第14話 ギルド会館に行ってみた

 グリムはある場所に向かっていた。

 フォンスの地図を開くと、視界の端に置いておく。

 白い矢印が自分と判りやすくて助かる。

 なのでグリムは全く迷う余地はなく、目的地に辿り着くことができた。


「ここかな?」


 それはフォンスの奥の方にある大きな建物。

 まだ超本格的には稼働しているわけではなく、完全に黎明期に入っている。

 しかし後々この建物は活きて来る。運営側が無かったことにしない限りは間違いない施設で、グリムはテクテクと誰も出てくるわけでもない建物へと入った。


「おお、結構立派な建物だね」


 グリムの感想は淡白だった。

 みんな思うようなことを淡々と呟くと、視線をキョロキョロ配ってみる。

 二階建ての建物で、地下もあるらしい。入ってすぐの所にエントランスがあり、視線の先には受付カウンターが並んでいた。そこには女性が何人もスタンバイしているが、あまりやることがないのか、人間みたいに少し暇そうにしている。


「暇そう。でもそうだよね、仕方ないもんね」


 施設にはあまり人が居なかった。

 受付の周りには掲示板が貼ってあったり、立って使うタイプの机が設置されている。

 そこには一人から二人程度はプレイヤーも居るが、NPCの数の方が若干多い。

 それでも十人にも満たず、少し寂しかった。やっぱり使われていない施設となると、人もやって来ないのだろうか?


「寂しいなー。でも、ここからだと思うんだよね」


 グリムは後々に期待を抱くと、掲示板を見に行く。

 そう、ここはギルド会館。プレイヤー同士やNPCが交流を行い、いずれ来るであろうギルドシステムに関与している施設なのだ。


「えーっと、うわぁ。結構使われてる」


 掲示板を見に行くと、かなり親しまれていた。

 プレイヤーもしくはNPCから出されたたくさんの依頼書が貼り出されている。

 グリムの目的はコレを見ることだった。

もちろんただ見に来て満足じゃない。ギルド会館では依頼を受けることができるのだ。

依頼を受けるのは少し勇気のあることだと思うし、面倒なことでもある。けれど金策にもなるし、実力も付く。

 一石二鳥で良いことに繋がると思ったのは、やっぱり間違いではなかった。


「何にしよ。モンスターの討伐、薬草の採取……おっ、コレはプレイヤーからだ。なになに、鉄鉱石の採取。ふーん、鉱石か」


 面白そうな依頼を見つけたので、コレにしようと思った。

 モンスターの討伐はもう経験した。

 薬草の採取は一旦後回しでもいい。

 ここは鉱石採取と言う、ありがちだけどやったことのない依頼を積極的に受けてみることにしたのだ。

 

 もちろんただ単にやったことがないから受けた訳じゃない。この依頼が丁度手頃だったことと、プレイヤーからの依頼だったのが何よりも大きい。

 今の所、このゲームでグリムは誰とも交流がない。

 ここは一つ、他のプレイヤーとの交流を重ね、フレンドを紡いでいくのも後々良いと思った。

 こう思った以上、グリムは止まらない。だって間違わないからだ。


「それじゃあこの依頼を受けよう」


 依頼書をビリッと剥がした。

 それを受付カウンターに持って行くと、暇そうにしていた受付嬢たちに緊張感が走る。

 NPCの受け持つカウンターに向かうと、グリムは声を掛けようとした。

 しかしそれよりも先に受付嬢の女性の方が挨拶を交わした。


「ようこそギルド会館へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「依頼を受けたいんです。ここから受理できますか?」

「はい、かしこまりました。プレイヤーさんからのご依頼ですね。納品と報酬は依頼主のプレイヤーさんからお受け取りください」

「分かりました。それで、この鉄鉱石なんですけど……」

「はい、如何かなされましたか?」

「何処にあるんですか?」


 グリムは恥ずかしながら何も知らなかった。

 鉄鉱石を採りの行きたいのはやまやまだが、何処に行けばたくさんあるのだろうか。


「そうですね。鉄鉱石が採れる鉱山は多くありますが、ここからだとジメスト鉄鉱山などがオススメですね」

「ジメスト鉄鉱山? どんな場所なんですか」

「どんなと言われましても、至って大きな鉄鉱山ですよ。既に使われてはいませんが、大穴などもあり侵入自体はとても簡単で、手頃なダンジョンになっています。全体的に暗いので灯りは必須ですが、もしかしすると鉄鉱石以外の鉱石も採れるかもしれませんよ」


 かなり夢があった。

 グリムは新ダンジョンにワクワクして、胸を突き動かされる気分になる。

 ジメスト鉄鉱山。早速行ってみようと思い、グリムはお礼を言ってギルド会館を後にしようとした。

 しかし受付嬢はそれを制止、一瞬立ち止まらせる。


「待ってください」

「はい?」


 振り返ったグリムは受付嬢がグリムを呼び止めたことに疑問を持つ。

 もしかして何かやってしまった? そう思っても不思議じゃなかった。

 けれど受付嬢は神妙な顔をして答える。


「その装備だけでは不安ですよ。しっかりと整えてくださいね」

「整える……そっか、鉄鉱山に行くんだもんね。ありがとう、ちゃんと準備をするよ」


 何処までも真摯に付き合ってくれた。

 グリムは受付嬢が教えてくれたことを守り、先に装備を整える。

 必要な道具を入手してから、鉄鉱山に向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る