第25話
休養日最後の夜、東の島の定宿のレストランに集まった4人。
「地上に戻る前に見たが42層はガチでの攻略となる。溶岩と火山でまた暑くなるだろう」
2日の休養日を設けたこともありカイとケンもすっきりした表情になっているがランディの言葉を聞いているその目は真剣だ。
「敵のランクはSSクラスだろう。単体なら俺たちなら問題ないがリンクした場合は簡単じゃなくなる。だから基本は敵のいない場所を探しながら進んで行くことになるだろう」
ランディがそう言うと頷く忍の2人。それを見ていたローリーが言葉を続ける。
「地獄のダンジョンの深層になっている。そしてここは火のダンジョンだ。敵の強さプラス暑さが襲い掛かってくるだろう。各自は直ぐに水を飲める様に準備した方がいいな。数秒で水分を補給しつつ連戦となる事もあるからな」
地獄のダンジョンの深層で甘い期待は持たない方が良いと言うローリー。常に最悪の事態を想定しそれに対処する準備をしてようやく敵と対等な立場での勝負となる。準備を怠るとその時点で自分達がハンディキャップを背負うことになる。ここまでやる必要があるのかと思う位で丁度いい塩梅だろう。
忍の2人もこのダンジョンの攻略を開始して時間が経っている中でローリーの言う言葉が考えすぎだと思う事は無かった。いくら準備しても安心できないのが地獄のダンジョンだ。だとすれば思いつく事、やれることを事前にやっておくのは当然だと考えている。
翌日42層に飛んだ彼らはフロアの攻略を開始した。広大な土地が目の前に広がっており遠くの火山が噴火しているのが見え、そこから流れ出てきるマグマがいくつもの川となってフロアを縦断している。そして空にはワイバーンが時折火を吹きながら飛んでいた。
しっかりと水分を補給しローリーが強化魔法を掛けるとフロアの攻略を開始する4人。マグマの川が流れている地面は靴底から熱さが伝わってくる程熱を持っている。
「足元は熱いがそこを気にし過ぎると注意力が散漫になる。足元は無視して敵を倒していこう」
先頭を歩いているランディが声を上げた。フロアに進みだしてすぐに地上を徘徊している魔獣が4人を見つけて襲いかかってきた。ランクSSの獣人だ。手に持っている錆びた片手剣を振りかぶりながら襲いかかってきたがその攻撃をランディが盾でしっかりと受け止めるとすぐに彼の左右から忍の2人が両手に持っている刀で獣人に切りつけていく。ローリーは前衛3人のフォローをしながら同時に周囲を警戒していた。
SSクラスとは言えこちらも実力が高いメンバーであるので相手が単体なら短時間で倒すことができる。最初の敵を倒した所で直ぐに前衛の3人が水分を補給する姿を見たローリーはこれならいけるのではないかという感触を得た。あとは3人をフォローしつつしっかりと周囲をチェックし、ワイバーンを処理するのが自分の仕事であると気を引き締める。
「ワイバーンだ。ローリー任せた」
「わかった。俺がやる」
マグマの川をジャンプして飛び越え、地上の敵を倒しながら広場を進んでいるとワイバーンのエリアに近づいてきた。もちろんワイバーン以外に地上にはSSクラスの魔獣が単体で徘徊している。事前の打ち合わせ通りに3人は地上の敵に集中しローリーが魔法をワイバーンに撃った。強力な魔法がワイバーンに命中するとそのまま地上に落下してくる。
ローリーの魔法の威力と魔力量の多さから連続してしかも遠距離から魔法を撃って次々と落としているが普通の魔法使いなら数発撃てば魔力切れとなり休憩が必要だろう。それほどにローリーは桁外れの魔力量を持っていた。それに加えてダンジョンボスから手に入れたローブがある。永久機関の様に次々と魔法を撃って空から落としていく。
数体はマグマの川に落ちて絶命し、地上に落ちたワイバーンはローリーの2度目の魔法で光の粒になって消えていく。
攻略を開始して3時間程経った頃広場の向こう側に大きな火山の山裾が見えてきた。山裾には幾筋もマグマが流れ出てそこからマグマの川が始まっていた。その山裾に洞窟を見つけた4人。まだそこまでは数百メートルの距離がある。そして当然その数百メートルの間には地上にはSSクラスの魔獣、空にはワイバーンがおり4人を待ち受けていた。
「気を抜くなよ!」
先頭を歩いているランディが声を出した。声を出しながら自分の気合も入れ直している。ローリーは魔法でワイバーンを2体倒し、他の3人が4体の魔獣を倒したところで洞窟の中に飛び込んだ。
中はぼんやりと灯りがともっており目に見える範囲では敵影はない。洞窟の長さは30メートル位か。カイとケンの2人が洞窟を進み出口まで壁や床をチェックする。その後に続いて洞窟を移動するランディとローリー。
洞窟の反対側の出口は今通ってきた広場と同じ様子だったがSSランクの魔獣が2体固まっているのが見えた。出口から暫く次の広場を見ていた4人は洞窟の中央部分に戻ってきてそこで腰を落とすと携帯している水を飲んで水分を補給する。
「ここで大休憩、野営だな」
ローリーはそう言うと収納から冷たい水と食料を取り出す。各自の水筒に新しい水を補給するとその場で食事になった。
「半分は来たのかな?」
「いや、それは甘いだろう」
出来たての料理を口に運んだカイが言うとランディがそれを即座に否定した。
「今までのダンジョンならここで半分だろう。ただ地獄のダンジョンでは他のダンジョンの常識というか見立てが通用しない。下手すりゃこの様な安全地帯がこれから先まだ2つ3つあるかもしれない」
野営が1日とは限らないということだ。その言葉にあり得るなと頷く忍の2人。
「長丁場になろうがガチなら俺たちは負けない。負けるとすりゃあ疲労が原因だろう。だから休める時はしっかりと完全に休もう」
深層に降りて来ての戦闘。ひと時たりとも気が抜けない戦闘が続いているので当人が感じている以上に肉体的にも精神的にも疲れてくる。中途半端な休養で攻略を開始すると取り返しがつかない事態になるかもしれない。休める時はしっかりと休むべきだ。
このローリーの考えに反対する者はここにはいない。既に火のダンジョンの攻略更新記録を塗り替え中の彼らだが目的は記録の更新ではなく最下層にいるボスを倒してクリアすることだ。それまでは時間をかけても構わないと考えている。
この洞窟で6時間程の休憩をとりしっかりと回復をした4人は洞窟を抜けて次の広場の攻略を開始した。
結局この42層をクリアするまで洞窟で3回大休憩を取る事となったがガチの戦闘なら戦闘力の高い4人にとって望む所でもあり特に危ない場面もなく43層に降りる階段を見つける。見えている43層は42層と同じ造りに見える。
「43層もガチっぽいな」
「ああ。俺たち向きだよ」
翌日しっかりと休んだ彼らは1日開けて43層に挑戦し3日かけてそのクリアに成功する。ローリーとランディはもちろんだが忍の2人もガチの戦闘ではランクSS相手でも全く問題ない程に力を付けていた。その43層をクリアして階段を降りた4人。
「また手を変えてきたか」
階段から見える44層を見たランディが呟いた。彼らの目の前には山頂が見えない程の大きな山聳えており、その山裾、彼らの目の前に比較的入り口が大きな洞窟が3か所並んで見えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます