第4話 魔法使い

あれから半年が過ぎた頃、私がこの半年間グレイスの魔法や剣術を週に3回程は屋敷の外にある訓練場でグレイスの訓練風景を見学させられていた。

それにこの半年でようやく歩けるぐらいにはなったので、自分の足で訓練場に向かうこともある。

そして、歩けるようになった私はついに書斎の方へと歩を進めたのだ。

それから書斎の扉の前に着き、早速扉を開けると少し重量感のある感じが何とも言えない心地の良さがあった。

そして中に入るとそこには、学校の図書室に似たような空間が広がっていた。


「うぉ〜、すごぉ〜い」


と、まだ上手く呂律が回らない感想を言いながら書斎を探索してみた。

だが、困ったことになったのだ。

それは、言葉や言語は理解出来るようになったのだが、一つ盲点があった。


「な~んて読むの〜」


そう、字が読めなかったのだ。


「ど〜しよ〜これじゃなんて書いてるか分かんないよ〜」



困った。実に困った。これでは本や資料に目を通すことができない。

出来れば両親に悟られず魔法の練習をこっそりやりたかったのだがそれが出来ないのだ。

どうしたものかと考えていると、ふと思いついたのだ。



「そうだ!ジェームズさんに頼も〜」


ジェームズさんとは、このドゥラット家に仕えている執事さんである。

なんでも先代の当主の祖父が辺境伯の地位を承った頃から仕えているそうで年齢も60歳を超えているそうだ。

我が父グレイスも幼少期の頃からジェームズさんから勉学と剣術を教わっていたそうだ。

となれば、ジェームズさんに両親には内緒でと頼んで書いている事を教えて貰い、字の書き方や読み方も教えて貰うようにお願いしてみる事にした。

それから、私はジェームズさんが居るであろう執事室に向かったのだ。

そして、執事室に到着し、扉をノックする。


コン、コン、コン


『どうぞ!』


と、言われた為、扉を開けると、その部屋の奥にある丸い机に椅子が2つあり、その内の一つの椅子にジェームズさんが座っていたのだ。


「おや!これはアリーシア様ではないですか!こんな所に来られるとはいったいどうなさったのですかな?」

「実はジェームズさんにお頼みしたいことがあるのです〜」

「ふむ?頼みとはいったい何ですかな?それにその手にある本はもしや魔法理論の本ではないですかな?」

「あのね?この本がなにを書いてるか知りたいのです〜!そして、この私に字の書き方や読み方を教えて頂けませんか?出来れば、驚かせたいのでお父様やお母様には内緒で教えて欲しいのです〜!」

「ほほぅ!なるほど、グレイス様とカナリヤ様にサプライズをしたいとのことですな?承知致しました!このジェームズがしっかりと字の書き方と読み方をマスター出来るようにご教授させて頂くと致しましょう!」

「ありがと〜ございます!では早速教えて頂けませんか?」

「承知致しました!それではアリーシア様こちらの椅子へとお掛け下さい!」


と、そう言ってジェームズさんは椅子を引いて座り易いようにこちらへ向けてきたのでその椅子に腰掛け、早速ジェームズさんの読み書きの練習が始まったのだった。

それは、1週間続いたのだ。

すると、ジェームズさんの教え方が良いのか、私は見る見るうちに読み書きが出来るようになってきたのだ。

これには、ジェームズさんも驚いていたようで何でもグレイスでもここまで速く読み書きが出来る事はなく、グレイスに至っては1年ちょっとの期間が掛かったそうだ。

だからこそ私もそれなりの時間は費やすだろうと覚悟していたそうだが、1週間と言うあまりにも驚愕的なスピードでマスターしてしまったため、その驚きを隠せないでいたのだ。


「アリーシア様、あなた様はもしかするとドゥラット家始まって以来の天才かも知れませんぞ!」

「そうでしょうか?私はジェームズさんの教え方が上手だからこそここまで来たのだと思いますが?」

「いやいやぁ!そんな事はありません!私は只、こう書かれているものはこう読むと言う様にしか教えていませんから、ほとんどはアリーシア様の努力と才にあったのだと思いますぞ!これでもうお教えすることが無くなってしまいましたな!これからはアリーシア様自身でたくさんの本を読み、感じて勉学に励んで下さい!」

「分かりました!1週間と言う短い間でしたが、ご教授して頂きありがとうございました!」

「いえいえ、また何か困ったことなどがあれば何時でもお声掛け下さい!」

「分かりました!それでは、私はこれで失礼します。」


そして、話し方もいつの間にか子供っぽくなくなり、前世の頃の話し方とあまり変わらなくなって来たのだ。

そのおかげで、ようやく本を読めるようになったのだ。

その為、早速書斎に向かい、魔法理論と書かれている本をやっとの思いで読むことが出来たのだ。

そして、その本にはこう書かれていた。


[この世界には3大元素魔法と2つの特殊魔法がある。]


