第10話
アライアンスを組んだことによりNMの討伐に成功。その結果ドロシーとケイトの戦力のアップがなされた。アライアンスがこの地獄のダンジョンの何層まで可能なのかはわからないが攻略のスピードアップになることは間違いない。
普通であればアライアンスを解除した際には戦力が半分になりその層の攻略が厳しくなるがローリー、ランディらはすでに地獄のダンジョンを2つクリアしており元々力のあるパーティであるので仮に40層以下でパーティが分断されたとしてもその場でにっちもさっちも行かなくなるということはないだろうと男4人で話をしていた。ローリーとランディのはもちろん、ハンクとマーカスの武器もレア物だ。
片やドロシーらはそこまでの戦力がない。ランディらに乗っかる形で攻略はしているが自分たちの今の実力では地獄のダンジョンの深層部への挑戦は厳しいことは十分に理解している。そんな中アライアンスを組むことによってランディらのパーティの攻略のスピードアップに貢献できるという考えだったが、期せずしてNMを倒すことに成功し彼らからも感謝され自分たちも良い装備を手にいれることができた。
「深く考えなくてもいいと思うぞ。お互いにメリットがあると感じているからアライアンスを組んでいる。それに実際助かっているしな」
食事が終わったあとの雑談の中でドロシーとランディが話をしていた。
「ありがとう。そう言ってくれると助かるわ」
礼を言うドロシー。聞いていたローリーが言った。
「ワームのNMだって俺たちだけならかなりきつい戦いになっただろう。事故や死亡のリスクが減るのなら何も問題ないな。それに一緒にやるのが嫌だとか不満があるのなら最初からアライアンスを組んでいない」
パーティの参謀役のローリーの言葉を聞いてドロシー、そしてケイトの表情も緩んだ。
休養日を挟んで9人は流砂のダンジョンの36層に飛んだ。目の前には洞窟の中にある地下宮殿の廃墟が広がっている。
「ランディとドロシーが前に。前と左右を警戒しながら進んでくれ。その後ろにルイーズ。ケイトとハンク、マーカスそしてシモーヌとカリン。俺が最後尾を行く。ランクAの複数体かランクSの単体だろう。敵は強くないぞ。そしてゆっくり進んでくれ。急ぐ必要はない」
ランディとドロシーが2人とも手に持っている盾を上に上げて了解の意を示す。ドロシーの盾は新しい盾だ。
36層の攻略が始まった。9人が宮殿の中に踏み出すと柱や壁に隠れていた魔獣が姿を現した。出てきたのはスコーピオン、サンドビートルという砂漠に住んでいるカブトムシ。体長1メートル程あり低空飛行しながら頭の上の角で攻撃してくる。このカブトムシは高くは飛べないので片手剣でも普通に倒せることができる。
2枚の盾で正面からの攻撃を受け止め戦士、精霊し、狩人の遠隔攻撃で敵を倒しながら奥に進んでいく。
「右!」
ローリーが叫ぶとすぐにランディが盾をその方向に向けた。直後に砂の中からサンドスネイクが飛び出してきた。盾で受け止め片手剣を振れば胴体が2つに割れて光の粒になって消えていく。
「相変わらずの気配感知ね」
カリンの言葉にサムズアップで答えるローリー。宮殿の左右から敵は飛び出してくるものの中は一本道で奥に続いていた。時に3体、4体と固まって襲いかかってくるが9名の敵ではない。ドロシーの新しい盾がしっかりと相手の攻撃を受け止めている。
宮殿を抜けたところは洞窟になっていた。長さは30メートルほどで向こう側に抜けている。洞窟に入ると周囲を警戒して何もないのがわかるとその洞窟の中で休憩を取ることにする。ローリーが収納の中から冷たいジュースや水を取り出して地面の上に並べていると女性陣から声が上がった。
「収納魔法って本当に便利だよね」
「だろう?いっぱいあるから遠慮なく飲んでくれよ。食事もたっぷりと準備しているぞ」
ハンクとカリンの2人を洞窟の見張りに立てて交代で休憩を取る9人。ランディとドロシーは盾談義に花をさかせていた。
「なかなかの盾じゃないかよ」
「そうなの。今まで以上にしっかりと受け止められるのよ。装備が変わるだけで難易度が下がるのが実感できるわ」
マーカスとシモーヌは弓談義だ。こちらもシモーヌが羨ましそうにマーカスの弓を見て話をしていた。
「マーカスから貰った弓もちょっと見ない程に優秀だけどエルフの弓の実物って初めて見たけど威力がすごいわね。それに矢がいらないって反則級じゃない」
「まぁな。敵対心マイナスもついてるし思い切って最初から射れるのがいいよ。シモーヌも良いダメージ出してたぜ」
「このフロアはどう見てる?」
ローリーが冷たい水を飲んでいるとケイトが聞いてきた。
「単純すぎる」
短く答えるローリー。どう言うことと言った表情で見てくるケイトに顔を向けると
「地獄のダンジョンの36層がこんなに簡単なはずがないと思ってる。おそらくここはまだほんの入り口付近だと思う。今までと違ってこれから難易度が上がるんじゃないか。具体的にどうなんだと聞かれるとはっきりとはわからないが分岐があるか、魔獣が増えるか、ひょっとしたらここにも流砂渦があるか。いずれにしても一本道だとしたら敵が絶え間なく襲ってくると思った方が良いだろう。それでもし36層がずっとこの調子だとしたらこの下の層のどこからいきなり急激に攻略の難易度が上がる仕様になっているのかもしれない」
いつの間にか全員がローリーとケイトのやりとりを聞いていた。洞窟を抜けた先の空洞も広くて奥まで見えない。
「今まで通りに前後左右、それと上下に警戒しながら進もう。砂ってのは隠れやすいからな。ただその前にしっかりと休んで疲れをとっておこう。ハンク、交代だ」
常に悪い方の予想を立ててそれに対して準備をしておく。ローリーの考え方がゆっくりとこのパーティメンバーの中に浸透していった。
楽観的な見方しかできない奴は前に進めないのが地獄のダンジョンだ。そしてどこまで悲観的な予想ができるかが攻略の鍵になるとローリーは信じている。ランディもローリーと同じ考えをしている。そしてその考えをしていた2人がツバルの火のダンジョンをクリアしたという事実が他の7名に対してそれが間違った考え方ではないということを証明していた。
結局彼らは丸2日かけて36層を攻略する。道は一本道だったがローリーの予想通り奥に行けば地面から飛び出てくるサンドスネークや空からはサンドバットと呼ばれるコウモリの集団が襲いかかってきた。全てAランクだ。彼らが絶え間なく複数体で一行に襲いかかってくる。精霊士、僧侶が1人ずつであれば魔力枯渇したからもしれない。それほどに激しい攻撃が連続して続いていた。
ルイーズもカリンも人並み以上の魔力持ちだ。それに化け物クラスの魔力を持っているローリー。この3人がいたから36層の攻略が比較的楽になった。でなければ相当苦労しただろう。
「ローリーがいなかったらきつかったわ」
「本当にね。ギリギリか。MPポーション飲みまくりだったと思うの」
地上に戻った際にぐったりとした表情でルイーズとカリンが言っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます