第2話
リモージュの街を活動の拠点とした3人。市内の宿に1ヶ月分の料金を前払いするとダンジョン攻略の準備をする。食料、水を補給しポーションなどの薬品も市内の店で揃えていった。
準備をしながら3人はリモージュのギルドに顔を出してギルマスに面会を求める。
案内された会議室で待っていると頬髭を生やした精悍な顔をした男が入ってきた。
「初めまして。ここリモージュのギルドマスターをやっているサヒッドと言う。お前さん達の名前はSランクに昇格したという通知が回ってきたので知っている。ただ見たところ3人しかいない様だが」
3人はそれぞれ名前とジョブの自己紹介をする。それが済むとランディが言った。
「2人は龍峰のダンジョンで怪我をしている。治療中だ。実はこのハンクも最近まで治療していてね。治ったんで3人で活動を開始してこの街に来ている」
「最近ツバルの地獄のダンジョンがクリアされた。その名前が回ってきていたがランディとローリーの名前があった。なるほどその時はハンクは治療中だったんだな」
その通りだと返事をするランディ。ローリーとハンクは2人のやりとりを黙って聞いている。
「3人で下層までは行けないと思うが?」
「もちろん。俺たちも3人で行けるとは思っていない。ただせっかくこの街に地獄のダンジョンの1つがある。仲間が戻ってくるまでの鍛錬の場所としては最適だ」
「なるほど。そういう考えながらわかる。3人ともランクSだ、行動に制限はない。好きにしてくれて構わないぞ」
現地のギルドを訪ねてギルマスに仁義を切った3人。そのままギルドを出ると市内のレストランに入って昼食を摂ることにする。ギルドだと何故3人なのかなどいらぬ詮索を受ける可能性があり、ギルドとの接触は最低限にしようとランディとローリーが言い、それにハンクが納得していた。
リモージュも3人の出身地であるトゥーリアのリゼと同じくダンジョンの街だ。街の郊外には通称流砂のダンジョンと呼ばれている地獄のダンジョン以外にもいくつかダンジョンが存在し、多くの冒険者がダンジョンを目指して大陸各地、時にはツバルからやってくる。
ダンジョンの中には難易度が高いために挑戦する冒険者のランクを規制しているところもあるがこの3人は皆Sランクでありダンジョン挑戦における制限を受けない。行きたいダンジョンに行ける。
「やっぱり流砂のダンジョンだろう」
「当然だな。他のダンジョンに潜る意味がない」
ローリーとランディのやり取りを聞いていたハンクがちょっとその前に教えてくれと言った。何かと顔をハンクに向ける2人。
「そのエルフってのから蘇生薬をもらったとしたら次は誰を蘇生するかは決めているのか?」
ローリーとランディは顔を見合わせて言った。
「決めている。次に蘇生させるのは狩人のマーカスだ。ダンジョンから狩人が装備すると威力が大きく上昇する弓と装備を手ににれている。ダンジョンのクリアには強力な装備が必須だからな」
「わかった。次はマーカス、そして最後にビンセントだな」
その通りだと頷く2人。ハンクを蘇生させたのも2つとない片手剣が出たからだ。それまでランディが使っていた片手剣をハンクに渡し、ランディはツバルのアマノハラで手に入れた片手剣を持っていた。ハンクは最初受け取るのを嫌がっていたがランディが自分の新しいアーマーの効果について説明をすると納得する。
使用する武器の攻撃力+50がつくのだ。元々の剣の能力が攻撃力+30、STR+10、そして素早さ+20。この攻撃力が合計で+80になるのは大きい。
「それにしても地獄のダンジョンボスってのはとんでもないアイテムを落としてくれるんだな」
「だから桁違いの難易度になっているんだろう」
「俺たちは全員を蘇生してまた皆で冒険者として活動をするのが目標だ。優れた武器があれば地獄のダンジョンの深層部まで潜る難易度が下がる。そうしてボスを倒して蘇生薬を探して全員を復活させる。それまで地獄のダンジョンの攻略を諦める気はない」
