第24話
通路を探索しながら前を歩いている忍の2人の前に浮いている光の玉。その光が照らす前方で通路の奥が左に直角に曲がっているのが見えてきた。
「前方で左に通路が曲がっている。そのコーナーを特に慎重に調べてくれるか」
ローリーが言って初めて顔を上げて通路の先をみたカイとケン。
「曲がったら階段だったら良いな」
「全くだ」
これでこのフロアも終わるかも知れないと思った忍のカイとケンはさらに慎重に床や壁面を探索して進んでいきこのフロアで初めて現れた直角に曲がっているコーナーに着いた。
「ケン、顔を出すな。そこを見ろ」
カイがそう言って指差した先にはコーナーの手前の石垣が直角になっている角の部分にいくつも穴が開いているのが見えた。
「この先はどうなってるかと顔を覗かせた瞬間に穴から矢か何かが飛び出てくる仕掛けだ」
反対側を見ると同じ様に穴が開いている。センサーになっている様で実際杖を突き出すと通路の上と下から幅いっぱいに槍が飛び出してきた。
「何気なく覗いたら大変なことになってたな」
「ローリーとランディの指導があったからな。俺たちも成長しているんだよ」
「いい傾向だ」
結局矢は一度切りの様でその後は作動しなかった。4人が罠を越えて角を曲がった先に42層に見える階段がすぐ目の前に見えた。
41層をクリアして地上に戻ると外は真っ暗だった。時間の感覚が分からないがとりあえず東の島の街に歩き出した4人。宿について眠そうに座っていたフロントの男性に日時を聞いたら41層に潜ってから3日と半分が過ぎていた。
「予想以上に時間が掛かっていたんだな」
「慎重に進んでいたからだろう。とにかく今は休んで明日ギルドに顔を出そう」
久しぶりのベッドに倒れこんだローリーは直ぐに眠りに落ちた。
翌日4人でギルドに顔を出した。事情を知っている受付嬢はギルドカードを更新すると奥のギルマスの部屋に案内する。4人は指輪と腕輪等の鑑定を依頼してカウンターの奥に進んだ。
「久しぶりだな」
この東の島のギルマスのタクミが座っていた執務机から立ち上がって4人に近づいてきた。
「41層までクリアか。きついか」
「きついなんてもんじゃない。ローリーとランディがいなければ何度死んでいるか」
カイが答えて言った。その言葉を聞いたギルマスがトゥーリアの2人に顔を向ける。
「少しでも気を抜けばやられる。持っている技術や魔力の出し惜しみはできない。こちらが全力を出してクリアできるかどうかの難易度。それが40層から下のフロアだよ」
そう答えるランディの言葉には気負いが感じられない。彼ら4人にとっては41層はまだ通過点、最下層にいるダンジョンボスを倒すまではずっとこの調子だろう。タクミはそう思いながら彼らの話を聞いていた。
その後はフロアの様子についてカイが報告する。黙って聞いているギルマスだがそれを聞かされている間何度も驚愕の表情になった。並み、いや並み以上の冒険者ならとてもじゃないが攻略できないだろう。よくまぁそんなダンジョンを怪我もせずに4人で攻略してるものだと感心する。トゥーリアから来てる2人はトップクラスではない。トップ中のトップだろう。そしてそれと組んでダンジョンを攻略している忍の2人も今やトップクラスの上位にまで実力を伸ばしている。
ノックの音がしてギルド職員が部屋に入ってきた。
「鑑定結果が出ました。腕輪は体力+2の腕輪、指輪は精霊魔法+2の指輪です。そして斧は攻撃力+20、素早さ+30です」
「指輪はローリーが使ってくれ。腕輪はケンが使う。斧もそちらで使ってくれ。」
カイがそう言った。刀をもらったので腕輪はケンだそうだ。いずれにしても忍の戦力アップとなる。そして精霊魔法+2の指輪を身につけたローリー。
「これでまた一段強くなるな」
ランディが言った言葉に頷いたローリー。テーブルの上にある斧を手に持って収納する。
「この斧も悪くないものだ」
「休養してから42層に挑戦するんだな」
「その通り。ダンジョンからここに戻ってきたら報告するよ」
ランディの言葉をきっかけにソファから立ち上がった4人。気をつけてなというギルマスの言葉を背中に聞いて部屋を出た彼らはギルドのロビーを素通りしてそのまま常宿に戻っていった。
「明日と明後日の2日は休養にしょう。今回はカイとケンが集中力を切らさずに頑張ってくれた。しっかり休んでくれ。明後日の夕食時にここで会おう」
一旦アマノハラに戻るという2人と旅館で分かれたローリーとランディ。2人になると改めて食堂のテーブルに座り直した。
「あいつらがいなかったら41層で相当苦労したよな」
テーブルの上にあるジュースを一口飲んだランディ。
「その通りだ。俺たち5人いたとしても苦労しただろう。少し進んでは戻り、また進む。これの繰り返しで攻略していたと思う」
「つまり2日ちょっとじゃ無理だって事だ」
ランディと同じジュースを飲んでいるローリーが大きく頷く。シーフ程ではないがそれでも忍の2人の罠探査の能力は大したものだと感心していた。しかも罠を作動させる道具まで自作している。その心構えも含めて彼らは一流の冒険者だ。
「それで42層だが」
とランディが話題を変えた。これからが本題だ。
「基本は壁沿いに移動していこうかと考えている。後ろを警戒しなくても良いからな」
41層をクリアした後で階段からみた42層は再び火山がありマグマが流れているだだっ広いフロアになっていた。広すぎてフロアの奥まで見ることができなかった。
そして空にワイバーンが飛んでいるのが目に入っていた。
「俺たちの技量が試されるフロアだ」
「その通りだ。ガチンコ勝負で倒しながら攻略することになりそうだ。ワイバーンは俺が魔法で倒す。その分地上への目配りがおろそかになりがちだ。そこはランディを含めた3人で対処してもらいたい」
ローリーとランディは龍峰ダンジョンでワイバーンを相手にした経験がある。
2人の見立てではワイバーンはSランク、地上にいる魔獣はSSクラスだ。単体だと倒すのに苦労しないがリンクしない可能性がないとは言えない。ワイバーンが空でリンクすると厄介になる。ワイバーンは出来るだけ早く倒す様にしようと話をする。聞いていたカイとケンも気を引き締める。
42層からは敵のレベルが上がり固まっている数が増えてくるだろう。短時間で討伐してその場から離れて移動する事が求められる。実力がないとクリアできないという事だ。
「相当暑いだろうな」
ランディの呟きに頷くローリーだった。41層は罠だらけの通路で薄暗かったが幸いにして暑くはなかった。42層は火のダンジョンのその名の通りに再び溶岩と火山が復活している。
「明日と明後日でしっかりと飲み物と食料を補充しておくよ」
「頼む」
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