第42話
ドロシーらはリモージュの街でしっかりと休養を取ったあと再び47層に挑戦すべく流砂のダンジョンに入ると47層に飛んだ。事前の打ち合わせ通りに今回は小屋を出ると正面の遠くに見えている高い崖を目指して真っ直ぐ砂漠を横断すべく砂漠に踏み出した。
砂漠の暑さ対策もし1時間に数度で会う魔獣も問題なく倒して砂漠を進んで行く5人。起伏を登っては降り、降りては登るを繰り返しながら前進していた。当人達は真っ直ぐに進んでいると思っていたが奥の崖の位置のずれによる目の錯覚で真っ直ぐではなくやや左方向に進んでいることは誰も気が付いていない。
敵を倒しながら進んでいくと陽が大きく傾いた頃砂漠を進む一向の右手にオアシスが見えてきた。
「ケイトの読み通りだね。ちゃんと進んでいればオアシスがあったよ」
周囲を警戒してオアシスに入った5人はここが安全地帯であることを確認すると全員が多いなため息を吐いて椰子の木の下、池の周囲に生えている緑の芝生の上に腰を下ろした。今夜はここで野営だ。ルイーズがアイテムボックスから食料や飲料を取り出すとそれを手に取って口に運んでいく5人。ダンジョンが人数制限、1パーティ5人制限をかけているおかげでこのフロアには他の冒険者達がいない。男性がいないということで彼女達は池の淵で思い思いに水浴びをする。もっともそうでなくても47層まで降りて来られる冒険者はまずいないのだが。
全員が水浴びを終えてさっぱりしたところで芝生の上で車座に座って夕食になる。砂漠のオアシスに吹いてくる風が心地よい。
「オアシスがあった。ということは明日はこのまま崖の方に進めば階段が見えてくるって事だよね」
ドロシーが言った。その言葉に頷くケイトだがふと思ってシモーヌを見る。
「砂漠の周りを回った時のマッピングした地図ある?」
「あるわよ」
ポケットからシモーヌの手書きの地図を受け取ったケイト。ただ彼女達は砂漠の周りを1周せずに時計でいうところの6時からスタートして10時ちょっと過ぎた辺りで引き返している。12時方向にある崖の全貌がマッピングできていなかった。
受け取った地図を見ていたケイト。オアシスから左と右に線を書いてオアシスが中心にあるかどうか確認している。そのケイトがん?と言った表情で首を捻った。
「どうしたんだい?」
ケイトの仕草を見ていたドロシーが声をかける。他のメンバーもケイトに顔を向ける。
「砂漠ってこれくらいの大きさだっけ?見た感じだと右にもっと広い気がするんだけど」
そう言ってシモーヌの地図に線を書き加えた地図をドロシーらに見せた。ドロシーは地図を見ると黙ってカリンに渡し、カリンからルイーズ、そしてシモーヌと見てからケイトに戻した。
「言っていいかい?」
リーダーのドロシーが言った。皆頷いたのを見ると、
「私は砂漠はもっと広いんじゃないかと思う」
カリンはごめん、分からないといいルイーズも自信がないと言った。後衛の二人は常に前衛3人の動きを見てフォローするのが仕事だ。全体を見ていなかったと責めるのは酷だろう。ローリーが特別すぎるのだ。狩人のシモーヌは地図に顔を向けたまま言った。
「ドロシーと同じ意見。もう少し広い気がする」
「広いってこの右側に広い。つまりオアシスは中心線より左にあるって認識よね」
皆の意見を聞いたケイトが言った。そうなるねとドロシー。ケイトは全員の顔を見ると言った。
「思い出して。私たちは小屋を出て真っ直ぐに歩いてきたつもりだった。でもオアシスを見つけた時それは私たちの右手前方にあった」
そう言うと何人かがあっ!という声を出した。
「そうなの。真っ直ぐに歩いているつもりでも実は左前方に歩いていたの。本当ならオアシスは私たちが歩く方向から見て左手に現れないとおかしいのよ」
「砂漠がもっと広いという前提だよね」
シモーヌが言うとその通り。でも砂漠がもっと広いというのは自分では確信があるというケイト。
「ケイトの言った通りだとしてなぜ真っ直ぐ歩いているつもりが左に行ったんだろうね」
「それに関してはこうじゃないかっていう予想はあるのよ」
そう言ってケイトが話をした仮説とはいみじくもローリーが気がついた奥の崖が右の方がさらに奥にあるんじゃないかという話だった。
「つまり奥の崖は左が手前、右が奥になっていて気がつかないうちに崖に正面から対峙すると左に歩く様なギミックじゃないかって」
「ローリーがよく言っているダンジョンの意図ね」
その通りとカリンを見て言った。
「だから明日はここを出たら一旦この地図でいうところの3時方向に進んでみたいの。オアシスを右手にみてここに寄った分かそれよりもう少し右に寄ってからまっすぐに歩いてみたいの」
それで行こうと方針が決まった。
「迷った時にはケイトの作戦。これがうちらのパーティの基本だからね」
方針が決まったあとドロシーが言った。皆もそうそうと大きく頷く。
オアシスでしっかり休んだ翌日。彼女達は一旦右に大きく寄ってから再び砂漠を奥に向かって進み出した。ケイトは十分に周囲の景色を見て自分たちが左に寄せられない様に常に周囲を見て自分たちの位置を確認する。砂漠の起伏が大きくなってきた。
「何か起伏が多くなってない?」
歩きながら後ろからカリンがそう言った。確かにここに来て起伏が増えている。偶然?それともこれもダンジョンの意図?歩きながら考えるケイト。
「ちょっとごめん」
ちょうど徘徊していた2体のSSを倒したところでケイトが言った。その声で動きを止めた4人。
「悪いんだけどこれからは横に広がって起伏をチェックしながら進みたいの」
そう言ってカリンが言った起伏が多いと言う言葉に引っかかっていると続けるケイト。起伏が多くなっているのにも理由があるんじゃないかと言った。
「起伏があればその上から下を見ていく感じで進んでもいい?」
「ケイトのやりたい様にやろう。こっちは従うよ」
ドロシーが言い全員が横一列、それなりの間隔を開けて進み出す。起伏があればその近くにいた者が起伏の上に立って下を覗き込みなければまた前に進んでいくというのを繰り返していて1時間ちょっとが経った頃横一列の右の端を歩いていたシモーヌが声を出した。
「こっちの起伏の下に何かある」
全員がシモーヌのところに集まってきた起伏の上から下を見ると起伏の底に黒い板の様なものが見える。降りていくとそこには48層に降りていく階段が見えていた。
「小屋がなくて階段がむき出しになっているのか」
思わず全員で拳をぶつけ合う。ドロシーはケイトの肩をパンパンと叩きながら
「ケイトの読み通りだったよ。見事だよ」
皆から祝福を受けながら一番最初に階段を降りていった。ドロシーらのパーティもこれで47層をクリアした。
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