第34話 かつて闘技場だった地
「グリム、ここ行きたい!」
初めて二日目。フェスタは自分が調べた限りで行ってみたい所をメモしていた。
その中でもダントツで興味がある場所をグリムに提案する。
「何処に行きたいの?」
「ここ。フォンスから北西に行った場所にあるバンロッサ」
「バンロッサ? ちょっと地図見るね」
メニューバーを開き、マップを展開した。
地図上で検索を掛けると一瞬で出てきた。
そこには町の判定がされていないが確かにバンロッサと言う土地があった。
「確かにあるね。だけどこの町……」
「今は無いんだってさー。昔は栄えてたみたいだけど、戦争? で滅んじゃったんだって」
まさか重たい設定があるとは思わなかった。
栄えていた町が戦争に巻き込まれるなんて話が聞くが、あまり聞きたくはない。
とは言え如何してそんな場所に行きたいのか。グリムにはフェスタの思考が分からない。
「フェスタ、ここに行きたい理由って?」
「ん? 昔栄えて他ってことは、それだけレアアイテムが落ちてるかもしれないでしょ」
「まさかそれを狙ってる?」
「もちのろんだよ」
フェスタは何一つ間違っていない、キラキラした瞳をしていた。
こうなったら止まらない。グリムは早々に諦めて、早速フェスタと一緒に行くことにした。
「それじゃあ適当に乗せてくれそうな馬車を見つけて……」
「行こう行こう! 早速行ってみよう!」
グリムとフェスタは近くまで連れて行ってくれそうな馬車を探した。
すると思った以上に簡単に見つかった。
商人のNPCだったが、如何やらバンロッサは通り道らしいので同乗させてもらえて安心した。
馬車に揺られて三十分。グリムとフェスタはやって来た。
乗せてくれたNPCに感謝して馬車を下りると、目の前に映る巨大な円形闘技場を目印に歩き出した。
「これがバンロッサの……」
「円形闘技場だよ。カッコいいね」
「確かにカッコいい。だけど、歴史の重みを感じるのは気のせいじゃないよね?」
「だよね。でもさ、そんなの分かんなくない?」
「それを言ったらお終いだよ」
グリムにもフェスタにも闘技場の雰囲気がドンと伝わった。
けれど過去の情景を見たいとは思わないので、あくまでも観光気分だ。
実際ここは観光地としての一環も持っている。
とは言え、現在はゴーストタウンになっていて、いわゆる歴史を彷彿とさせてくれるから残されているだけだった。なので普通にモンスターは居る。
「ウウッ……」
「ガッガッ」
「ギィーギィーギィー」
耳を傾ける間もなく、背後から異様な音が聴こえた。
なにかと思って振り返ると、そこには金属のモンスターが集まっていた。
剣や盾、歯車など。昔使われていたものに命が宿った系のモンスターだった。
「ちょっとちょっと。普通に居るじゃんか!」
「普通に居るよ。それよりフェスタ、行ける?」
「もっちろん。さっさと倒しちゃうよー」
「だろうね。私も行くよ」
グリムは《死神の大鎌》を取り出した。
フェスタも大剣を構えると、目の前に居るモンスターを睨みつける。
武器の切っ先を突きつけると、スッとグリムは前に躍り出た。
「そりゃぁ!」
まずは剣のモンスターだ。大鎌を叩き付けると、金属と金属がぶつかり合う。
カキーン! と嫌な音を残響させる。耳障りだったが、力業でグリムは剣を地面に叩き付けた。
「おりゃあ!」
剣のモンスターが地面にめり込んだままカタカタ動いている。
少しでも体勢を崩したら起き上がって切られる。そう思うと余裕は無い。
グリムは苦い表情を浮かべると、歯車のモンスターが宙を舞いながら転がって来た。
「フェスタ!」
「分かってるって」
フェスタが飛び込んできた。
大剣を構えると、歯車が丁度目の前に来たタイミングで振り下ろした。
やっぱりちょっと遅い。けれど格段に判断が速くなっていて、歯車のモンスターを地面に深々とめり込ませた。グシャっと一瞬嫌な音が聴こえたが、気のせいと言うことにする。
「後は盾……フェスタ、剣は私が押さえておくから暴れてきていいよ」
「ほんと?」
「うん。シールドバッシュは気を付けてね」
「OK」
フェスタは頷くと飛び出す。大剣を肩に掛け、小さな盾のモンスターに大剣を振り下ろす。
けれどヒョイっと容易く躱されてしまった。対して大剣は地面に突き刺さってしまい、防御手段をフェスタは失う。
「嘘っ! ってか本当に来た」
モンスターだってスキルみたいなものを使う。
盾のモンスターは小さな体を使ってフェスタを押し倒そうとする。
けれどフェスタは後ろに飛んで躱した。【ジャスト回避】を発動させ時間の余裕を作ると、地面に突き刺さっていた大剣を回収し叩き付けた。
「このっ!」
大剣をぶん回し、縦のモンスターを撃破した。
盾が吹っ飛んで行きコロンと地面に落ちた。
それを見届けるとグリムも剣のモンスターを倒し切った。
とりあえず襲って来たモンスターたちは全滅させることに成功し、呼吸を整えるほど余裕が生まれた。
「やったねグリム!」
「うん。ナイスバトル」
「これくらい余裕だってー。にしても来て良かったよ。変わったモンスターに出あえて新鮮」
それはグリムも納得だった。
けれど変にザワザワする。外套を引き寄せると、闘技場の方に視線を奪われるのだった。
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