第47話 連携はバッチリ100%

 グリムとフェスタはカマキラーサイスに一切物怖じせず迎え撃つ。

 大鎌と大剣を構えると、ジェット噴射で素早く近付いて来たカマキラーサイスの鎌が振り下ろされた。


「キキヤァッ!」


 大振りの鎌が見えない速度で降って来る。

 まずはフェスタが狙いのようで、完全に降りが遅いことを読まれていた。

 流石AIが搭載されたモンスター。普通に昆虫よりも頭が良いし、パワーも段違いだ。


「やっぱり私だよね。ぬなぁっ!」


 フェスタもこれは読んでいた。

 大剣を上部に構えると、膝を落として衝撃を吸収する。

 だけど全然ダメ。フェスタは大剣の重さとカマキラーサイスの衝撃で気圧された。


「くっ、このっ!」


 押し返そうと必死になるフェスタ。カマキラーサイスのの鎌が少しだけ動く。

 しかしフェスタのHPじゃない、リアルHPがガッツリ減らされた。

 このままじゃスタミナが足りない。そんなフェスタを支えるように、グリムは飛び掛かった。


「フェスタにばかり気を取られていたら、私を止められないよね」


 そう言ってさっきは止められた。

 けれど今度は明らかに動きが違う。

 グリムは体を捻るようにして飛び込むと、カマキラーサイスが対抗して来る前に、大鎌を投げつけた。


「この不意打ちは防げないよね」


 グリムは優しく語り掛けると、確かにカマキラーサイスは防げなかった。

 湾曲した刃がはねを切る。けれどどんなボディをしているのか、ツルッツルの光沢たっぷりの体に弾かれて、あまり期待していた以上のHPが削れてくれない。

 ムッとした表情を浮かべるグリムは素早く着地し、受け身もそこそこに大鎌を回収した。


「ふぅ。そう簡単に倒されてはくれないよね」

「それじゃあ隙を生めばどうかなー?」


 困ってしまったグリムにフェスタが手を貸してくれる。

 流石は相棒。そう思ったのも束の間、フェスタのやり方は無茶苦茶だった。


「まずは背負い直して、そのままドーン!」


 フェスタは一瞬完全に無謀になった。

 大剣を背負い直すと、素早く振り下ろす。

 スキル【納剣】と【抜剣】を巧みに使った連続技だが、あまりにも無謀で危険。

 現に少しHPが減っていた。完全に痛み分けで作った隙をグリムは見逃さない。


「ありがとうフェスタ。でもそんな真似は好みじゃないよ」

「それを言うのは後にしてよね。それじゃあGOGO、グ・リ・ム・-!」


 期待されてしまったグリムは応えることにした。

 体を小さく屈めると、カマキラーサイスに飛び込む。

 懐に飛び込むと熱が生まれた。ジェット噴射で逃げる気プンプンだ。


「それはさっき見たよ。だからもう通用しないかな」


 グリムはジェット噴射で逃げようとするカマキラーサイスの脚を奪った。

 大鎌の刃が一本吹き飛ばすと体勢が変わってジェット噴射が使えなくなる。

 不安定な体勢になると、ジェットが分散して飛べなくなるのだ。

 それを見事に見切ると、グリムは〈死神の大鎌〉を叩きつけ、一気に勝負を決めに行く。


「隙ができたね。それじゃあ私の勝ちだよ」

「キキキィ!」


 カマキラーサイスは鎌を両方とも振り上げた。完全に防御を捨てている。

 これなら勝てるかもしれない。懐に飛び込もうとすると、鎌が地面に突き刺さる。

 近くに居たグリムは絶対に避けることができない。

 フェスタはその光景を目の当たりにして叫んでいた。


「グリムー!」


 しかしグリムにフェスタの声がはっきりと届いていた。

 つまり痛みも警戒も何もない。

 カマキラーサイスの攻撃は確かにグリムに当たったのだが、片方は大鎌で捌き切り、もう片方は〈死神の外套〉で無効化だ。


「惜しかったね。これが私じゃなかったら確実に獲物を捕らえられていたはずだよ」


 グリムは余裕に口を開いていた。

 カマキラーサイスは赤く光る瞳に威圧されているのか動けなくなる。

 ピタリと動きが止まると同時に、グリムはニコッと笑みを浮かべた。


「でも、今回は私の勝ちみたいだね。だって、私は負けないから。ごめんね」


 グリムはカマキラーサイスの頭に鎌をかけた。

 後はコトンと引き抜くと、カマキラーサイスは絶命する。

 即死判定を完璧に出すと、一切の反撃も許さずに倒してしまった。

 全身が粒子に変わると、そのままポイントになってくれた。

 ホッと胸を撫で下ろし、勝利の余韻を噛み締めると、肩をポーンと叩かれた。


「やったね! グリム。いや、最高にクールだったよね」

「そんなつもりはないけどね」

「いやいやー。最高だったよ。それにしてもあんな簡単に倒しちゃうなんて、即死判定ってシステムは面白いよねー」


 確かに良く考え抜かれていた。これならどんな強者にだろうが勝ち目が出る。

 グリムもフェスタ同様、このシステムを気に入っていた。

 しかしその話題を深掘る頃には、既に別の話題に意識が削がれていた。


「にしても今のモンスター、カマキラーサイスは強かったね」

「そうだね。もしかしたら中ボスかもしれないよ」

「中ボス。ってことは獲得ポイントも……エグっ!」


 フェスタは早速ポイントを確認した。

 すると今までには無い桁のポイントを獲得していた。

 まさかの二桁。五十ポイントも一気に稼いでいた。


「凄い。これが中ボスの恩恵……」

「確かに凄いね。これなら中ボスをメインに戦ってもいいかもしれないよ」


 とは言え勝てる保証はない。しかしフェスタはその言葉を待っていたとばかりに目をキラキラさせる。

 グリムの手を強引に掴むと、ピーン! と天高く振り上げた。


「それじゃあここからは中ボスをガンガン狩りに行くよ」

「ガンガン行くの? それは流石に疲れるけど」

「それじゃあ程よく狩りに行くよ。エイエイオー!」

「ふっ、エイエイオー」


 フェスタのノリにグリムも合わせる。

 全く楽しくなってきた。これでこそパーティーだと、グリムは笑みを零した。

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