と、書かれていた。

何でも3大元素と言うのは火、水、風からなるもので、特殊魔法と言うのは光、闇の2種類からなるものだそうだ。

その中でも、魔法の強度にもランクがあり、それは、初級、中級、上級、超級、極級、神級で分かれているようだった。

その中で魔力量の量にも影響されるが主に技術面が卓越していればいるほど上のランクの魔法が操れるのだそうだ。

つまり、魔力がどんだけあっても技術が無ければ上のランクへは行けないというものなのだ。

それに、発動条件には詠唱が必要だが、稀に詠唱無しの無詠唱が出来ることがあるらしい。

そんな人は魔法使いとしての才能が誰よりも秀でており、世界でも約10億分の1程度しか居ないらしい。


「なるほど、それなら魔法の技術量を重視してこれから訓練して行けば魔力量がそれほど無くても強い魔法を扱えるかもしれないね・・・」


と言う訳で、早速魔法を使ってみる事にした。

まずは火の魔法を使ってみようとするため手を前に突き出し、掌を上に向け、火が燃え盛るイメージをして詠唱して発動させてみることにした、


「我が心に宿りし炎よ!ここに顕現せよ!ヒーター!」


ボゥ!


「あ、出た!やったあ~!それに前世で使っていた超能力よりも扱いやすい!何と言っても加減を調節出来るのはとても嬉しい要素だ!」



と、どうやらランクごとに魔法の名前が違うそうなのだ。

グレイスが使っていた魔法の名前はフレイヤーで上級魔法だそうだ。

私が使ったのはヒーターで初級魔法であり、主に温めたりする程度の魔法でしかないため生活的な分野でしか使えないのだ。

実用出来て戦える魔法は中級のファイアーからだそうだ。


「なるほど、それじゃ今度は無詠唱で使ってみようかな」


そう言って私は10億分の1の人にしか使えないと言われている無詠唱魔法を使って見ることにした。


「ヒーター!」


ボゥ!


「あれ?できちゃったよ」


何とも言えない虚無感が出てきてしまった。

何せ10億分の1の人にしか使えないはずの無詠唱があっさりと出来てしまったからだ。


「なんだかなぁ~…」


まぁいいや!と出来てしまったもの仕方ないので取り敢えず魔法は使えるようなのでこれから練習するのがとても楽しみになったのだ。

そして、何度もヒーターの魔法を繰り返していくと突如に気だるさが起き、眠気に襲われたためそのまま寝てしまったのだ。

あ、本に書いていた魔力の枯渇というやつか。と、私はそのまま寝てしまった。


「…か、…リー!」

(ん?)

「…か、アリー!」

(あ!)

「大丈夫か!アリー!」

「はい!大丈夫です!お父様!」

「良かった!アリー!ところで何でこんなところに居るんだ?父さん心配したぞ!」

「その…実は魔法のことについて調べたくて何やら詠唱と言う物を口にすると急に眠たくなってしまいまして…」

「寝てしまったと言う訳か?」

「はい、そのようです」

「ん?もしかしてアリー魔法を使えたのか?」

(あ!しまった!どうしたものか?使えたとはっきり言うべきか、それとも使えなかったフリをするのか?どうしよう…、なるべく黙っておきたいが…、良し!決めた!)

「お父様!私、まだ使えませんでした!」

「そうか!まぁまだお前は1歳半だからな!今はまだだろうが、その内出来るようになるさ!」

(うん!取り敢えず今は黙っておくとしよう!)

「さ!少しベッドで寝ると良い!眠くなったり気だるさを感じたら魔力の枯渇の証拠だからね!」

「分かりました!お父様、心配をお掛けして申し訳ありません」

「そんなのは良い!お前が元気でいればそれで良いからな!」

「分かりました!それでは私はもう寝ますね」

「あぁ!よく寝ろよ!」



と、私は書斎を後にして自分の寝床へと帰って行くことにした。


(これで私はついに魔法使いになれたんだね!)


そうして私はウキウキとして軽くスキップをしながら部屋へと帰って行きました。



ジェームズ

見た目は約60代であるが先代の当主が幼少期の頃から仕えている執事でドゥラット家の執事長をしており、勉学や戦闘技術等も御手の物でその腕は未だ衰え知らずと言われている。



追記事項

忙しい日々が続いたため投稿が1週間遅れてしまいました。ですが、これからも1週間に一回は投稿する予定ですので今後ともよろしくお願いします。

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