第53話
翌日、再び49層に飛んだ4人は薄暗い通路を抜けてY字になっている分岐まで来るとランディとマーカス、ローリーとハンクと2人組みずつに分かれた。分岐からは地上に上がる左右の階段が見えている。
「分岐からそれぞれの階段が近いのも声を掛け合って同時にドアを開けるのだと考えれば辻褄があう。遠ければタイミングが合わせにくいからな」
階段を見ながらそう話すローリーの言葉になるほどなと納得する3人。最終確認が終わると二手に分かれて階段を登りドアの前に立った。ランディらが右の階段、ハンクらが左の階段を登っている。
「こっちは準備完了だ」
「こっちもいつでも行けるぞ」
ランディの大声が聞こえてくるとそれに応えてハンクが大きな声を出した。
「3…2…1…開けろ!」
ランディの声でハンクが目の前のドアを開けると続いて外に飛び出したローリー。外に出て右に顔を向けるとそこには小屋がありランディとマーカスの姿が見えていた。ローリーはすぐに背後を振り返るといつの間にか小屋の扉は締まっており取っ手を掴んで開けようとしたがびくともしない。
「ローリーの読み通りだったな」
ドアを開けようとしても開かないローリーを見て近づいてきたランディが言った。
「こっちも開かないぞ」
そう言ったマーカスが少し遅れて近づいてきた。
「同時に開けるのがトリガーだった。ではあの起伏の先がどうなっているのか確かめてみようぜ」
同じ場所に出てきたということで2組に分かれて攻略するという最悪の事態は避けられた。あとは起伏の上から見たこの先の砂漠の状態がどうなっているかだ。背後の扉は閉まった。もう引き返すことはできない。4人は踏み固められている砂漠の道を歩いて起伏の上に立った。
「正解を見つける前なら全滅コースだったがこれならまだ希望があるな」
前方に顔を向けたまま言うランディ。他の3人も同じ様に起伏の上から前を見ていた。昨日は砂漠には隙間のない程に流砂の渦があり、踏み固められている道にはSクラスの魔獣が複数体徘徊して大リンク必須の状況だったが今この起伏の上から見える風景は、砂漠に点在する流砂の渦。そして街道沿いや街道の上に徘徊している魔獣は2体のみ。ただし遠目に見ても高ランクであることが分かる。最低でもSSクラスだろう。獣人や大蠍の姿が見えている。道はずっと続いていて先にある別の大きな起伏まで伸びていた。
「数は随分と減ったがきついフロアであることは間違いないな。まぁ49層だから当然と言えば当然か」
「その通りだ。そしてだ、最後までこのパターンじゃない可能性もあるぞ」
そう言ったローリーの言葉に確かにと頷く3人。地獄のダンジョンの49層だ、このままクリアすればボス戦となる。そんなフロアが単純な造りになっているとは思えない。ただ正解を導き出した今、目の前に見える風景はこの4人なら行ける。そう確信できるものだった。空からは強烈な日差しが降り注いでる。各自帽子やフードを被りローリーの強化魔法がかかったところで攻略を開始した。
遠距離からマーカスの弓が飛び、ローリーの精霊魔法が続く。2体の獣人が唸り声をあげて襲いかかってくるとランディが挑発スキルで1体のタゲを取り、ハンクが片手剣でもう1体に切り掛かった。
「恐ろしい切れ味だぜ」
ハンクの片手剣がSSクラスの獣人を切り付けるとスパッと切り口が広がってそこからドス黒い血が飛び散る。つづけて切り付けるハンク。その時にはマーカスの矢が獣人の頭に命中して絶命させた。ランディも同様だった。盾でしっかりと受け止めて片手剣を突き出すと獣人の腹が大きく切り裂かれる。そこにローリーの精霊魔法が命中するとそのまま後ろにぶっ飛んだ獣人が死んで光の粒になって消えていった。
「ヒヒイロカネのこの新しい武器は相当の威力だな。これで戦闘がぐっと楽になるぞ」
魔獣を倒した後でハンクが言ったが全くその通りだ。後ろから見ていても今までと片手剣の切れ味が全然違っているのがわかる。ランディも同じ様に言っていた。
「武器の切れ味は良くなっているが雑にならない様にしようぜ」
「全くその通りだな」
ランディとハンクのやり取りを聞いてこれなら大丈夫だと安心するローリー。その後も砂漠を徘徊しているSSランクの獣人、魔獣を倒しながら砂漠を進み高い起伏の上にあがるとその先に低い山々が見えてきた。その山裾には大きく口を開いた洞穴の入り口が見えている。
洞穴を目指して敵を倒しながら砂漠を進みその入り口についた時には砂漠を照らしていた陽は大きく傾いていた。ここに来るまでに結構な数の敵を倒している4人。洞穴は高さが10メートル、幅もそれくらいあり奥に伸びているが暗くて入り口から奥の様子は伺えない。とりあえず洞窟は奥に向かって真っ直ぐ伸びている様だ。4人は話し合って洞窟から数メートル入ったところで大休憩、野営をすることにした。灼熱の砂漠でリンクしているSSクラスをほぼ連戦で倒しながらここまで来た4人。少しでも気を抜けば自分たちがやられるという戦闘を休みなくしてきた4人は皆流石に疲労の色を隠せない。全員が広い洞窟の壁に背をもたれさせてぐったりとした表情だ。ある程度休んでから食事になった。
「小屋を出てからここまでが簡単過ぎる」
食事をしながらランディが言うと、
「その通りだよな。ここまで一本道だったし。49層がこれであるはずがない」
とマーカスが続けて言う。そういうと3人がローリーに顔を向けた。黙って食事をしていたハンクも顔を向けている。
「俺もまだ序盤の序盤だと思う。武器の優越を差し引いても簡単にここまで来られているからな。それとだ」
そう言ったローリーは顔を動かして自分たちが今休んでいる洞窟を見渡しながら言った。
「この洞窟の広さ。今までの洞窟とは全然違う。いかにも大型の魔獣が出そうな雰囲気があると思わないか?」
彼がそういうと全員が同じ様に広い洞窟を見回す。そうして顔をメンバーに戻すと皆口々に言う。
「いかにもって雰囲気だよな」
「休んだらしっかり準備するか」
「天井にも何かいそうだな」
「そういう事だ。ここでしっかり休んでから奥に進もう。真っ直ぐに伸びていてその先がどうなっているか分からないが間違いなく今までよりも強い敵が俺たちを待ち構えているだろう」
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