第44話 モンスターズ・ペア始まる1

 いよいよ今日だ。PCOにログインしたグリムとフェスタは合流すると、早速イベントが始まるのを待つ。

 今回のイベント、モンスターズ・ペアは参加人数がかなり絞られているらしい。

 それだけ不評と言うことなのか、これなら上位も狙えそうだ。


「参加しているプレイヤー、結構少ないね」

「そうだね。だけど油断はできないよ。もしかしたらこの時のために準備していた人達も……」

「いや、居ないよ」


 フェスタは悲しいことを断言した。

 確かにピジョン曰く、前評判はあまり良くないらしい。

 だけどグリムは楽しみにしていたので、問題無しだ。


「さてと、そろそろ。あっ、来たね!」


 イベントバーが開けるようになった。

 タッチしてみると〔第一回モンスターズ・ペア開催〕と書かれている。

 早速タッチすると、参加ボタンが表示と概要が表示された。


「とりあえず参加を押しちゃうねー」

「私も押したよ。さてと、一応ルールは確認しよう」


今回のイベントはモンスターズ・ペアと言う二人一組で行われるイベントだ。

ルールは簡単で、モンスターを倒しまくってポイントを稼ぐ。ただそれだけだ。

イベントに参加しているプレイヤー同士で共闘しモンスターを倒すのも良し。妨害をしたり、奪ったりするのも良し。とにかくマップ内の指定されたモンスターを倒して回れば、その分だけポイントが貰える仕組みになっていた。

とは言えイベントに参加し居ないプレイヤーへの妨害や、逆に参加していないプレイヤーの妨害はご法度で、ポイントが入るモンスターも指定されている。

考えることが多いけど、モンスターを倒してポイントをたくさん獲得したら勝ち。

 上位に入賞すれば後日報酬としてアイテムが貰えるようなので、頑張り甲斐もあった。


(でもこのイベント、必ず二人用意する必要があるんだよね)


このイベントの最大の問題点は、ソロでは参加できない所だった。フレンドを募るなどして、参加人数を稼がないといけない。それが前評判でかなり不評な要因でもあった。

とは言え、ルールの穴を突くこともできる。

例えば二人で参加だけしておいて、当日には一人で参加する。みたいなこともできるが、流石にそんなズルをする気はなかった。


「頑張ろうね、フェスタ」

「もっちろん。やるからには勝つよー」


 二人はハイタッチをした。周りに居たプレイヤーの視線が集まる。

 とは言え特に気にする様子もなく、時間が来るのを待っていた。

 気が付くとイベント開始時間になっていた。

 グリムとフェスタを始め、イベントに参加しているプレイヤー達の姿がフォンスの噴水広場前から消え、それぞれ別のエリアに飛ばされる。

 如何にも始まったという高揚感に浸かり、何処から始まるのかワクワクした。




「さあ、行こうー」

「うん、モンスターを手っ取り早く狩って初日で上位に食い込んでおいたら楽だからね」


 ペア同士は同じエリアに飛ばされる。

 グリムとフェスタは早速モンスターを倒しに向かったのだが、今回も視界の悪い森を引いてしまった。ファンタジーゲームで森は定番だが動き難いし、モンスターの視認性も悪い。

 幸い、他のプレイヤーと接敵するようなこともないからまだ安全だけど、流石に一面緑に苦戦していた。


「全然モンスター見つからないねー」

「うん。これじゃあポイントが稼げないよ」


 グリムとフェスタが森の中を歩いていると、ガサゴソと草が揺れていた。

 十分歩いてようやくモンスターと接敵。一体何が出て来るか楽しみにしていると、早速姿を現す。

 出て来たのは二足歩行の人型モンスター。だけどちょっと違うのは、ゴブリンの様な鬼フォルムではなく、完全に二足歩行のバッタだった。


「ば、バッタマン?」

「バッタマンって。ちょっと権利元大丈夫なのー?」

「うーん、大丈夫なんじゃないかな。とにかく攻撃される前に倒して」


 振り返った瞬間、バッタマンが飛び込んできていた。

 バッタらしく蹴りを喰らわそうとするが、グリムは大鎌を取り出す。

 湾曲した刃でカキーン! と、バッタの蹴りを受け止めると、その隙を突いてフェスタは飛び出した。


「フェスタ、お願い」

「OK、せーのっ!」


 グリムがバッタマンの動きを止めている間に、背負っていた大剣を振り下ろすフェスタ。

 バッタマンは逃げられず、グリムに大鎌で払腫れた瞬間に切り伏せられた。

 地に伏せると、速やかに粒子に変わり経験値になってくれた。

 おまけにポイントも手には入って一石二鳥だ。


「今ので五ポイント。多いのか少ないのか分からない」

「うーん、多い方なんじゃない?」

「そうかな。まだ分母が少ないから分からないけど、もう少しモンスターを倒してみようか」

「うん。今度はもうちょっと張り合いがあると良いなー」


 グリムもフェスタもあっと言う間すぎて張り合いが無かった。

 だからもう少し強めのモンスターを求めて森の奥へと向かっていた。

 しかし二人は気が付いていなかった。

 バッタマンはそこそこ強いモンスターで、受け切れたのは異常だということに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る