第31話
地上に戻ってきた4人。陽はまだ真上にあったのでそのまま東の原のギルドに顔を出す。昼間のギルドは冒険者の数も少なくて閑散としているが彼らにとってはその方が余計な雑音を気にしなくても良い。
「なるほど。一筋縄では行かなくなってるな」
ランディの報告を聞いたギルマスのタクミが言った。
「焦ったらダンジョンは攻略できない。1フロアで4日や5日かかるってのは最初から想定内だよ」
淡々と話をするランディ。この男とその隣で黙っているローリーの2人はSランクでもあり当初からこの街にいる冒険者達とは雰囲気が異なっていたが今では忍のカイとケンもトゥーリアの2人の冒険者の雰囲気に似てきていると感じていたギルマスのタクミ。ランディの話を聞いている忍の2人の態度も落ちついていて地獄のダンジョンの最深層部まで攻略していても浮ついた雰囲気がしない。修羅場を相当潜ってきたのだとわかる。
強者のオーラが忍の2人にも出ていた。
「次は49層だな。ということはそのまま50層まで降りていくつもりなのか?」
どのダンジョンも最下層であるボス部屋の1つ上の階には地上に戻る石盤はない。戻るにはクリアしてきたフロアを逆に進んで49層の入り口まで戻るか、50層のボスを倒して現れる転送版に乗って帰ってくるしかない。
「そのつもりだが無理だと判断したら49層の入り口まで戻ることも考えている。ここまできたら焦っても仕方がないからな。それに俺たちは50層だと思っているがそうでない可能性もある」
なるほどとランディの話を聞いていると職員が部屋に入ってきた。宝箱から出たアイテムの鑑定結果が出た様だ。鑑定に出したのは腕輪と指輪だけで小瓶はもちろんだが弓も鑑定には出していない。ランディとローリーはこれらのアイテムはネフドのリモージュに住んでいる鑑定士のアラルに見せるつもりだ。
「鑑定結果が出ました。腕輪は体力を自動回復する効果があります」
その言葉に全員が目を見開いた。
「回復量はスキル、つまり能力に依存しますがそれでも極めて珍しいアイテムです」
カイが腕輪を使うことになった。これで長期戦になっても安心だ。
「そして指輪ですがこれは遠隔攻撃アップの効果があります。遠隔攻撃+2となりますが弓術で使用するとこの遠隔攻撃力が+4になるそうです」
「ジョブで効果が違うのか」
聞いていたギルマスが言った。他の4人も黙っていたがギルマスと同じ事を考えていた。
「その様です。ジョブ専用装備に近い扱いになります」
表情をほとんど変えずに話をする職員。カイとケンは2人で小声で話をしていたが、それが終わるとカイがランディとローリーに顔を向けて言った。
「指輪は差し上げる。そっちで使ってくれ。怪我をしている狩人がいるんだろう?」
「そうか。じゃあ遠慮なくもらっておこう」
ローリーの収納に指輪を納める。これで弓と指輪でマーカスの攻撃力がアップするだろう。ちなみに弓は遠隔攻撃力、命中ともに+20というこれも優れものだった。指輪が攻撃力アップだからセットで使えば強くなるということになる。
「しばらく休んでから挑戦するのか?」
鑑定が終わって4人が立ち上がるとギルマスが聞いてきた。
「そのつもりだ。最後になるかもしれない。しっかりと休んでから挑戦するつもりだよ」
ランディの言葉に頷くタクミ。
「クリアしたら来てくれ。吉報を待っている」
ギルドの会議室を出た4人はロビーで他の冒険者にも出会わずにそのまま東の原の常宿に戻ってくるとそのまま1階にあるレストランに入る。
「さっきギルドでも言ったが次が49層。50層までのダンジョンとしたら49と50はセットと考えた方が良い」
「ギルドであんたは50層じゃないかも知れないと言っていたが実際はどうなんだい?」
とケンが聞いてきた。
「俺もローリーも50層が最下層だと思っている。魔獣のランクを見ていると51層があるとは考えにくい」
確かに48層でSSクラスが出てきている中、50層より下があるとすれば魔獣のランクはSSSクラスとなる。となればボスのレベルはSSSS以上だ。理論上は存在する可能性はあるだろうが冒険者が挑戦できるレベルではなくなる。
「龍峰のダンジョンボスもランクでいえばSSSクラスかの上、SSSSクラスだった。あのダンジョンだけ優しいとは考え難いんでここも50層まで、ボスはおそらくSSSSクラス以下だろう」
ローリーが続けて言うと納得する忍の2人。
「48層の隠し部屋が気になっている」
とローリーが言うと3人が彼に顔を向けた。
「一度切りのNMのレベルはダンジョンボス同等かそれ以上だと聞いたことがある」
ローリーによるとダンジョンボスはそのダンジョンの最下層に辿り着けばいつでも何度でも対戦できるが一度きりの対戦となるNMについては良いアイテムが出る反面NM討伐の難易度は高いらしい。
「ここにいる全員は油断する様な事は無いと思うので言うが、このダンジョンのボスが48層のNMより強いことはないだろうと思っている。せいぜいあのNMと同レベルだ。もちろんだからと言ってボス戦が楽になる訳じゃない。いやらしい攻撃をしてくるだろう。ただ俺たちはそのレベルの相手を倒す実力があるってことだ」
「確かにあのNMを倒した後でドロップしたアイテムはレア中のレアだった。一度だけしか挑戦できないNMだからか」
カイの言葉に頷くローリー。
あのNMから小瓶が出た時にローリーはこのダンジョンの本当のボスはこのNMじゃないかと思っていた。50層にいるであろうボスを倒せばそれがはっきりとするが自分達が倒した後にあの部屋が無くなってしまって2度と挑戦ができなくなる仕様になっていることが正しくあのNMの討伐の難易度の高さを示している。
いずれにしてもボスを倒せばわかるだろう。ただ48層であのNMと対戦したことで自分も含めてメンバー全員がまた1ランク上に登ったのは間違いないと確信していた。
「明日から3日間休養しよう。49、50と挑戦することを考えて100%体調が回復するまで挑戦はしない。カイとケンは武器の手入れも頼むぞ」
ランディがそう言って打ち合わせが終わった。
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