第3話 魔法の世界

私が転生してアリーシアとして生まれ変わってから1年が経った頃だった。

1歳になった私をカナリヤが抱きかかえながらこう言った。


「アリー、今日からお外に出ましょうか?」

「あ゙っやぁ~(やったぁ~)」


やっとこの屋敷らしい場所の外を確認出来る日が来たのだ。

何せこの1年間はずっとこの部屋に閉じこもりっきりで両親は勿論のことながらメイド達が私のお世話をしてくれるため外に出る機会が全く巡って来ないかったのだが、この屋敷の外が早く知りたくウズウズしていたので、私にとっては天にも昇るような気持ちなのである。


「そろそろアリーもこの1年間ずっと寝たまんまだったから退屈してるだろ!」

「そうよねぇ、これから外の空気を吸って外の世界も素晴らしいって言うのを教えてあげないといけないものねぇ」

「そうだな!この子には名前の通りに大らかで愛に満ちた可愛い子に育って欲しいからな!」

「ふふ、それじゃまるで聖女様みたいじゃない」

「聖女様程までじゃなくても良いさ!何せ人を思いやれる子に育って欲しいんだ!」

「そうねぇ、そんな子に育ってくれると私も嬉しいわぁ」

「あ゙っゔぇー、あ゙っう!(オッケー、頑張る!)」


とそう言いつつ両親は屋敷の外へと出たのだ。

するとそこには、大きな広い庭が広がっており、門から一直線にこちらの扉まで道があり、その道の右手には何やら大きな広場があり、そして左手には庭園のような物があり、たくさんの綺麗な色をしたお花さんたちがそこにはあった。


「まずは女の子だから庭園の方に連れてってみましょうか?」

「そうだな!花には興味を示すかもしれん!早速行ってみよう!」


そして、両親は私を連れて庭園の方へと歩を進め、庭園の中まで入って行った。

するとそこには前世では見たことも無いようなお花がたくさん咲いていたのだ。

あれ?こんなお花あったっけ?そう言えば私の名前もアリーシアで話ではお花の名前だったはずなのだが、そんな名前を前世では見たことも無ければ聞いたこともないのだ。

何かおかしい!似たようなお花はあるが前世で見たものとは少し違う。

ともあれ、今考えても埒が明かないので今度歩けるようになったら、書斎に行き、調べてみよう。屋敷だから恐らく書斎ぐらいあるだろう。


「よし!今度は訓練場に向かおうか!」

「そうねぇ、これからはこの子も訓練場にお世話になるものですしねぇ」

「取り敢えず魔法と剣技ぐらいは見しておこうか!」

「あぅ?(え?)」


今、魔法って言った?聞き間違ったのか?まさかこの現代において魔法なんてあるわけないよねぇ!聞き間違ったのだろう。まさかそんなアニメやマンガや映画に出て来るような物が現実に出てくる訳がないのだ。

あ!そう言えば私、転生してるんだよなぁ。

転生しただけでも信じられないと思っていたのにまさか魔法まで出てくる訳が…まぁ、直ぐにその真相は分かるさ!取り敢えず考えていても仕様が無いので我が父が何を見せてくれるのか楽しみにするとしよう。