ローリーが言うとランディとハンクがその通りだと答える。ランディもそうだったがハンクも自分が生き返った話を聞いて感謝すると同時に今度は自分があと2人を生き返らせる為にやらないといけないという思いが強い。
それにしてもローリーだ。何という男だとハンクは思っていた。たまたまランディと2人になった時にその話をするとランディも言っていた。
「あのダンジョンで生き残ったのがローリーだったからこうやって生き返っている。しかも奴はおとぎ話の様な神話を信じてリゼからこの街にやってきた。並の人間にできることではない。俺はあいつには返しても返しきれないほどの恩があると思っている」
ハンクも正にランディと同じ気持ちだった。
ハンクが生き返ったことは手紙でリゼのギルマスに知らせていたローリー。その手紙の中で自分たち3人はエルフからの連絡を待ちながらネフドのリモージュで流砂のダンジョンに挑戦するので当分リゼには戻らないと書いた。
その手紙を受け取ったリゼのギルマスのダニエル。すぐにドロシーらを呼んでローリーからの手紙の内容を彼女らに伝えた。
ツバルにある地獄のダンジョン、通称火のダンジョンがクリアされたことは大陸中に発表されており同時にダンジョンをクリアしたメンバーの内Aランクだった忍の2人がSランクに昇格したことも発表されている。その通知を見た時点で忍と一緒にダンジョンをクリアしたのがローリーとランディであることはドロシーらとギルマスは知っていた。
「2つ目の蘇生の薬を手に入れたのね。ハンクが生き返った。あとはマーカスとビンセントの2人か」
「リモージュにしばらく留まるってことはエルフの村から近いからでしょう。もう1人が生き返るのもそう遠くないわね」
エルフが集めている蘇生の雫とローリーらの動きを見ているとそうだろう。
「カリンの読み通りだろう。そして待ってる間3人で流砂のダンジョンで鍛錬していると思うぞ」
リモージュにいる3人はカリンやギルマスの予想通りの動きをしていた。
流砂のダンジョン。30層まではクリアされているがその30層をクリアしたパーティもそこから下への攻略を止めたので今時点では30層が最も深く攻略されたフロアになっている。
3人は攻略よりも鍛錬を主体にしている。エルフの薬でマーカスを蘇生させてからが本番だ。とは言っても普通じゃ絶対に手に入らない武器、防具を装備している3人。流砂のダンジョンの挑戦を始めるとあっという間に10層まで降りていった。
5層までは普通のダンジョンと同じ洞窟、6層から砂漠のフロアが始まって砂漠を闊歩している魔獣の中には火を吐いてくるのもいたが3人にとっては全く脅威になっていない。
リモージュに戻ってきた3人は市内のレストランで夕食を摂っていた。
「装備が優秀すぎる。殆どダメージがない上に威力と効果時間が伸びたローリーの魔法で全く疲れないぞ」
「俺もだ。この片手剣持つと普段より身体が軽い、よく動けるんだ。おかげで好きに攻撃ができる。その上にローリーの魔法だ」
ハンクは片手剣の二刀流だ元々持っていた片手剣の良い方を左手にもって右手にはランディから貰った片手剣を装備している。
「俺もそうだ。龍峰のダンジョンボスから出たローブ、今回の火のダンジョンボスから出た杖。相乗効果になっている」
地獄のダンジョンを2つクリアしているランディろローリーは自分たちの経験をハンクに伝えていた。
「なるほど。ダンジョン毎のクセがあると考えた方が良いってことだな」
「その通り。難易度、敵のレベルはある程度攻略している階層から予測がつく。ただフロアに嫌な罠やギミックがあってこれはダンジョンによって異なっている様だ。つまり流砂のダンジョンに置いても俺たちがまた会ったことがない様な仕掛けがある可能性があるってことだ」
このダンジョンは30層までクリアされている。ということはいやらしい罠やギミックはそこから下層に降りていけばあるということだろう。
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