第32話
サクッとクリアしちゃいましょうと言ったケイトも聞いていたローリーも実際はそう簡単ではないのは十分に理解している。
2日の休養でしっかりと食料品や飲料を補給し起こる自体を予想してそれに対処できるアイテムを揃えた4人は休み明けに47層に飛んだ。
「ここはしっかり気合を入れていかないとな」
階段を降りた先に広がっている砂漠を見ながら言うと軽く体を動かし始めるランディ。目の前は砂漠だけで魔獣の姿も気配もないがだからこそ何かがあるのだと。ここは地獄のダンジョンの47層だからだ。
他のメンバーもストレッチをしつつ砂漠に顔を向けていた。46層と違ってここは陽がまだ地平線を登ったところだと言うのに既に暑く、砂漠に陽炎が立ち上っていた。
「おそらく相手はSSクラス、それも複数体で固まっているだろう。今までに出会っていない種類の敵もいると思った方が良いな」
装備の確認を終えるとランディとハンク、その後ろにマーカスとローリーという並びで砂漠の攻略を開始した。当然といえば当然だが47層、ダンジョン深層部ともなれば上層の様に砂漠の一部が固められて道になっているなんてことはない。足を踏み出せばズボっと足首近くまで砂に埋もれてしまう。とりあえずの目標は砂丘の起伏の上、高い場所だ。そこまで行って次に進む方向を考えようとしている4人。階段部屋を出たところでは全くヒントない。幸いにして出たところが絶壁の崖の下にある場所だった。背後に進むことができないのなら前だろうと起伏を目指して進んでいく。
「なるほど。こうなっているのか」
20分ほど歩いて起伏の上に立った4人。階段を降りた時に背後にそそりたっていた高い崖が今4人がいる広い砂漠をぐるっと囲む様になっていた。自分たちがいる反対側は霞んでいてかろうじて見えている程度な。砂漠は広いがその周囲を高い崖が全て取り囲んでいる。
「この砂漠は盆地になっているんだな」
360度周囲を見回しているマーカスが言った。他の3人も彼と同じ様に立ったままその場で体を一回転させる。
「それで48層への階段は崖下にどこかにあるのかはたまな砂漠の真ん中にあるのか。それとも違う場所か」
「ハンク、それを探すのがこのフロアの意図だろう」
ランディが言っているがその通りだ。普通に考えれば崖沿いをぐるっと回れば良いのだろう。見ている限りだと一回りするのに1週間ではきかないかもしれない。それほど広大な盆地だ。ランディがローリーに顔を向けた。
「崖の下には間違いなく魔獣がいるだろう。1週間近くはかかりそうだな」
「ああ。ただそれで見つからなければ今度は砂漠を何度も縦断しないといけなくなる」
ランディと話をしている間も顔を前後左右に動かして周囲を観察するローリー。会話をしながら同時に他のことを考えるのはローリーのくせというか習慣になっているのでランディはじめ他の2人も全く気にしていない。
「崖の高さはほぼ同じ。砂漠も広いだけで変化はない」
1人呟いているローリー。隣人いたハンクも遠くの崖を見ながら言った。
「普通なら崖に沿って歩くよな」
「普通ならな。ここは普通じゃないダンジョンの深層だ。さらに普通じゃないと思った方が良いぞ」
しばらくしてローリーが3人を見た。彼の中で作戦が決まった様だ。
「マーカスの出番だ」
「俺の?」
そうだと頷くローリー。
「ハンクが言う通り普通なら崖に沿ってぐるっと回ってみようとするだろう。ランディも言っているがダンジョンはそれを読んで崖下には魔獣を多めに配置している可能性がある。階段部屋から見える範囲にはいなかったが見てわかる様に崖はフィヨルドの様に入り組んでいる。あの隠れている部分には魔獣が数体固まっていると見た方がいいだろう」
そこまで話をしたところで3人がローリーの作戦を理解する。
「狩人のサーチを使うんだな」
「その通り。俺たちは崖沿いに歩くが崖から離れて歩く。魔獣の感知外を歩くんだ。ここは隠れる場所がない。魔獣も遠くからでも俺たちを見つけることができるかもしれない。だからさらにその外を歩く。そしてだ」
そこで一旦言葉を切ったローリー。
「マーカスの仕事は魔獣を見つけるだけじゃない。その魔獣の集まり具合を教えて欲しいんだ。たとえば常に3体固まっているとか等間隔じゃない場所があるとか密集している場所があるとか、とにかく違う点を見つけたら教えて欲しい」
魔獣がいる場所と数からヒントを見つけようとしているんだというローリー。
「サーチスキルは使いすぎると疲労するだろう。だからゆっくりやってくれ。ここはマーカスのペースで進もう。砂漠で魔獣に会ってもマーカスは無理するな。ランディとハンクと俺で対処する。ランクSS数体ならランディなら問題ないからな」
「もちろんだ。ローリーのいう通りだ。マーカスはサーチに専念してくれ」
「敵がいたら俺たちがやっつけてやるからそっちは頼むぜ」
「分かった。任せろ」
狩人のサーチスキルは個人差もあるが70から100メートル程だ。マーカスならマックス近くまでサーチできる。一方魔獣は一般的に30メートル、高ランクになると50メートル程度だと言われている。
マーカスが狩人のスキルであるサーチを起動させて崖から約70メートルの距離をとって崖に沿って歩き始める4人。この距離だと崖の下にいる魔獣がこちらを認識しない事は確認済みだ。スキルは連続で使用するとかなり疲労するのである程度進むと砂漠の上で休憩してまた進むというやり方にした。
「崖の凹んだところにSSクラスが2体だな。これが基本の様だ。間隔も100メートル前後で一定している。ジョブは獣人だ」
砂漠で立ち止まって水分を補給している時にマーカスが言った。今のところ砂漠では徘徊している魔獣はいない。
「SSランクが2体、そしてその間隔は100メートルほど。これを基本にしよう。それと違っていたら教えてくれるか」
マーカスが大丈夫だと言う合図で再び砂漠を進み出す4人。崖のサーチはマーカスに任せて3人は砂漠の周囲を警戒しながら進んでいた。
「敵がいたぞ。こちらを認識した様だ」
砂漠を徘徊していたSSランクの魔獣2体がこちらに向かってきた。ランディとハンクが戦闘体勢にはいりローリーが2人に強化魔法をかける。砂漠にいたのは蠍とサンドリザードというオオトカゲだ。
「マーカス、今の間に休んでいてくれ」
「分かった。敵は頼むぞ」
「問題ないな」
ガッチリと2体のタゲを取るランディ。その横からハンクとローリーが片手剣と精霊魔法で1体ずつ倒していき、戦闘が始まって5分も立たずにSSクラス2体を倒した。
「この調子で行こう」
再び砂漠を歩きだす4人。
「崖沿いに歩いていたら100メートル毎に戦闘か。きついな」
「時間は食う。ランクSSが2体となると事故の確率も上がるしな」
前でランディとハンクが話をしていた。
崖から離れて歩いている4人は1km以上歩いて戦闘はまだ2回だけだ。これならずっと効率的に動けそうだと後ろを歩いているローリーは考えていた。あとはどこにヒントがあるかだ。それを見つけるのが俺の仕事だと。
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