第4話 探偵さんたちは働きたくない④
「心臓って....じゃあ今の海野さんは心臓が無いってこと?」
愛梨が聞いたのは至極真っ当なこと。
当然悠馬も心臓を取り返してほしいという突拍子もない発言に目を丸くする。
だが海野さんはさしたる問題がないかのように答える。
「そうですね。一応はこの体には心臓がない、というのが本当のところです。」
「心臓が...?じゃあいったいどうやって生きてるんですか!?」
本来人間は心臓が止まると死んでしまう。
基本的に心肺停止してから8分も経過すればほとんど助かる見込みはない。
一分以内に胸骨圧迫などを行い血流を確保すれば95パーセントは助かるのだが心臓が無いというのならばその処置すらできはしない。
もし仮に心臓がなくとも生きて居られるというのならば目の前のこの存在は人間ではない。否、人間であるはずがない。
「あんた人間じゃないだろ。どういうつもりだ」
少なくとも現状普通に存在する生物ではない。
人の大きさを保っていて重要な臓器を失ってもいきて居られるなんてそれこそ伝説などに出てくる人外の化け物たちばかりだろう。
「あらら、さすがに気づきますよね...」
バレてしまったというのに全く動じないどころか体もほとんど動かさない。いや、動かせないのかもしれない。
「心臓を失ってなお生きて居られる、そしておそらくだけれども心臓を失ったことでほとんど死体に見えるように弱っている...。もしかしてキミって吸血鬼だったりするのかな?」
愛梨の質問に対して頷き肯定する。
「確かにあなたの言う通り私は吸血鬼の末裔。実際には存在しないとか言われてるけど結構人外って存在するんですよ?」
「だろうね。君の特異性からして人間ではないとわかってそのうえでこれらを聞いているここのスタッフの人たちもほとんど動揺していない。ってことはここの従業員にもある程度人外はいてお客さんにもよく来るんでしょ?むしろここはそういう目的で作られたお店なのかもね。どう?あってる?」
自信ありげに話す探偵。
「ええ、この店は一応という形にはなりますが江戸時代ごろにある陰陽師の一族の末裔の方が人外と人間の交流の場として建てる際に協力してくれたお店です。」
ふと声が聞こえてきたのは後ろから。ただ誰もそのことに驚かない。
それを見て出てきた女性のスタッフが目を丸くして驚く。
「あらら、思っていたより誰も驚いてくれないのね」
「こういった話をしている以上そういった登場をしてくる人がいてもおかしくないと思いますからね」
少し残念そうな様子を見せる女性に対して慰め?かもしれない言葉を伝える悠馬。
「あら?それは探偵さんの推理だったりするの?」
暗に探偵に事前に伝えられていたのではないかと問いかける女性。
「いんや、ただの経験と直感が教えてくれてるだけ。まぁこいつはコイツで普通に察してたと思うけども」
「というか僕は依頼主さんが人間じゃなかったなんて知らなかったんだから自ぜ円に予想なんてついてないよ...」
いくら探偵と言おうともそこまで万能じゃないとつぶやきながら下を向く。
おそらくは拗ねているのだろうがなぜ拗ねているのかは悠馬には理解できなかった。
そんな愛梨の様子を見て首をかしげながらも本題から外れてしまった話を元に戻すべく話を続ける。
「そもそも心臓を取られました。だから取り返してくださいってだけで取り返せるわけじゃない。何か心当たり都下あったりするんですか?」
言外に手がかりや心当たりがないのであれば話にならないと伝える。
実際に何の情報も得られなかった場合依頼を受けるつもりもないし理由もない。
わざわざ不可能な依頼を受けてそれに時間をさけるほど暇なわけでもないしそんな余裕があるわけでもない。
だからこそ事前にこうやって話をする場を設けている。
この段階で不可能だと感じたらやめる。
世のなかでは万能だなんだと叫ばれている名探偵こと愛梨だがあくまで一人の少女でしかない。
そして悠馬には家族がいない、否、死んでいるわけではないだろうが出会ったことがない。
要するに小さなころに捨てられているのだ。だからこそたった一人の家族といっても過言ではない愛梨を守ろうとする意志がある。さながら番犬のように。
「奪ったのは同じ吸血鬼。名前はカミラという金髪の吸血鬼です。ところで吸血鬼とは何かあなたたちは知っていますか?」
「伝説上に出てくるものすっごい化け物でしょ?十字架と聖水とニンニクが弱点の」
急な質問だったがそれに対して愛梨が当然というように即答する。
「そして鏡に映らないとか蝙蝠になれるとか、人の血を飲んだり異常なまでの身体能力と不死性があるってくらいだな。あんまりこういった話に積極的に触れてこなかったからよくわからん」
愛梨の回答に悠馬が付け加える。
「そうですね....あながち間違いではないものも多いんですけど」
どこかくすぐったそうに笑いながら海野さんが答える。
「ではそうですね...。吸血鬼について少し話しておきましょうか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ものすっごい急な展開ですごめんなさい。
インフルエンザでかなり長い間お休みさせていただいてました。
ちなみにストックはたいして増えてません。何ならつきかけてます。
今後は週三回更新する予定です。曜日までは決めませんが...。
たまに調子に乗って5回更新とかもあるかもです。
それではまた次回!
もしよかったらハートとお星さまください!
探偵さんは今日ももどかしい。 泡沫 黄泉 @yomi_utakata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。探偵さんは今日ももどかしい。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます