第45話 昆虫型モンスターとの戦闘
グリムとフェスタはそれから森の中を散策し回した。
他のプレイヤーと接敵することはなかったが、代わりに奥に行けば行くほどモンスターに出遭えた。とは言えポイントが発生しないいわゆる雑魚のモンスターも多かった。
けれどグリムとフェスタは効率なんて考えずに、とにかく倒しまくることにした。
「フェスタ、そっちはお願いできるかな?」
「OK。それじゃあ私がデカいのやるから、ちっこいのは任せるよー」
「うん。こっちは任せておいて」
グリムは数をフェスタは個を撃破する方針だった。
グリムの間の前には森の喧騒に誘われてやって来たのか、スライムやグレーウルフ。それから昆虫型のモンスターで、電気を出すテントウムシ=ビリビリテントウとちょっと大きめの黒い蟻=クロイアントがお目見えする。
数は全部で三十ちょっと。長距離用の武器である〈死神の大鎌〉がどれほど効くかは未知数だけど頑張って試してみることにした。
「それじゃあ、行くよ」
グリムは息を少し吸い込んで走った。
前に躍り出ると、〈死神の大鎌〉を近くに居たスライムに叩き付ける。
「一匹目。それじゃあ次……二匹目」
湾曲した刃がスライムを次々倒していく。
攻撃して来ても痛みはほとんどないが、無駄に意識を裂きたくないからか、グリムはスライムから優先して倒していた。しかしグレーウルフは飛び出してきて、グリムの首に噛み付こうとする。
「分かっているよ。視界に入ってるからね」
視界の端に飛び込んできたグレーウルフが見えた。
湾曲した刃がグレーウルフの首に先に触れた。
後はそのまま流れで落とすと、グレーウルフは地面に横たわり消滅する。
ある程度片付けると、残りは昆虫型のモンスターだけになった。
「ビリビリテントウとクロイアントだけだね。えっと、フェスタ?」
少しよそ見をしてフェスタを見てみる。
目の前には大型の昆虫型モンスター。カブトムシの様なゴツさが有るけど、熊の様なイカつさもカッコいい。名前はカブトベアらしいが、決して頭に兜は被っていなかった。
とは言え見た目のゴツさを武器にするパワー系のモンスターで、フェスタと壮絶な打ち合いになっていた。
大剣を振り下ろし重さを武器にするフェスタと張り手で押し倒そうとするカブトベア。
どちらも拮抗していて、互いに楽しそうだった。
「フェスタ、手伝う?」
「大丈夫―。それよりさ、そっちは片付いたの?」
「まだだけど。でももう少しで終わるよ」
「そっかー。それじゃあさっさと倒しちゃうよねっ!」
フェスタは大剣を頑張って振り回した。
あまりの重さに膝が耐えきれないが、それでも体の軸ごと回転させて戦っていた。
それを受けてグリムも目の前のモンスターに集中する。
大鎌を振り上げると、二匹のモンスターに攻撃を開始した。
「せーのっ!」
大鎌を振り上げて攻撃しようとする。
するとビリビリテントウが近付いて来て、全身を青白く発光。
すると静電気の矢が飛んで来て、危く感電するところで身を躱して避けた。
「危ない危ない。それじゃあまずはそっちからだね」
ビリビリテントウに狙いを定めた。
しかし今度は足元に寄って来ていたクロイアントに体当たりをされる。
足に衝撃が走り、HPが少し削れた。
痛いというか動けなくて今度はまともにビリビリテントウの攻撃を喰らいそうになる。
「それは少し危ないね。でも私には当たらないよ」
上半身を逸らし電撃攻撃を躱した。
その瞬間、右手のみに持ち替えた〈死神の大鎌〉のリーチを活かして、離れた位置にいたビリビリテントウにぶつけた。
下から上へと突き上げた攻撃に対処が間に合わなかったのか、ビリビリテントウは軽く吹っ飛んで消滅した。ポイントに早変わりし、グリムは「よし!」と喜んだ。
「それじゃあ後は貴方だね。クロイアント!」
グリムは足下に居たクロイアントを蹴っ飛ばす。
相当硬いせいか足に痛みが走るが気にせずに、無理やり痛みで痺れを解いた。
それから少し下がると固そうな上下は止めにして、側面を狙って大鎌を叩き付けた。
「絶対に倒せないモンスターはいないよ。だから倒させてもらうからね」
グリムは当たり前のことを決め台詞のように言い放つと、〈死神の大鎌〉を問答無用で叩き付けた。
一瞬でクロイアントが吹っ飛ぶと、消滅して粒子になってしまった。
グリムは達成感に満ち満ちると、フェスタに振り返る。
けれどその時にはもうカブトベアは倒されていて、バタンキューになっていた。
「フェスタ、無事に倒せたんだね」
「もちろんだよー。私が負けるわけないからねー」
「フェスタらしいね。それじゃあ次行こっか」
「うーん、ドンドン行こう!」
グリムとフェスタは襲って来たモンスターを速やかに倒してしまうと、次のモンスターを探して森の奥に行こうとする。
そんな時だった。急に森の奥から悲鳴が上がった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
男性の悲鳴のようだった。
ただ事ではないと感じた二人は足止めた。
すると草木が騒めき出す。この先に何かいる。何となく直感が囁いた。
「この先は危なそうだね、どうする行ってみる?」
「もちろん行くでしょー。こんなところで私たちは止まらないよね」
「そう来ると思っていたよ。それじゃあ気を付けて行ってみようか」
グリムとフェスタは自らの意思で危険に飛び込むことにした。
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