第4話
翌日朝食を終えたランディとローリーは休んでいた家に迎えにきたエルフに連れられて広場に向かうとそこには昨日の男性エルフ始め10名程のエルフが弓を背中に背負って二人を待っていた。その中には長老のキアラもおり二人を見ると挨拶をしてくる。
二人がいるところに昨日の男性エルフが近づいてきた。アルという名前らしい。
「今日はよろしく頼む。場所は我々の結界を抜けてから1時間程北に歩いたところだ」
「わかった。俺たちはいつでも出発できる」
「よろしく頼むぞ」
キアラが二人に声をかける。片手を上げて答える二人。
じゃあ行こうとアルを先頭に一行は北を目指して森の中を歩きだした。前にアルと二人のエルフ、左右にも二人ずつエルフが付き、背後には3人のエルフと10名のエルフに囲まれる様にしてランディとローリーが森の中を進む。
「結界を抜けた。あと1時間程だ。途中で出会う魔獣は我々に任せてくれ」
その後数度左右と後ろのエルフの気配が消え、しばらくするとまた気配が復活するということがあった。おそらくこのエリアにいる魔獣を倒しているのだろう。
1時間近く歩いたところでアルが足を止めて後を振り返ると、
「ここから10分程の場所にいる。あまり近付くと気配で気づかれるのでな」
「いいだろう。ここからは俺たちでやろう」
「頼む」
そう言うとエルフ達は森の中に散っていった。
「さてどんな魔獣が待ってるか」
ローリーの強化魔法を受けたランディが歩き出しながら言った。
「二人だからゆっくり倒していくか」
「そうだな。最終的に倒せば良いわけだ。タイムアタックじゃないしな。それにしても新しいローブの威力は相当だな。強化魔法も以前よりずっと強くなってるぞ」
「ああ。そうなんだよ。これで戦闘が楽になる」
ジャングルの中を歩いていくと前方に強い魔獣の気配を感じる。そこでもう一度強化魔法を上掛けした。
右手に片手剣を持っているその手を軽く上げて礼を言ったランディが無造作に気配のする方向に歩き出していく。ローリーはその後を同じ様に進んでいくと木々の間に真っ黒な虎の様な外見をした魔獣が座っているのが目に入ってきた。
事前に聞いていた通り外見は虎の様だがその背中には遠目に見ても硬い甲羅の様な皮膚で覆われている。全長は5メートル程か。近づいてくる自分達を認識したのだろう。座っていた姿勢からゆっくりと四つ足で立ち上がると威嚇の咆哮を上げた。今までに見たことがないタイプの魔獣だ。そしてランクも高そうだ。Sクラスかそれより上か。
「ランディ、見た限りだと腹側には硬い甲羅様な皮膚がなさそうだぞ」
一瞬で相手の強さとその外見をチェックしたローリーが背後から声をかける。
「確かにエルフは上から攻撃するからダメージを与えられなかったんだな」
ランディがヘイトを取るために魔獣に挑発のスキルを発動して戦闘が始まった。予想通り魔獣はランディに向かって突撃すると両方の前足を振り上げては叩きつけてくる。
普通のナイトならあの一撃で吹っ飛ばされる様な程の威力だが神龍の盾はその攻撃をしっかりと受け止めていてランディは全くその場から動かない。盾で攻撃を受け止めながら片手剣で前足に攻撃を仕掛けるランディ。ローリーの強化魔法とステアップの魔法でランディの動きが以前よりもずっと早く鋭くなっている。
しばらくランディを見ていたローリー、もう問題ないだろうと精霊魔法を撃ちだした。ローブのおかげで敵対心マイナスの効果があるので最初から手加減無しの魔法を連射する。魔獣は絶え間なくランディに攻撃してくるがその全てを受け止めながら少しずつ相手に傷をつけていく。
ランディが傷をつけた場所に正確に精霊魔法を撃ち込んでいくローリー。戦闘を開始して既に20分近く経っているが装備のおかげで長期戦になっても二人ともほとんど疲労していない。
魔獣の左前脚は剣と魔法の直撃を受けてかなり切り裂かれそこからドス黒い血が流れ始めていた。
頭に来たのだろう。魔獣が後脚2本でその場で立ち上がった。二人が狙っていた瞬間がやってきた。立ち上がった瞬間にローリーの片手剣がその腹に突き出され、同時に最大級の精霊魔法がその剣で切り裂いた傷口に命中する。
大声を上げて体をよじる魔獣だが痛みで体を浮かせる度にローリーはその動きを見極めて傷をつけた同じ場所に何度もピンポイントで精霊魔法を撃ち込んでいく。ランデイも盾で攻撃を受け止めながら何度も剣で腹を切り裂いていった。
ついに立てなくなった魔獣が地面の上に座り込んだその時にランディの片手剣とローリーの精霊魔法が魔獣の首を直撃し最後の咆哮を上げた魔獣の首が胴体と分かれて地面の上にドスンと落ち、そのまま絶命する。
ランディとローリーがグータッチをしていると森の中からエルフ達が現れてきた。
「見事だ」
「この死体を持って帰ると良いだろう。素材的に価値のあるものがありそうだしな」
「良いのか?」
アルがこれは人間の戦利品ではないのかと言ったが俺たちはいらないとランディが言った。すぐに他のエルフ達が大きな袋に魔獣の死体を入れて数名でその袋を担ぐ様にして先に村に帰っていく。
エルフの中で残ったのは4人。それとランディとローリー。
「ここから動かなかったというその理由を探ってみる」
そう言ってランディとローリーが魔獣が座っていた場所やその周辺をゆっくりと調べていると地面の色が変わっている場所を見つけた。
エルフが周囲を警戒している中二人でその土を掘っていくとすぐに石板が見えてきた。表面には何も書かれておらずただ四方を彫っているだけの石板だ。大きさは1メートルx2メートルほどある。
「これは知ってるか?」
「いや、我々も始めて見るものだ」
近づいてきたアルが石板を見ていった。
「じゃあ開けるぞ」
ランディが石板に手をかけてゆっくりと持ち上げると石板が少しずつズレていき下に降りる階段が見えてきた。石板を完全にずらせると人一人が通れる幅の階段が地中に伸びているのが見えるが奥は暗くで何も見えない。
ローリーがライトの魔法で光の球を作ると自分の5メートル前に浮かせ中を照らす。その光を先に階段の中に送り込んだのを見てランディが階段を降りはじめ続いてローリーが階段を降りていく。エルフは2名を石板の周りに見張として置き、アルともう一人がローリーに続いて階段を降りていった。
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