第6話

 地上で待っていた4人のエルフとランディ、ローリーはずらしていた石板を元に戻してそこに丁寧に砂をかけて石板を隠すと、来た道を戻ってエルフの村に戻っていった。

 

 村の広場にはキアラ長老以下昨日の平屋にいたメンバーが待っていた。どうやら彼らがこのエルフの村の幹部連中なのだろう。広場には地上で倒した魔獣の死体が横たわっている。彼らは肉食ではないがこの魔獣の皮は十分に使い道がある。


 広場にはいるとその場でアルが村を出てからの事の顛末をエルフ語で皆に説明をしている間ランディとローリーはその後でじっと立っていた。


 話が終わったのだろう。キアラが二人に近づいてきた。


「とりあえず家に入ろうか。今アルから話は聞いたが、もう一度あんた達からも詳しい報告を聞かせて貰えるかの」


 初日に入った平屋の中にあるテーブルにエルフと二人が向かい合って座った。

 女性が全員にお茶を配って部屋を出ていくとキアラが口を開いた。


「おおよその話はアルから聞いた。ただ実際に戦闘をしダンジョンのボスと対峙したのはお主ら二人じゃ。その時にはアルを始め森の民はおらんかったという。そのあたりの話を聞かせてもろうか」


 わかったとランディが言う。


「まず地上にいた魔獣だが俺たちの間でいうところのランクSとランクSSの間くらいの強さの魔獣だ。あいつがあそこにいたのはあの地下がダンジョンになっていて魔素が集まっていて居心地がよかったからだろう」


 ランディの話を皆黙って聞いている。


「木の上から矢を打つエルフじゃあの硬い皮膚は傷つけられない。ただあの魔獣は腹側が無防備だったでそこを攻めて倒すことができた。倒した後に付近を探すと石板を見つけたので中に降りていくとそこは生まれたてのダンジョンだった。早いタイミングで見つかってよかったよ。放っておくとダンジョンはどんどんその規模を拡大して深くなりそれに従ってそこに住む魔獣も強くなると聞いているからな」


 そこで一旦話を止めてテーブルに置かれているお茶を飲んだランディ。再び顔を上げてキアラを見ると話を続ける。


「生まれたてのダンジョンだったので地下1階がボス部屋だった。ボスは地上にいた魔獣と同じ種類だが一回り大きかった。俺たちのランクで言えばSSクラスだろう。戦闘の仕方は上の奴と同じだった。幸いに盾やローブが良い物だったので時間は掛かったが無事に討伐できたよ。俺たちにとってはどうだろうか、ギリギリの戦闘というよりは余裕があって倒せた感じだ。ダンジョンではダンジョンボスを倒すとダンジョンの核というのが出現する。普通は破壊してはいけないものだ。破壊するとそのダンジョンはもう死んでいくだけだからな。ただ今回は別だ。この街の近くにダンジョンが出来ることが良いことだとは思わない。だからダンジョンの核は破壊してきた」


 核を失ったダンジョンがそこで成長を止めてあとは衰退していくのはこの大陸の者なら誰でも知っている。それは森の民であるエルフも例外ではない。ダンジョンの核を破壊したと聞いたキアラは2人に礼を言った。


「他のダンジョンなら核を破壊してダンジョンを消滅させると極刑に処せられるところじゃが、我らは別じゃ。この森で生きていくのにダンジョンは必要はない。ましてその場所がここからそう遠くないとなれば尚更の事じゃ。破壊してくれて感謝する」


 「そしてダンジョンのボスを倒した後に出てきた宝箱の中に入っていたのががこれらだ。金貨は300枚あった」


 そう言うとローリーが収納からダンジョンで得た金貨以外のアイテム、片手剣、魔石、そして木の実が入っている袋を取り出してテーブルの上にに並べていく。並べられるアイテムを見て思わず身を乗り出してくるエルフ達。最後に半分に割れた黒い玉を取り出してテーブルに置いた。


「これがダンジョンの核だ」


 半分に割れている黒いガラス玉のようなものを指差して言うランディ。


「なるほど綺麗に2つに割れとるのお」


 真っ二つに割れたダンジョンの核を見て声を上げるキアラ。


「これがボスを倒した魔石、そして片手剣と金貨。あと袋には何かわからないが木の実の様なのが2つ入っていた」


 見ても良いかとキアラがいいランディが頷くとその袋を手に取って中から実を取り出してテーブルに置いた。


 じっと見ていたキアラの目が大きく開かれた。2つの実を手に取ってじっと見ていた彼女は木の実をテーブルの上に置くと顔を上げて二人を見る。


「この実が何か知っておるか?」


 彼女の言葉に首を振る二人。彼女はもう一度テーブルの上に置かれた2つの実に視線を落としてから顔を上げると目の前にある飲み物に口をつけ、再び2人を見る。


「今回の討伐の前に、魔獣を倒して出てきたアイテムはお主らの物になる。そういう取り決めにしておったな」


 その言葉に頷く2人。


「そこで相談じゃ。この2つの木の実は今はお前たちの物になっておる。この木の実

2つ、わしに譲ってくれんかの?」



 その言葉を聞いた2人はテーブルの上に置かれた何かわからない木の実を見て、そして視線を上げて長老のキアラを見た。


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