だからと言ってこの山道がつらくないというわけではない。
冬場でも汗が噴き出るような急こう配は車でさえ辛そうにエンジンの回転数を上げるし、犬たちもハアハアと息を上げている。
幾ら慣れたとはいえ決して楽な道のりではないし、敷かれたアスファルトが木の根で盛り上がっているとはいえ歩きやすくてありがたいと言うだけの話しだ。
軽く息を弾ませてテンポよくリズムを刻み、汗ばむ程度のスピードをキープ。
どこぞに登山しているとか考えれば全然楽勝に決まっているのだが、それを毎日の習慣に入れるとなると切実に休日が欲しいと願うのは仕方がない。
最も、雨の日なんかはイチゴチョコ大福も散歩したがらないので数少ない休日となるのだが……
それ以外は雪の日でさえ散歩したがるのは勘弁してほしい。
寧ろ、雪の日に散歩に連れてけと大はしゃぎする三匹には本当にかわいいけど逃げ出したい。
雪だるまになった俺を笑うのは岳の役目だからね。
そんな感じで散歩も終わり、俺同様お疲れになった犬っころ達は納屋に在る自分の居場所を確認に戻り、俺がバケツに汲み直した水をがぶがぶと飲んでやっとリラックスモードに入っていた。
俺もバルサンを通路に投げ込んでご飯をセットしてからシャワーを浴びて台所でカレーを作る。
一晩置いたカレーが美味いとかよく耳にするが俺は断然出来たばかりのカレーの方が好きだ。
翌日のカレーは香辛料の香りが飛んでいてまろやかになってる気がする。
気の抜けたコーラ同様香りのとんだカレーを本当にうまいと言うのか疑問だがそれはその人の味覚の問題だ。
俺はピリッと来る辛みと香り立つ複数の香辛料の混ざる香りの方が圧倒的に好きで、母さんが作るおなじみのリンゴとハチミツのルーよりも粉末状になってる奴が好きだ。
ここに来る前に友達からお土産でりんごカレーだったか何だったか忘れたけど、粉末状のカレールーを貰って母さんに頼んで作って食べた時は本当に感動した。
それ以来粉末のカレールーに嵌ったが、このド田舎ではついぞ出会う事はなかった。
だけど世の中便利な物で「リンゴカレー」だけで検索すればすぐにヒットした。
何度か箱買いして今も我が家には在庫がストックしてある。
今夜はリンゴカレーだなんて厚手の鍋に玉ねぎ、にんじん、鶏肉をコトコトと火にかけてノートパソコンを起動。
適当に別のダンジョンの様子を伺いながらうちのトイレのダンジョンとどこが違うのか調べてみる。と言っても俺は一階しか知らないけどね。
だってあんな奴らが蔓延るダンジョンに突っ込みたいなんて俺は正気を疑う。
あいつらの巣と連結してしまったトイレをほんと呪いたくなる。
2階フロアを越え3階まで行けばもういないとは言うが……
今も動画史に残る奴らのスタンピードは最悪を通り越していた。
冒険者達がこれは一体なんぞやと黒く輝く宝石のような塊をこぞって持ち帰り、それがあいつらの卵だとは気付かずウン万では収まらない数が一斉に生み出されたあいつらの……以下自主規制。
思わず思い出して気持ち悪くもなるが、ご飯の炊ける音と共に小さく切ったジャガイモを鍋に投下して待つ事数分後にルゥも入れる。
木べらで焦げ付かないように、そして馴染むように混ぜる事数分で出来たカレーをほっかほかのご飯にかけて食べる。
当然銀色のヤツでのどを潤しながらこのひと時の至福を堪能するのであった。
たとえ、この家が奴等の巣と連結していようが、しっかり締めたはずの蓋が少しずれていようが……
やべ……
さっきしっかり閉め忘れていたかも……
でもバルサン発動してるし大丈夫かと見なかった事にしてカレーを頬張り、その後ビールで口の中を洗い流す。
幸せだー
イチゴチョコ大福にもドックフードをあげたし、後は岳がやってきてダンジョンに潜るのを確認してふたを閉めれば完璧だと考えつつもなんだ?と考えた所でカレンダーに弁護士に連絡と書いてあったのを見つけて見なかったふりをした。
明日こそちゃんとやるもん。
20過ぎた男が言ってもまったくもって可愛くないけどそこがかわいい所だと思う事にしておいた。
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