第2話
マーカスが加わってオリジナルメンバー5人のうち4人が揃った。
ランディ ナイト
ハンク 戦士
マーカス 狩人
ローリー 賢者
4人の装備は地獄のダンジョンの下層から出たものやエルフからもらった物でこの世に2つとない程のレアなものだ。
元々実力がある4人が超一流の装備を身につけたらここまで強くなるのかというのを流砂のダンジョンで実践している。
最初は勘を取り戻すために控え目だったマーカスも15層前後から本来の彼の実力を発揮し始める。砂漠のダンジョンは文字通り多くのフロアが砂漠になっている。隠れる場所があまりない中遠方からこちらを認識した敵が襲いかかってくる。それらを精霊の弓の連続攻撃で近づく前にバタバタと倒していくマーカス。矢の補充がいらないということもありまるで連射できる魔道具の様に矢を射っていた。
「これは俺たちの出番がないな」
ハンクが呆れた声をだした。16層から20層も敵のランクが低い、せいぜいAランク程の単体であり他の3人はまるで砂漠を散歩しているかの如く進んでは下層に降りていく。
4人になって1週間で25層までクリアをした4人は明日を休養日にした。
「ずっと休んでいるのと同じだぜ」
「そのうちにハンクの出番がやってくる。それまでしっかり体力を温存しておいてくれよ」
25層をクリアしてリモージュの宿に戻ってきた4人、市内のレストランで食事を摂りながら思い思いに発言をしている。地獄のダンジョンを攻略しているとはいえまだ上層だ。緊張することもなく食事を楽しんでいる。
「ここは30層まで攻略されているという記録がある。つまり普通の装備のAランクの5人のパーティで30層までは行けるってことだ」
パーティの知恵袋であるローリーが発言をすると3人が彼に顔を向けた。今までローリーの知識や指示で幾度となくピンチを脱してきた彼らは彼の言葉を聞き逃すまいと真面目な表情になった。もちろんランディも彼を見ている。3人の表情を見てローリーが話を続けた。
「俺たちの装備は2つとない物ばかりだ。そして俺とランディは地獄のダンジョンを2つクリアしている。その経験からだが流砂のダンジョンも35層前後までは何も考えなくても降りることが出来るだろう。問題はそこから下の層だ」
そう言ってツバルの火のダンジョンでの攻略について話を始めるローリー。途中からランディもローリーの言葉に時々経験談を補足をする。
「龍峰のダンジョンは最下層までほぼ力技で降りていった。ところが火のダンジョンでは途中で罠があったり迷路になっていたりとギミックが増えていた。何が言いたいかと言うと龍峰のダンジョンだそうだったから、あるいは火のダンジョンがそうだったからという経験だけでは攻略できないのが地獄のダンジョンということになる」
ここまで話をして全員が理解しているという表情になっているのを見たローリー。
「大事なのは技量プラスチームワークだ。技量だけでは攻略できないしチームワークが良いだけでも攻略はできない。両方を最高のレベルに持っていって初めて最下層ば見えてくる。俺は急いで下に降りていく気はない。もちろんビンセントを蘇生させるには下層に降りた方が良いというのはわかる。ただ急いで事故があったら何の意味もないと思っているんだ。時間をかける時はしっかりと掛けるし、休む時はしっかりと休む。俺たちが今まで他のダンジョン攻略でやってきた進め方をより徹底してやろうと思っているのでわかって欲しい」
ハンクもマーカスもローリーとランディがツバルの忍と組んで火のダンジョンをクリアした話は聞いている。本来別のパーティだった者同士が組んでダンジョンをクリアしたと聞いて本当に驚いていた。普通なら無理だ。主導権の取り合い、欲のぶつかり合い、チームワークどころじゃない。
でも彼らはそれを成し遂げている。2人と組んだ忍の2人も優秀だったのはわかるがそれと同時にローリーの手綱捌きが見事だったのだろうと思っているハンクとマーカス。
「わかった。ダンジョンで俺が変な動きをしたらすぐに言ってくれ」
「俺もだ。ローリー頼むぞ。遠慮はいらないからな」
「分かった。そうさせてもらう」
リーモジュの街は地獄のダンジョン以外に他にもダンジョンがいくつも存在し、ネフドにおけるダンジョンの街として有名であり多くの冒険者達が訪れてくる。ツバルとは違ってここはネフドの冒険者はもちろんだがそれ以外にトゥーリアやクイーバ、そしてツバルの冒険者達が普通に市内を歩いている。まぁ忍の姿は他の国の人に比べるとずっと少ないが。
ローリーらのメンバーはこの街でもギルドには最低限しか顔を出さない様にした。トゥーリアの知り合いに会った際にビンセントがいないという事で妙な勘繰りをされるのを避けるのが目的だがそれ以外に地獄のダンジョンの攻略においてはギルドやギルドに出入りしている連中から得られる情報がほとんどないという事情もあった。逆に彼らがギルドに顔をだすことで聞かれる事の方が多くなるのは間違いない話であり、それで時間を取られたくなかったというのもある。
リモージュは四季を感じることがない街だ。一年中乾いた大地に陽が降り注ぎ雨はめったに降らない。大河ナタールを隔てた向こう側のクイーバのジャングルでは1年を通じて結構雨が降る。川を挟んでいるだけで気候が180度変わっている。
砂漠の国ネフド。その中のリモージュの街は冒険者で成り立っている街だ。大陸中から冒険者が集まってきて宿に泊まり、市内で食事をし装備や薬品を買う。そのリモージュでは毎日冒険者が来ては冒険者が去っていっていた。
そのリモージュに今日新たにトゥーリアから冒険者がやってきた。
そのパーティは5名全員が女性だった。
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