第39話 戦車の装備を手に入れた

 静まり返った空洞の中。

 フェスタは一人立ち尽くし、ボスに一人で打ち勝った? のかもしれない。

 そんな気持ち悪い感覚に苛まれてはいたものの、ふと振り返ると金色に輝く宝箱が目に留まった。


「帰れないってことは、あの宝箱を空けたら帰るのかなー? ミミック系なら面倒だね。絶対強いもんね」


 恐る恐る慎重に宝箱に近付いた。

 いつでも大剣を握れるように回収し近場に置いておくと、ゆっくり宝箱の上蓋を開けた。

 蝶番ちょうづかいに引っかかり、ゴテンと中身を露わにした。すると大量の物が入っていたのか、一気に表示された。


「うわぁ、何コレ!?」


 大量のアイテムが入っていて、スクロールすることになった。

 まず気になるのはこの武器だ。瞬きすらする暇もなく、ガン見してしまった。

 それぐらい凄いアイテムが入っていて、フェスタは慄く。



〈戦車の大剣槍〉

分類:ユニーク装備(呪いのアイテム)

レア度:X

効果:ATK+X 装備変更不可

説明:戦車を模した特別な装備。利き手と持ち方を変えることにより大剣モードと大槍モードに変形することができる。重量が桁違いにあり、一撃でクリティカルを与えることもある。



「変形武器とか夢ありすぎ。それでこっちは?」


 まさかの変形機能が備わった武器を手に入れてしまった。

 心を擽る響きにワクワクし、続いて防具も確認した。



〈戦車の軽鎧〉

分類:ユニーク装備(呪いのアイテム)

レア度:X

効果:DEF+X 装備変更不可

説明:戦車を模した特別な装備。軽い身のこなしで地を駆けることができ、物理防御力が高い。同種のユニーク装備を装備した場合のみ、特別な効果を発揮する。



「おっ、軽鎧! おまけに追加効果って……はっ、マジですか!」


 しかも面白いことに、初めて見るワードが追加されていた。

 目をキラキラさせて食い入るように覗き込む。


「へぇ、これが呪いの装備か。初めて見たけど、結構凄いね」


 呪いの装備は呪いのアイテムと同じ扱いだ。

 一度装備してしまうと取り外しができない。

 代わりに強力な力を持っていて、数値上で見えるステータス値は判らないけれど、面白いのは変らなかった。


「まあ、当然装備するんだけどね」


 フェスタは何の躊躇いもなく装備した。

 取り返しのつかないことになるのは知っている。

 けれど今の装備よりは断然良かった。

 即座に装備すると、なんとユニークスキルも手に入れてしまった。


「おっ! ユニークスキルだって。えーっとなになに?」



【ユニークスキル:万能騎乗】

条件:〈戦車〉装備を着用(定員1名)

説明:ユニーク装備〈戦車〉を装備したことで得られる特別なスキル。確定でモンスター及び乗り物に騎乗することができ、騎乗している間ステータスが大幅にプラスになる。



「なにこれ、めっちゃくちゃ強いじゃん!」


 ユニークスキルとフェスタの相性の良さに驚愕した。

 まるで自分のためにあるようなスキルでビックリする。


「こんなに良いスキルを手に入れられるなんて、運のパラメータが低くてもあるんだね」


 呪いの装備とは言え、新しいアイテムにスキルとワクワクするものがたくさんあった。

 ウキウキ気分で確認を終えると、ふと気になることができた。


「あっ、そうだ。スキルとアイテム意外にステータス全体は如何なっているのかな?」

 

ついでに自分のステータスも全体的に確認することにした。

 ステータスバーを開き、自分のレベルを確認した。

 すると倒しても無いのに、今までの雑魚戦で稼いだ経験値分で一気にレベルが上がっていた。



■フェスタ

性別:女

LV:7

HP:100/100

MP:65/65


STR(筋力):115

INT(知力):33

VIT(生命力):30

MEN(精神力):30

AGI(敏捷性):80

DEX(器用さ):32

LUK(運):33


装備(武具)

メイン1:〈戦車の大剣槍〉 ATK:X

メイン2:


装備:(防具)

頭:

体:〈戦車の軽鎧〉 DEF:X

腕:

足:〈戦車の軽脚〉DEF:X

靴:〈戦車の軽靴〉DEF:X

装飾品:〈戦車のスカーフ〉敏捷性:X


スキル(魔法を含む)

【筋肉増強】【ジャスト回避】【馬術】【アニマルフレンドリー】


ユニークスキル

【万能騎乗】



 ステータスを確認したフェスタ。

 かなり仕上がっているが、結局呪いのアイテムと装備品がどんな感じか気になった。

 ステータス画面を閉じ、フッと息を整えた。


「これでよし。それじゃあまずは……えっ?」


 フェスタの体幹が破られて簡単に重心を崩した。

 けれど何とか立っていられると、HPは減っていないのに神経や精神に痛みが走った。


「重っ!」


 早速〈戦車の大剣槍〉を装備した。

 構えを取ろうとするものの、膝にとんでもない負担が掛かり動けなくなった。

 その原因はあまりの重さ。腕にかかる衝撃も半端が無く、肩を上下させてしまう。


「嘘でしょ、こんな使えないよ!」


 根性で振り回してみた。

 けれどグィーン! と重たく空気を切り裂いた。

 当たれば間違いなく倒せる。だけど当てることがまずできない。

 何となく直感で感じてしまった。


「こんな武器貰ってもね。ってことは、扱えるようになれば私最強?」


 しかしフェスタは全くめげなかった。

 逆に考えることにして気分を盛り上げる。


「だよねだよね。重たく手まともに振り回せない武器でも扱えるようになれば、回避もできる超優秀アタッカーになれる! うん、そうだよそう。こんな所で負けてらんないよね!」


 フェスタは大剣を掲げてみようとした。

 肘と膝がボキボキになりそうなほど痛いし重たい。

 それでも全力で振り上げると、何となく勇ましかった。


「ところで、如何やって帰るのかな? ん……」


 宝箱を開けたはいいが一向に帰れる気配が無い。

 一体何をしたら帰れるのか? 首を傾げると、宝箱の中が急に光り出した。

 青白い粒子が柱の様に迸り、ふと顔を覗き込ませたくなった。


「まだ何か入ってたっけ? ポータルだ」


 宝箱の底にポータルができていた。

 若しかしたらコレに触れれば帰れるのかも。

 そう思ったフェスタは他に選択肢もなく指先を触れた。

 すると全身が粒子に変換され、驚く間もなくフェスタの姿が空洞から消えてしまった。

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