第3話
「元気そうじゃない」
ナイトでこのパーティのリーダーでもあるドロシーが言った。
「ローリー以外俺たち3人は長い間寝てた感覚なんだよ」
ローリーら4人が泊まっている宿の食堂だ。ローリー、ランディ、ハンク、マーカス。そしてドロシー、ケイト、シモーヌ、ルイーズ、カリンという9名が座っていた。
ドロシーらは地元であるトゥーリアのリゼで活動をしていたがツバルの地獄のダンジョンがクリアされたというニュースを聞いていてもたってもいられなくなったという。
「ツバルをクリアしたら次はリモージュだと思ってね。5人全員の意見が一致してリモージュにやってきたんだよ。でもまさかマーカスまで復活してるとは思ってもみなかったわ」
彼女らは2日前にこの街に来てすぐにランディらのパーティはリモージュでも中クラス以上の宿に泊まっているだろうと予想して分かれて片っ端から宿をあたっていたらしい。カリンとシモーヌの組みがこの宿にローリーがいると聞いて全員でやってきたのだという。もちろん彼女達も泊まっていた宿を引き払ってこの宿に移っていた。
ローリーがトゥーリアの街から出てから今日までの事を話しする。手紙で概要は知っていたドロシー達だが当事者のローリーが話しているのを聞くと文字として読んでいてはわからないほどローリーが苦労をして仲間達を生き返らせようとしていたのかが伝わってきた。
途中からはローリーとランディと2人でそれまでの話をした。エルフの村での出来事、ツバルで忍二人と組んで火のダンジョンを攻略。そこで出た蘇生薬を忍に使ったことやNMを倒して出た蘇生薬でハンクを生き返らせ、エルフの村に出向いて世界樹の恵を得てマーカスを生き返らせた事。話を聞いている途中でカリンやルイーズは涙を流していた。他のメンバーも涙こそながしていないが同じ様に感動しているのは見ても明らか。
「言葉がでないわね」
長い長い話をし終えるとケイトが言った。
「ローリーだから出来た。ローリーが生き残ってくれたから今の俺たちがいる」
そう言うランディ。ハンクもマーカスも全くその通りだと言う。
「ツキもあった。ツキというのはたまたま収納魔法を取得している俺が生き残ったこと。そしてナイトの良い装備が出てランディが復活したこと。エルフの村を見つけることができた事。ツバルの忍から声をかけられたがその忍の二人が極めて優秀だったこと。色々なツキが重なった結果だよ」
ツキという言葉を使うローリーだがこの場にいる他の8人は知っている。ローリーは単にツイていたと言うが彼のはツキじゃない、持って生まれた運、それも強運だと。ツキとは常時自分にあるわけではない。ついている時期、ついていない時期。誰しもがそうだ。ついている時は何をやっても上手くいく。でもそれは永久には続かない。いずれツキが離れていく時がくる。ツキとは付いたり離れたりするものだ。
運は違う。これは生まれた時から当人が持っているものだ。そしてその運の強い、強運の持ち主がたまにいる。ここ一番で効力を発揮する強運。ローリーはそれを持っている男だ。いみじくも鑑定家のアラルが思っていたのと同じ事をこの場にいるローリー以外の8人も思っていた。
「この街のギルドには顔を出したのかい?」
ランディが話題を変えて言うと頷く女性5人。
「義理立ては済んでるわよ」
「せっかくネフドに来たんだし流砂のダンジョンの様子をみようと思ってるの」
ドロシーとケイトが言った。
ケイトはせっかく来たと言っているがその目的がダンジョンよりも自分達を気遣って何か手伝いが出来るのではないかと思ってここリモージュまでやって来てくれた事を男性4人は気づいている。お互いにトゥーリアのリゼではトップのパーティとして君臨しているがこの2つのパーティは普段から仲が良い。トップ同士で情報交換をしたり時には地上のNM退治を一緒にしたりする関係だ。
2つのパーティの間には感謝の言葉を口に出す必要もないほどの信頼関係が出来上がっていた。ランディからドロシーらに流砂のダンジョンの情報が提供される。
「攻略されているのは30層まで。俺たちは25層まで進んでいる。5層までは洞窟。6層から下は今のところ全て砂漠のフロアだが正直ヌルい。地獄のダンジョンらしくなるのは31層から下だろう」
「ヌルいってのはわかったけどそれってランディらの装備を基準にしていない?」
ケイトが聞いてきた。ドロシーのパーティのリーダーはドロシーだが作戦面はケイトが参謀になっている。ランディとローリーの関係に似ていた。
「違う。ケイト達のレベルで判断してる。そこは安心してくれ。まぁ潜り始めたら分かるだろうけどな」
そう言っていたランディだが。翌日から流砂のダンジョンの攻略を開始したドロシーらのパーティはランディが言っていた意味を理解する。3日で15層まで降り、5日目には20層まで到達した彼女達。リゼでAランクを張っているのは伊達じゃない。実力があるからAランクを張れるということをここネフドのリモージュでも証明していた。
ランディらは30層をあっさりとクリアして31層に降りてきていた。階段から降りた先は相変わらず砂漠が広がっている。ただ魔獣のランクはAだが集まっている数が増えていた。常時3体、時にはそれ以上の魔獣が砂漠に固まって徘徊しているのが階段から見えていた。
「なるほど。普通のAランクだとせいぜい2体までか、3体以上になったから攻略を中止したのか」
30層から31層に降りていく階段の途中から31層を見ている4人。階段の一番下から31層を見ているランディが言った。
「31層ならまだいやらしいギミックはないだろう。40層位までは普通にいけるんじゃないか?」
ハンクが言うとローリーがそれに答える様に言う。
「普通はそうだろう。ただここは地獄のダンジョンだ。何があってもおかしくない」
「明日は休養日にしよう。ゆっくり休んでリフレッシュしょう」
ランディが言って全員地上に戻ってきた。
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