第5話
「おおっ」
感心した表情のアラル。一方ローリーは目が覚めて目を開いて上半身をベッドに起き上がった上半身裸のランディに抱きついた。
「ランディ、ランディ、よかった、よかったぁあぁ」
人目もなく涙を流すローリー。
「あれ?ローリー。ここはどこだ?俺たちはダンジョンボスのブラックドラゴンを退治してたんじゃ?」
目が覚めたランディはローリーに抱きつかれながら周囲をキョロキョロと見ている。ランディから離れたローリー。涙を拭いて
「ランディ、どこも痛くないか?」
「ん?」
そう言って体を捻ったり腕を回したりしてからローリーを見た。
「大丈夫だよ。それより俺はどうしてここにいるんだ?なんで上半身が裸なんだ?それよりもローリー、他のメンバーは?ビンセント、ハンク、マーカスはどこだ?」
ベッドの上で上半身を起こしたランディはまだ状況がわかっておらずにキョロキョロしている。
「見事なアイテムだな。ここまで完璧に復活するとは」
起き上がったランディを見ていたアラルが言った。
「恥ずかしいところを見せた。申し訳ない」
アラルに顔を向けたローリーが言う。
「いや。気持ちはわかる。落ち着くまでここにいるといい。私は店の方に戻っている」
アラルが気を効かせて部屋から出ていくとまだ部屋の中を見ていたランディに、
「ランディ、よく聞いてくれ」
そう言ってローリーが龍峰ダンジョンのボスであるブラックドラゴンとの戦いから今までのことを話始めた。
ローリーの話は日が暮れて外が真っ暗になっても続いていた。途中でアラルが灯りと夕食のスープを持ってきてくれたがそれにもほとんど口を付けずに話をするローリーと黙って聞いてるランディ。
ローリーが話終わったのはもうすぐ日が変わると言う真夜中だった。話を聞いて途中で涙を流していたランディも今は以前の様に落ち着いた表情になっている。
「それにしてもよくぞ、よくぞここまでしてくれた。ありがとう」
話を終えたローリーを見て頭を下げるランディ。
「礼を言われるのはまだ早いぞ。あと3人いる」
「そうだな。それでこれからどうする?ローリーの考えは?」
ローリーの長い話を聞きおえたランディが聞いてきた。彼もすっかり落ち着いていた。いつものリーダーのランディだ。
「今お前の考えていることと一緒だろう。天上の雫をあと3つ探して残りのメンバーを蘇生させる。おそらくは地獄のダンジョンのボスが持っているんだろうがダンジョンボスだけと決めつけるのは早計だと思っている。このアイテムがダンジョンボス限定アイテムとも限らないだろう?そこ以外からも出る可能性もあるしな。情報を集めたい」
その言葉に大きく頷くランディ。
「俺たちは今2人だ。流石に2人じゃ地獄のダンジョンのクリアは難しいだろう。装備だって変わっていないし」
ランディの装備という言葉で思い出した。収納から盾を取り出すとそれを渡す。
「この盾と俺が今来ているローブがダンジョンボスの宝箱から出た。盾もローブもすごい性能だ。その盾は神龍の盾というらしい。物理、魔法のダメージを50%カット及び受けたダメージの40%を自分の体力に還元する効果がついている」
その説明にびっくりするランディ。
「そしてこのローブもすごいぞ。ローブは魔力、体力の自動回復及び魔法の40%の威力増大、一方使用魔力は30%の減少、そして敵対心マイナスの効果がついている。自動回復の数値はこのローブを着ている人のスキルに依存しているということらしい」
「なるほど流石にダンジョンボスだ。この盾があれば攻略はグッと楽になるな。とは言っても2人じゃまだまだ厳しいな」
「わかってる。そこは相談して進めたい。とりあえず今日はもう休もう」
翌朝2人が起きて店に行くとアラルがもう店に出ていた。
「昨日は遅くまで話をしていた様だな」
そう言ってから隣のランディを見て
「体調に問題はないか?」
「大丈夫だ。眠っていた様な感覚だよ。それよりもローリーが世話になった。俺からも礼を言う」
2人はアラルに盾とローブの鑑定を頼んだ。結果は予想通りだったがローブについては自動回復の数値まで言ってくれた。
「今のローリーなら体力、魔力共にが0から完全回復するまで5分だな。つまり普通に歩いている分にはほとんど体力が減らないということになる」
「そりゃ凄いな。ほぼ永久機関並みじゃないか」
隣に立っているランディが感心した声を出した。
「その盾だってこの世に2つとないだろう。攻撃を50%カットしてしかもダメージの4割を体力に還元。そちらも永久機関並みの強さになる」
「今回の蘇生アイテムを鑑定した感覚というか推測で構わないんだがこのアイテムのレア度というか取得難易度なんてのはわかるのかな?」
ローリーとランディの2人が鑑定の礼を言った後、ランディがアラルに聞いた。
「私は今まで相当数のアイテムを鑑定してきた。中にはダンジョンの奥から出たと言うレアなものも多数有ったが、今回のこの天上の雫は今までに見た事がない程のアイテムだ。つまり魔獣が落とすのなら地獄のダンジョンのボスレベルでないと無理だろう。そしてそれ以外となると人が誰も行ったことがない場所の奥、それもそう簡単に手に入れることができない難所。そんな場所にある宝箱。それくらいのレベルだ」
相当難易度が高い。アラルはスキルが上がった時の脳内の痛み具合でスキルアップの度合いがわかるらしいが、今まで相当数の鑑定をしもう鑑定スキルが上がらないのではと思っていたレベルから数段階のスキルアップをしたという。普通の方法じゃ手に入らないアイテムに違いないと言った。
2人は泊めてもらったお礼と盾やローブ、そして小瓶の鑑定代ということで金貨10枚をテーブルに置く。
「鑑定料はいらないと言っただろう?」
「いや、これは気持ちだ。受け取ってくれ」
アラルとローリーが暫く押し問答をしたが最終的にはローリーが金貨を押し付けることに成功する。
「また何かアイテムが出たらここに訪ねてくる。その時はよろしく頼む」
「わかった。ローリーらならいつでも歓迎だ。それでこれから他のダンジョンに挑戦するのか?」
「まだわからない。このアイテムがダンジョンボスだけが落とすのか、他の手段はあるのかも含めてまずは情報を集めるつもりだよ。時間はあるからな」
ローリーの言葉にそれがいいだろうとアラル。
「俺はずっとここにいる」
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