第126話 見えない視線3

 グリム達が戦い抜き、Dが泣き叫ぶ大号泣の中。

 何処からともなく存在する見えない視線は、その光景を目の当たりにしていた。


「Dさん、頑張っていましたね」

「そう。だけど、結構残酷」


 アイとナミダはその光景に肝が冷えた。

 実際見えなかったにはゲーム上のシステムと位置関係のおかげ。

 あの惨状を直に見てしまえば、発狂は免れないだろう。


 それは何故か。精神の弱い人にはかなり酷な景色。

 顎髭男性は回転する戦輪の攻撃を顔面で受けた。

 カッターのように鋭い攻撃を何度も叩き付けられれば如何なるのか。

 これ以上の答えは不要で、アイもナミダも押し黙った。


「アイの言う通り、面白いプレイヤー」

「そうだよね。グリムさん達、面白いプレイヤーだよね」


 ナミダはソファーに腰を掛けると、アイにそう語り出す。

 アイも満更ではない様子で、自分が見出した面白プレイヤーに歓喜する。


 実際、ここまで動けるプレイヤーはそう多くはない。

 動けるプレイヤーが多ければ多い程、配信で得られる収益も上がり、より一層ゲームのPR効果も高まる。運営人自らがAIのふりをしてまでナビゲーターを務めるのも、全ては自分達のために繋がった。

 おかげで株価も上昇中。子会社の方の新製品も上々な出来になって来た。


「それにしても、かなりのデータが取れた」

「全くだな」


 ナミダに合の手を入れるのは、フシギだった。

 マグカップの中にはコーヒーが入っていて、ゲームの中なのにゆっくり飲む。

 中々良い塩梅で焙煎ができた様子で、不思議は満足そうだった。


「これだけのデータがあれば、民衆の意見も掌握できそうだな」

「あはは、そんなことしないでしょー?」


 フシギの冗談にもならないような言葉に、ユカイが反応した。

 フシギの首に腕を回すと、そのまま体重を預ける。

 無性に嫌そうな、ではなく重たくて苦しそうな表情に変化した。


「ユカイ、フシギが苦しそうだよ」

「確かに、顔色が悪い」

「えっ? ああ、ごめんごめん。フシギー、大丈夫?」

「大丈夫じゃないから早く退けろ」


 フシギは苛立った表情を浮かべた。

 これはマズい。そう思ったユカイは素早く離れると、慣れない様子でフシギは「全く」と肩を回していた。一切ゴリゴリ音がしない。ほぼ間違いなく凝っていない証拠だ。


「話を戻すが、とは言えデータは有って十分だ。実際、他にも有益なデータをもたらしてくれるプレイヤーは数多くいる。収入面でも安定するが、期待値も跳ね上がる。とは言え、一度何処かで頭打ちにする必要はありそうだがな」

「実際、もう退職しても一生遊んで暮らせるだけあるもんねー」

「余計なことを言って、やる気を削ごうとするな」


 ユカイは調子の乗って余計な言葉を吐く。

 けれど誰も否定はせず、何一つとして間違ってはいなかった。

 とは言え、まだまだこれからなのは承知済み。やりたいこと、データ収集ともろもろも発展途上だった。


「で、そんな折だが、例の噂は流せたのか?」

「えっ、システム的に散らしたんじゃないのー?」

「散らしてはみた。だが、口伝いにも欲しいところだ」

「それならもう終わっているよ。少しずつ拡散しているみたいだよ」


 アイ達は何やら意味深な言葉を吐き連ねる。

 PCOも発展途上、ゴールドラッシュ・イベントも終盤。

 この辺りで少し面白いアクションを取ってみた。

 その話題を勝手に盛り上げると、フシギは笑みを浮かべる。


「そうか。それはいいな」

「おっ!? フシギが楽しそう。やっぱり自分で考案したモンスターだから?」

「それもあるが、少し癖のあるモンスターだからな。だが、倒されて貰わないと困りもする」


 フシギは少し意地悪な仕掛けをしてしまったと、今更ながらに後悔した。

 腕を組む「うーん」と唸ると、ポンと背中を擦られた。


「大丈夫だよ。きっと攻略してくれるプレイヤーが現れるから」

「そうだな。せっかく用意したからには戦って結果をくれないとな」

「砂麗の巨人。戦い甲斐有りそうだもんねー。あー、戦いたい!」

「ユカイが戦っても意味ない」

「分かってるよー。ナミダも冗談に付き合ってくれてありがとー」


 アイ達はそのまま談笑を続けた。

 今回のイベントももうじき終了。

 互いに切磋琢磨し合うプレイヤーの成長を見守りつつ、折角用意したモンスターを早く倒して欲しいと心待ちにするのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


■グリム

性別:女

LV:23

HP:230/230

MP:135/135


STR(筋力):75

INT(知力):80

VIT(生命力):72

MEN(精神力):178

AGI(敏捷性):74

DEX(器用さ):128

LUK(運):81


装備(武具)

メイン1:〈死神の大鎌〉ATK:-X

メイン2:


装備:(防具)

頭:

体:〈死神のシャツ〉〈死神の外套〉DEF:-X

腕:

足:〈死神のレギンス〉DEF:-X

靴:〈死神のブーツ〉DEF:-X

装飾品:〈死神のネックレス〉ステータス:-X


スキル(魔法を含む)

【精神相殺】【観察眼】【看破】【ジャストガード】【眼光】【緊急回避】【速読】【読唇術】


ユニークスキル

【マイナス固定】




■フェスタ

性別:女

LV:17

HP:200/200

MP:125/125


STR(筋力):161

INT(知力):63

VIT(生命力):60

MEN(精神力):55

AGI(敏捷性):111

DEX(器用さ):54

LUK(運):55


装備(武具)

メイン1:〈戦車の大剣槍〉 ATK:X

メイン2:


装備:(防具)

頭:

体:〈戦車の軽鎧〉 DEF:X

腕:

足:〈戦車の軽脚〉DEF:X

靴:〈戦車の軽靴〉DEF:X

装飾品:〈戦車のスカーフ〉敏捷性:X


スキル(魔法を含む)

【筋肉増強】【ジャスト回避】【馬術】【アニマルフレンドリー】【潜水】【納剣】【抜剣】【威圧】


ユニークスキル

【万能騎乗】


■D

性別:女

LV:20

HP:200/200

MP:165/165


STR(筋力):47

INT(知力):69

VIT(生命力):80

MEN(精神力):81

AGI(敏捷性):49

DEX(器用さ):61

LUK(運):67


装備(武具)

メイン1:〈運命の腕輪〉 ATK:X

メイン2:


装備:(防具)

頭:

体:〈運命の祭服〉 DEF:X

腕:

足:〈運命のスカート〉DEF:X

靴:〈運命の皮靴パンプス〉DEF:X

装飾品:〈運命のペンダント〉敏捷性:X


スキル(魔法を含む)

【光属性魔法(小)】【高速詠唱】【投擲】【気配察知】


ユニークスキル

【未来予測】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る