第3話
翌日午前中に打ち合わせをしたローリーとランディは約束をした昼に宿を訪ねると昨日と同じ場所にカイとケンが座っていた。相変わらずの忍装束の格好で刀を2本腰に差している二刀流だ。ローリーは2人にランディを紹介した後で4人で席につく。
「ここにいるローリーから話は聞いているよ」
そう言ってランディが切り出した。自分たちはリゼの街にある地獄のダンジョンの1つである龍峰のダンジョンに5人で挑戦し最下層のボスであるブラックドラゴンを倒した事。そしてそのボス戦で仲間が死んだこと。そして最後にこう言った。
「実は俺もその場で死んだんだよ。ボス戦の後で生き残ったのはこのローリー1人だったんだよ」
ランディの話にどういうことだと問い返してきたカイ。隣のケンも訳が分からないと言った表情だ。
「ここから先は俺たちがお前さん達と組んで火のダンジョンを攻略するときの条件の話なるがいいかな?それと他言無用でお願いしたい」
わかった。誰にも言わないと約束しよう。続けてくれとカイ。ランディも忍の2人を見てこいつらは出来る、そして人間的にも問題ないと判断していた。
「ダンジョンをクリアする、つまりボスを倒すと宝箱で出て中にはアイテムと金貨、それに魔石が入っている。これは他のダンジョンボスでも同じだよな」
2人が頷いたのを見てランディが話を続ける。ローリーはこの場を彼に任せて黙っていた。
「地獄のダンジョンは難攻不落と言われているだけあって倒した時に出た宝箱に入っているアイテムがどれも2つとないレア中のレアアイテムだ。ちなみに今俺が持っている盾とローリーが来ているローブも龍峰ダンジョンのボスを倒した時に出たアイテムだ」
そう言って盾とローブの効果を話するとカイとケンがびっくりした表情になった。
「それほどの物が出たのか」
思わず口に出したケン。隣でカイもすごいのが出るんだなと言いながら2人の盾とローブに視線を注いでいる。
「それ以外にもアイテムが出た。人を生き返らせる蘇生アイテムだ」
「何だと!!」
思わず声が大きくなったカイ。言ってからすまないと言って椅子に座り直す。
「さっきも言ったが俺はボス戦で死んだんだよ。それをここにいるローリーがそのアイテムを使って蘇生してくれたからこうしてここにいるんだ」
カイとケンが視線をランディからローリーに向けた。その視線を受け止めてそれまで黙っていたローリーが話だした。
「ダンジョンボスを倒した時その場に生きて立っていたのは俺だけだった。俺は賢者で収納魔法が使える。知っていると思うが収納魔法の中には生き物は入らない。そして中では時間が止まっている。最初は死んだ4人の仲間をそれぞれの出身地に埋めてやろうと思ってその場で4人を収納魔法の中に入れたんだよ。それから宝箱を開けると今ローリーが言った様に様々なアイテムと金貨が入っていた。その中に小さなガラスの小瓶があったんだ」
ローリーはそれを持ち帰ってギルドで鑑定にかけるも分からず、いろいろ調べた結果、ネフドに有名な鑑定士がいるというと聞いてこのリモージュに来て彼に小瓶を見せたと言ってから
「彼が言うには俺が見せたアイテムは幻のアイテム、死人を生き返らすことができる蘇生アイテムで名前を天上の雫というのだと言った」
「天上の雫」
その名前を確認する様に呟いたカイ。
「そうだ。そしてこのアイテムは人が死んでから1時間以内、1時間以内に中の液体をその体に注ぐと蘇生するというアイテムだということがわかったんだ。さっきも言ったが4人の遺体は時間が止まっている俺の収納魔法の中にある。俺はその場でリーダーのランディを収納から出してその体に液体を注ぎ込んだら本当に蘇生したんだよ」
ローリーが話をし終えても2人はしばらく何も言わなかった。いや言えなかった。
目の前で御伽話を聞かされたかと思うとそれは御伽話じゃなくて本当の話だったのだ。
「信じていないのなら今からその鑑定士のところに行っても構わないぞ。彼もランディが蘇生される時に立ち会っているからな」
「いや、信じる、信じないの前にあまりに現実とかけ離れた話だったので戸惑っている」
本当に戸惑った表情をしているカイが言った。隣に座っているケンも同じ表情だ。
「そうなるよな。でも作り話でも何でもないんだ。実際俺は5体満足な状態で生き返った。逆に言えばそれくらいのアイテムが出る地獄のダンジョンボス攻略は生半可な戦力じゃ無理ってことになる」
再びランディが話始めた。
「幸いに俺たちはボスから得た盾とローブがあって戦力的には以前よりもずっとアップした。とは言え所詮2人だけだ。そしてここからが俺たちの提案というか条件になる」
カイとケンが身構えている中、ランディが続ける。
「そっちが2人、こっちが2人。4人だが戦力的には悪くない気がしている。そっちもランクAだって話だしな。それでだ」
ランディの提案は簡単だった。まずボス戦までの攻略の途中で手に入れたアイテムの所有権については最初の選択権はカイ達にある。カイとケンがいらないと言った時点で俺たちがそれを貰うか貰わないかの判断をする。
「いいのか?」
思わずカイが聞いてきたが構わないとランディ。ローリーも同じだ。
「ボス戦で勝った場合だけどね。もし蘇生関連のアイテムが出たらそれは俺達がもらいたい。つまり優先権は俺たちだ。他のアイテムや金貨についてはさっきの説明通りでまずそちらで要るか要らないかを決めてくれ。要らないと言ったアイテムを俺たちが貰う」
ランディがそう言って二人を見る。続けてくれという表情をする忍の二人。
「蘇生関連アイテム、天上の雫はおそらくそのレア度から見てボス以外は落とさないだろう。ボスを倒しても出ない可能性だってある。万が一ボス戦の前に天上の雫が出たとしたらそれは俺たちに譲ってくれると助かる。端的に言えば俺たちがダンジョンで狙っているのは天上の雫、蘇生アイテムだけなんだよ」
「その蘇生アイテムで残りのメンバーを生き返らそうとしているんだな?」
「その通りだ」
カイの言葉に即答するランディ。
ランディとローリーの提案を聞いていた2人は顔を寄せてボソボソと話あった後で2人に顔を向けて右手を差し出してきた。
「その条件で受けよう」
突き出された右手の拳に自分たちの拳をぶつけた。ここに4人の混合パーティが成立した。拳を突き合わせた後でカイが2人を見ていった。
「見ての通りこちらは忍2名、つまりお前さん達の言うところの前衛の戦士が2名だ。そしてそちらは盾と後衛。後衛ジョブがローリー1人になるが大丈夫なのか?」
「問題ないな。俺たちは5人だったが構成は俺と戦士が2人、狩人、そして賢者ローリーだ。彼は1人でも2人分以上の仕事をしてくれる。心配は無用だよ。後を気にせずに目の前の敵を倒すことに専念できる」
カイとケンはローブを来ているローリーに視線を向けた。視線を受けたローリーも
「後は任せてくれ。まぁ各自ポーションは持っていてくれると助けるけどな」
そう言って笑うとカイとケンもそれは前衛として当然だなと言った。
即席だが強力なパーティが今誕生した。
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