そして、訓練場に着くと、その広さに少し驚いた。

おおよそウィンブルドンで使用するテニスコートよりも少し広めだろうか、その訓練場は思ってたよりも広かった。

そこで父が訓練場に立て掛けてある剣を取り、演武を始めたのであった。

その剣を振る動作や身のこなしに何とも言えない豪快さがあったのだ。

そしてその豪快さながらとても洗練されていて美しくも見えた。

道理で我が祖父の地位を受け継ぐ訳だ。その動きを見るだけでその強さ、威圧感が湧き出ているかのようだった。

それに、その時のグレイスの演武がカッコ良く見えたのだ。

私もあんな風に成れるのかなぁ?と思っているとどうやら演武が終わったようである。

そして待ちに待った聞き間違いだったのか、そうでは無かったのかの真実を知ることが出来る。

すると、父は剣を壁に立て掛けあと、右手を突き出し何やら唱え出したのだ。


「我が心に宿りし炎よ!ここに顕現せよ!フレイヤー!」


と、何やらグレイスが中二的な呪文の様なものを唱え出したしたと思っていると手から火のビームに似たような物が放出され、訓練場の奥の的になっているところに当たった。

すると焦げ跡が出来たが、これもその魔法と言うものなのか焦げ跡が消えていき、元の綺麗な的に戻ったのだ。

そして、私は驚愕したのだ。

この世界は私が前世に居た世界とは異なる世界だということだ。

前世の世界には魔法なんて物は存在せず、主にハ◯ー・◯ッターなどの映画やマンガ、ゲームでしか存在していないのだ。

私はとんでもない世界に転生してしまったと思った。

まぁでも私も超能力使ってたしね!この世界では使えるかどうかも分からないけど…

かと言って超能力を使うと周りがどうなるか分からないし今は使えるかどうかを確かめない方が良いだろう。

取り敢えずこの世界では魔法が使えるようだ。私も出来るように練習しておこう。


「どうだ!アリー!と言ってもまだ1歳だからさっきの演武も魔法もまだ理解できないだろうが今から見せておいてイメージが頭の中に残っていてくれれば良い!そのイメージが魔法の練習や剣術をし始める頃に役立つだろうからな!」

「そうねぇ、こうやって毎回見せてあげるとそのうち突然出来るようになったりするかも知れないしねぇ」

「いや!さすがに突然は出来ないよ!最初は誰でもミスは多いものさ!ミスを沢山して多かったミスを徐々にで良いから減らしていき、いずれ多くの魔法や剣術を身につけていけば良いのさ!」

「ふふ、そうよねぇ、これからアリーもどんどん可愛くなってそして、強く賢い子に育って欲しいわねぇ」

「あぁ!そのための訓練だからな!」

「それじゃあ、もうこのぐらいにして一度屋敷に戻りましょうか?」

「そうだな!初めての外だったしたくさんのものを見たり、感じたりして疲れただろうからな!」



そう言うと両親は私を連れて屋敷へと戻って行ったのであった。

それに今日は大収穫だったのだ。

何と言ってもこの世界は魔法の世界であり、魔法が使えると言う事だ。

後で書斎を見つけ出し、どんな魔法があるかを調べてみて練習をしてみよう。

前世では超能力で上に上り詰めたが、今度は魔法で上り詰めることにしよう!とそう心に誓ったのだ。


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私が両親と一緒に庭へ出かけたその頃、屋敷内では、メイド達が不穏な会話をいていた。


「ねぇ、アリーシア様って何か不気味じゃない?」

「突然何を言ってるのよ」

「だって生まれた時からそうだけどアリーシア様ってこの1年間泣いたことないじゃない。」

「そう言えばそうねぇ…」

「それにアリーシア様と目を合わせると何だか見透かされてるような感覚になるのよねぇ」

「そっそれは…」

「ねぇ、もしかしてアリーシア様って魔族帰りなんじゃ」

「そんな罰当たりな事を言うもんじゃありません!」


と、声を荒げてその言葉の続きを遮ったのは…


「「「メ、メイド長!」」」


と、マーベルが現れ、みんな一斉に整列して一礼をする。


「バカな事を考えてないでさっさと仕事に取り掛かりなさい!」

「「「はい!承知しました!」」」


と、さっきまでの話し合いが無かったかのようにみんな一斉に散開していき、自分の持ち場に戻ったのだった。


(アリーシア様は決して魔族帰りなどではありません!絶対に!)


と、まるで自分に言い聞かせるようにマーベルは心の中で思い込むことにしたのだ。


追記事項

これから毎週1話ずつ更新して行こうと思ってます。どうか宜しくお願いします!

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