第40話

 ドロシーらが宿に戻ってきた時、ランディ達は正に48層を攻略していた。今は広い洞窟の先にある細い洞穴の中で戦闘をしていた。階段を降りた最初の洞窟にはSSクラスのトカゲや蠍が固まっていてそれを倒して洞窟の奥にある通路に入ったと思えば通路の中にも大きな蠍が毒針のある尻尾を高く掲げたまま待ち構えていた。ランディの盾が最初の攻撃を受け止めるとそのままハンクとマーカスが剣と矢で攻撃をしローリーが氷の魔法を顔にぶつけて動きを鈍くさせたところでハンクが止めを刺したところだ。


 洞穴は長さが20メートル程あり蠍はその中央部で待ち構えていたこともありこの洞穴では休憩は取らずに短い時間で水分補給だけした彼らは次の洞窟の広場に出た。


 そこは最初の広場よりも薄暗く視界が落ちた中徘徊しているのはスケルトンだ。ランクはSSで皆片手剣を右手に持って2体が固まって洞窟の中を徘徊している。


「人間の心臓に当たる部分に核がある。それを破壊しないといくらでも復活してくるぞ」

 

 洞穴の出口に立っている4人の背後からローリーが言った。


「俺が倒してやろう」


 マーカスが弓を構えるとミスリルの矢が自動で装填される。一番近い場所にいるスケルトンに狙いを定めたマーカスが矢を射るとスケルトンの骨と骨の間にある核に見事に矢が命中し1体がその場でバラバラになって崩れ落ちた。固まっていたもう1体はまるで何も無かったかの様に1体になっても徘徊している。


「見事なものだな」


 感心した声を出したハンク。


「それよりもスケルトンは感知範囲が狭いのか?それともヘイトが連動していないのか」


 ランディがそう言うと洞穴を出てスケルトンに近づいていく。すると他の魔獣と同じくらいの距離でランディを認識したスケルトンが片手剣を持っている右手の骨を突き上げてギシギシと骨が擦れる音をさせながら近づいてくる。そこをマーカスの2度目の矢が見事に核に命中してバラバラになった。


「感知距離は変わらない。となるとヘイトは連動していない様だな。遠隔から倒せるのなら楽になるぞ」


 2体を倒すのを見ていたローリーが言った。自分とマーカスで遠隔から倒せるのであれば攻略はぐっと楽になる。骨と骨の間にある核を魔獣の感知外から一発で倒すのは普通であれば至難の技だ。ただここにいるメンバーは違う。マーカスは超がつく一流の狩人でその実力はエルフの村でエルフからの折り紙付きだ。そしてローリー。彼の精霊魔法の威力とその命中率、精度も並の精霊士では到底追いつけないレベルにある。


 この二人がいるからこそ取れる作戦だ。


 ランディとハンクは俺たちのやる事がないと言いながらも彼らは二人で先陣を切って前に進んでスケルトンのヘイトを集めていく。そうして集まってきたところに矢と魔法の遠隔攻撃で次々と倒していくやり方で効率よく洞窟の中を進んでいった。


「右の方に移動してくれあっちで固まっている骨が見えた」


 背後から声を出したローリー。返事はなくても前の3人は骨を倒しながら右に移動していく。すると洞窟の右の奥の隅に骨が5体固まっているのが視界に入ってきた。ランクは全てSSだ。


 まずその近くにいた骨を倒してからマーカスが矢を射ると予想に反して5体が一斉にこちらに向かってきた。すぐにランディが挑発スキルを発動すると今度は5体がランディをターゲットにする。彼がタゲを取ればもう安心だ。しっかりと攻撃を受け止めている間に

遠隔攻撃で1体ずつ倒していく。もちろんハンクも片手剣を突き出して核を破壊し5体の骨を5分足らずで全て倒し切った。


「ヘイトが連動しているタイプもいるのか」


「それよりもここにも洞穴があるぞ」


「だから固まっていたんだな」


 洞穴は奥の洞窟に続くものではないとすぐに理解する4人。なぜなら通路の幅も高さもずっと狭いからだ。そして通路が奥で右に向かって湾曲していた。


「NM部屋かもな」


「おそらくそうだろう」


 ランディが振り返ってローリー見て言い、それに答えると行こうかと前を向いて通路を進み出した。湾曲している洞穴は奥行きが100メートル程あり途中からは直線になっている。通路を進んでいったその先から灯りが漏れていた。


 ローリーが強化魔法をかけ、全員が戦闘準備を整えるとそのまま洞穴の先の灯りを目指す。そこは広場になっておりその中央に今まで倒してきたスケルトンの2倍はあろう大きさの骨のNMが両手に片手剣を持って立っていた。


 先頭を歩いていたランディが広場に入ったと同時に両手に持った片手剣を振り回しながら近づいてくる骨のNM想像以上に動きが速い。振り下ろしてきた2本の片手剣をランディが神龍の盾でがっちり受け止めるとその間に3名が広場に出ると散会する。


「核の場所が違うぞ。心臓の場所にない。皆で探してくれ」


 骨をじっと見ていたローリーが叫んだ。ランディが一人で攻撃を受け止めている間に他の3人が骨NMの核を探すが動きが速いのと骨の中が暗くなっていてなかなか見つけられない。


「あったぞ!後頭部の後ろ側、わずかな隙間から見えているのが核じゃないか」


 ハンクが叫ぶとローリーが広場の端を移動してランディと反対側に立つとNMの後頭部を見た。確かに核だ。ただ後頭部の骨がずれている場所は小さくで的としては非常に難しい。瞬時にローリーが判断して声を出す。


「マーカス、任せた。他の3人は骨NMの動きを止めよう。タゲはランディから動かすなよ。頭が動くとマーカスが狙えない」


 今までローリーが立っていた場所にマーカスが来るとローリーはそこから移動してランディとハンクのサポートに徹することにする。マーカスならやってくれる。そう信じているローリー。


 骨NMの片手剣の威力は凄まじく物理のダメージを50%カットする神龍の盾ですらランディが結構ダメージを喰らっていた。これが神龍の盾でなければ相当きついだろう。ローリーの回復魔法が途切れなく飛んでいく。龍峰のダンジョンを攻略した際は何度かこう言う事はあったが盾を変えてからはここまでの回復魔法の発動は初めてだ。


 マーカスはランディに対峙している骨のNMの背後に回って弓を構えてタイミングを伺っていた。ランディに絶え間なく攻撃を加えているNM。頭が動くたびに一瞬後頭部が広がって核がはっきりと見えるがそれはほんの一瞬だ。弓の弦を伸ばしたままじっとその時を待っているマーカス。


 狩人は連射するのも大事だがこうやってじっと待つのも連射と同じくらいに重要なスキルだと認識しているマーカス。彼は微動だにせずに弓を構えたままその時を待っていた。


 今だ!そう思った時には弓からミスリル矢が飛び出していた割れた後頭部の骨の間にある核に見事に矢が命中する。ただ1度では核は破壊されない。骨NMが動きを止めたと思った時には2矢目が飛び出して同じ様に核に命中して核を破壊するとそれまでランディを攻撃していた骨NMの骨が全て砕け散ってバラバラになるとそのまま床の上に崩れ落ちると同時に広場の中央に大きな宝箱が現れた。


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