第29話
その後45層のクリアに5日、46層は4日かけた彼らは再び4日かけて47層をクリアする。44層以降はフロアを全て探索しながらの攻略だが宝箱もNMも見つからなかった。地獄のダンジョンの攻略を開始してから半年以上が過ぎていた。
「48層、49層とあと2層だ。恐らくランクSSの複数体ばかりのフロアでひょっとしたらSSより上のクラスもいるかもしれない。いや、いると思った方が良いだろう。ここで気を緩めると事故に繋がる。ダンジョンをなめずに攻略しよう」
47層をクリアして設けた3日の休養明け彼らは48層に降りる階段に立っていた。目の前のフロアは大きめの洞窟が伸びている。石を積み上げて作った通路と比べると道幅も高さも数倍ある。大きなトンネルの様な洞窟だ。
「このサイズの洞窟になっているということはこのサイズの敵が徘徊しているということだろう。ドラゴンがいると思った方が良いな」
階段で準備体操、ストレッチをしているランディが言った。
「あとは空を飛ぶ魔獣もそれなりにいるかもしれない。剣が届かないこの高さなら十分にあり得る」
「ワイバーンとかか?」
ローリーが言うとカイが聞いた。
「ワイバーンもそうだろうしそれ以外にもいるかもしれない。火のダンジョンの深層部48層だ。今まで見たことがない魔獣が出てくるかもしれない。固定概念は捨てた方が良い」
ローリーの言葉に気持ちを引き締める3人。行こうかというランディの言葉で洞窟の中に入っていった。
洞窟の中は光があるのでライトの魔法を使用する程でもないが洞窟に入ってすぐに奥から強烈な気配が漂ってきているのを感じる4人。ランディが盾を構えて先頭を歩き、その背後、左右にカイとケンが両手に刀を持って歩いていく。最後尾のローリーは3人から少し離れた背後を歩いていた。
床を叩きつけるドンドンドンという音とともに洞窟の奥から体長10メートル程のドラゴンが1体こちらに向かってきた。ランクはSSクラスだが今までのドラゴンよりも一回り大きい。
ランディが挑発スキルを発動して相手のタゲを取った瞬間にはカイとケンはダッシュをしてドラゴンの左右に移動する。大きな体をぶつける様にランディに突っ込んでくるドラゴンを盾でがっちりと受け止め、同時に右手に持っている片手剣を突き出してドラゴンの固い皮膚に傷をつけていく。ランディががっちりとタゲを取ったのを確認したカイとケンが左右からドラゴンの足を片手刀で切り付け始めた。
ローリーはドラゴンの火を直接食らわない様にランディの斜め後ろに立つと回復魔法で3人をフォローしながら精霊魔法をドラゴンの足や顔にぶつける。
「来るぞ!」
ある程度傷をつけた所でドラゴンが首を背後に反った。その瞬間にローリーの声が飛びランディは盾で自分の体を隠す。口から吐かれた火が構えている盾にぶつかるがダンジョンボスから手に入れたランディの盾はその火をしっかりと受け止めていた。強烈な火だがずっと吐き続ける事はない、ドラゴンの火が止まった瞬間にローリーが魔法をドラゴンの顔にぶつける。忍の2人の刀も絶え間なく足に切り付けていたこともあり立っていられなくなったドラゴンがその首を地面に落とした。
そこに片手剣、刀、そして魔法が命中してドラゴンは絶命して光の粒になる。
「でかい分体力は多いがそれほどいやらしくはないな」
その場で消えたドラゴンを見ていたランディ。ローリーもでかいだけだったと言う。
カイとケンの2人もこのダンジョンに挑戦し始めた頃とは違い十分に経験を積んでいるので2人の言葉に頷いていた。
その後もドラゴンが襲い掛かってくるがそれらを倒しながら奥に進んでいると洞窟がYの字の分岐になっている場所にきた。左も右もその先までは見えない。
「しらみつぶしに探すんだからどっちを選んでも同じだな」
そう言ったランディが左に進みだした。中に入って歩いていると
「上から来るぞ!」
ローリーの声で全員が上を見た。大型の蝙蝠が何十羽と集団で4人に襲いかかってくる。彼らは単体ではSランクだが集団になるとランクが1つ上がってSSになる。しかも他のダンジョンで見る蝙蝠よりもずっと大きい。
誰も何も言わずとも壁を背後に立つと襲いかかってくる蝙蝠を次々と倒していく。蝙蝠は羽根を広げて集団で襲ってくるがそれを盾で防ぎながら片手剣で切り裂いていくランディ。カイとケンは身体を左右に動かしながら両手に持った刀を連続して振り回して倒していく。そしてローリーはランディのフォローをしつつ精霊魔法で蝙蝠を落としていった。
10分弱の戦闘で全ての蝙蝠を倒した4人はそのまま通路を奥に進んでいくと広場に出た。そこにはまたドラゴンが2体固まって地面を徘徊しているのが見える。
「一旦戻ろう」
ランディの言葉で来た道を戻る4人。洞窟で倒した蝙蝠はまだREPOPしていなかったので戻りは戦闘が無くY字の分岐点にまで戻ると今度は右の洞窟を進みだした。ここでも天井に固まっていた蝙蝠が4人に襲いかかってきたが問題なく全滅させると洞窟を進んで出口にでた。ランディがうなり声を出した。
「これはどっちが正解なのか分からないな」
出口から見えるのは広場だった。たださっきの広場と違うのは誰が見ても明らかだ。その広場を見ている4人。
「やる事は決まってる。広場の探索だよ」
3人の背後から声を出したローリーの言葉と強化魔法を受けた3人が広場に飛び出していった。地面を徘徊するオオトカゲやボム、どれもSSランクで炎を吐いたり火の玉で突っ込んで来たりする。それらを受け止め切り裂きながら広場の探索を続けていく4人。
「そいつを倒したら左の壁際に移動。凹んでいる場所がある」
広場で連続してSSランクを討伐する4人。彼ら4人が高いレベルにあるとは言ってもSSクラスとの連戦が続くと疲労が出てくる。目の前のランクSSの2体のオオトカゲを倒した4人はローリーが見つけた壁際のくぼみに飛び込んだ。その場に行ってみて分かったがそこは奥行き5メートル程の行き止まりのくぼみになっていた。
背後を気にしなくても良い場所で4人は大きな息を吐いてから腰を下ろすとローリーが収納から取り出した冷たい水を飲んで喉を潤す。
「今の所次の部屋に行く洞窟が見つからない。ということはさっきの広場が正解だったのかな」
美味しそうに水を飲んだカイが誰にともなく言った。
「恐らくそうだろう。このフロアを攻略したらあっちの広場に戻ろう。恐らく奥の方に通路が隠れているはずだ」
カイの言葉にランディが答える。
折角の安全地帯だ。しっかりと休もうかというランディの言葉でローリーが収納から食事を取り出した。
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